原作アレンジ、クロノトリガー
「うぬぬ、(こやつ、王女様に相当気に入られておるな。しかし、どこの馬の骨かもわからぬ男よ。邸宅に入って油断したところでいきなり王女様を人質に取って悪さをやらかすかもしれん)
仮に問題が無かったとしても、邸宅の内情(セキュリティ)を外に漏らすかもしれん。いや、もしかしたら既に王女様から色々聞き出しておるのかもしれん。
そもそも捕まえて尋問したところで何も吐かぬかもしれぬ。東国のスパイかどうかを見極めるにはこいつを放免した後も監視スパイしないといけないし、そうなると余計な財源が…)
(よし、殺してしまおう。
王女様を先に邸宅に上がらせ、王女様とこやつの距離が離れた隙に拘束する。
テロリストの罪で逮捕した後、裁判にかけよう。証拠は見つからないかもしれないから捏造して死刑有罪にして、特例法を駆使して3日くらいで死刑執行しよう。)
大臣
(魔族への食料財源にもちょうどいい。最近奴らの人口も増えておるからの。そろそろ誠意を見せておかないと、次は何を要求されるか分からん。万が一にも王女様に手を出させる訳にはいかないからのう。すまんが青年、ガルティアの為に死んでくれい。)
現ガルディアは一部の大臣と王族以外の全ての従者が魔族で構成されている。
クロノやルッカ、マールを含めて現代人のほんどは知らない歴史。中世紀時代、悪魔族が存在した。
悪魔族と人間は互いに大きな戦争をし合う関係だった。魔族は東西南北、世界各地に存在していて特に西の魔族種のチカラは絶大で人間は敗北し、ガルディア及び各国は植民地となった。
ただの植民地ではない。
魔族の性質は人間を食料とすること。恐怖や絶望で支配していては人間は生まれなくなってしまい、人間を食料にしつづける事ができなくなる。
西側の魔族、特に姿を人間に化けることができた一部の魔族は権力者達と密約を交わした。
その密約は歴史から魔族の存在そのものを抹消すること。魔族そのものの存在を隠蔽し、人間が安心して子作りできる環境を作り、安定して人間を魔族に届ける仕組みを作ること。
この密約を効率良く実現する為に魔族は権力者達に成り済まし、その国の軍事力を利用した。
魔族を襲わせたのである。
魔族にも種族は多くあり、人間に化けられる西側魔族は、それ以外の魔族を仲間とみなしていなかった。
魔族は魔族同士で、互いに人間という食料資源を奪い合う敵でしかなく、邪魔な存在でしかなかった。
魔族界での西側魔族の裏切り、人間が結託すれば殆どの魔族を絶滅させることができる。それが人間側にとってもプラスでもあったこと。一部の魔族に屈する事にはなるが、結果として魔族の殆どを滅ぼす事ができる。
権力者達は正義と悪魔の心、自分達の保身と戦いながらも、結局、魔族と共存する道を選んだ。
ガルディアにとってもそれは同じだった。
魔族のチカラを得て魔族を滅ぼし、魔族と共存する関係を選んだ。
クロノを魔族のエサにしようと目論でいるこの大臣もそう。
彼の一族は大昔からガルディアに仕え、ガルディアの血筋を守ってきた。これまで魔族に抗うことも考えたが、その方法が見つからず、諦めて開き直ってきた。
大臣は歴史の真実を知っているが、マールやその両親は知らない。
真実を知らないことが幸せだとし、先祖代々王族達をだましてきた。
クロノはこれから死刑宣告され魔族の元に届ける手はずであるが、マールは突然の処刑を不審に思うだろう。
マールがクロノの死刑強行を拒否する場合は魔族の力でクロノに関する記憶を消される事になる。
クロノの親族も不審に思うかもしれないが、その場合は、彼らも魔族のエサにするしかないだろう。
人間を魔族に運ぶだけならクロノでなくてもいい。本来なら王族の知人は運ばない。
大臣にとってこれは政治的な問題だった。
王室が身を犠牲にする精神を見せることで、断固として悪魔族に敵意がない事を示す。大臣は定期的にそういった生け贄外交を取り締まっていた。
この様な魔族との契約を大臣は何世代に渡り守ってきた。理不尽な死刑制度と言えるものだが、人々の間では常態化していた。
処刑は国民にとってある意味で日常的であり、マスコミは一時的に騒ぐものの、一週間もすれば無かった様に振る舞う。クロノ達はそういう世界に生きていた。
★
マールは家出の謝罪をして両親にハグをしてもっていた。
「実はそれで、ね。その男の子をここに連れてきちゃったんだけど、いいかな?」
ママ
「いいわよ。お母さん大歓迎! どんな男の子なの? やっぱりイケメン?」
パパ
「つぅ、こんな日が来るとはなぁ。もう家出なんてしないでおくれよ。パパもう生きた心地がせんかったよ。公務は減らせるところは減せる様にがんばるから。
マール
「いいのパパ。私、ちょっと甘えてたもの。勉強しないといけないこと沢山あるし
マールは庭に出てクロノを探していた。
クロノはどこにいるのだろうか? 広いから迷っているのだろうか?
マールは芝刈り機を整備しているウェッジに聞いた。
「え? クロノ? もしかして赤毛のツンツンの? そいつならさっき、警備に連行されていったよ? 」
クロノ一体何をやらかしたんだろう。まさか庭で漏らしたとかじゃないよね…
「それで警備室に? それとも門外に?
「門外に連れていかれたよ?
マールは門に走って、門の外を眺めたが見えない。
門の守衛兵、ビエットに声をかけた。。
ビエット
「は! 10分殆前に私服警官が来て逮捕して行きましたが…」
ビエットは一部始終を話した。
マール
「え? クロノが邸宅内に爆弾らしきものを持ち込もうとした?」
ビエット
「は! 私が存じているのは、その者、王女様をたぶらかして邸宅内に侵入し、王様、王妃様を殺害しようとした疑いとのこと、詳しい事は大臣が知っていたと思われます。
マール
「爺やが? どうして爺やが!
ビエット
「は! 私が存じているのはその者、敷地内に入る前のこと。守衛の詰め所にて手荷物検査に引っかかり、大臣が自ら守衛に命じて捕縛、警察に連絡したと聞いております。」
「大臣はいまどこに!」
ビエット
「は! 大臣はいま重要参考人として出払っております。恐らく、調書作成の為、警察に向かわれたと思われます。」
マールには訳が分からなかった。
クロノが爆弾なんて持ち込む訳がないし、大臣も意味もなく逮捕するなんてしない。大臣は厳しいところはあるが、とても優しくしてくれる。まるで本当の祖父かの様に信頼もしていた。
マールは電話をかけた。
「どういうこと? クロノがそんなことする筈はない。だってクロノは今日私の命を助けた正義のヒーローだよ!」
大臣
「正義のヒーローとはまたご冗談を…」
マール
「冗談なんかじゃないよ、クロノは私と一緒に過去にタイムスリップして…」
大臣
「過去に? 王女様、どこかで頭を強く打たれたのですかな? 直ぐに医師を手配しますのでお待ちを…」
大臣は電話を切った。かけても繋がらない。
マールは警察に電話かけたが王族でも事件に関する情報は任意の手続きを踏んでくれと一点ばり。
作品名:原作アレンジ、クロノトリガー 作家名:西中