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■クロノと古代人トリガー(改稿)

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魔法使い達は疲労を貯め、目が虚ろで視線が定まらない。
魔力は殆ど使い果たして、意識が朦朧としている。
ドーピングの魔法で意識を繋ぎ止める。
だが一人、二人と、次々に力尽きて倒れる。

地の民は無力だった。サラやジール、その他の魔法使いを心配することしかできなかった。

更に10分が経ち、バリアシールドがボロボロになる頃、魔法使いで立っている者は殆ど居なかった。サラもジールも同様に魔力が尽きて倒れた。

ラヴォスの攻撃は未だ収まる気配がない。
このままでは皆が死に絶える。

「お、お母様…このままでは…

「わ、わかって、おるわ…」

ラヴォスの攻撃は生命の99%を絶滅させるエネルギーがあった。
ジール達の魔力で防衛しても、絶滅を98%に抑えられるかどうかのレベルでしかない。


サラは思った。この時代に戻ってきたのは偶然ではなく必然なのだと。
ラヴォスゲートに飲み込まれた後、人々はラヴォスの攻撃で死んだ。
未来に王国の歴史を語り継げる者が誰一人居なくなるまで殺されてしまったのだと。

全てはラヴォスを覚醒させる実験から生まれた悲劇。自分達の責任は免れない。

人々は実験を強行した王宮を恨みながら死んでいき、その魂が無念を晴らす為に自分達をここへ導いたのではないかと。罪を悔いて反省するか、さもなくば責任を取ってラヴォスを倒せと。それが無理なら命を駆けて人々を守れと。
みんな死んだのだから、今度はお前が死ぬ番なのだと。

【お前達が私達を殺したのだから、今度は私達がお前達を殺す番だ】

サラ
(お母様…この惨状を招いた私達は途方もなく罪深い…)


ジールはサラが何を考えているかは分からなかった。しかし、きっと物事をわるい方向に考えて絶望しているのだと思っていた。

ジール
(わらわは思うぞ。わらわがラヴォスを呼び覚まさなかったら、ラヴォスはしっかり睡眠時間をとり、未来で目覚める時間が前倒しで早くなるだけじゃろうと。)

ジール
(余計な事は考えずとも、やれることはもう少ない。魔力はもう無いんじゃ。すっからかん。後は運を天に任せるのみぞ…)


ジールはサラを見て笑った。

サラ
(こんな時に笑うなんて、やっぱり私、お母様の心なんて分からないや…)

サラもジールに笑顔を向けた。


ラヴォスの光はバリアを貫き、人々を巻き込んだ。
サラとジールも巻き込みながら…





「まだ、まだ、終っとらんぞ!」
ボッシュは透明魔法を解除した。そばに隠しておいたシルバードを起動し、サラとジールを乗せた。



ダルトンはその光景を見ていた。

「所詮人間はこの程度か…」

そう呟いたダルトンにラヴォスの光が直撃した。

ダルトンは無傷だった。

ダルトンは何かの呪文を唱えた。

その瞬間、時が止まった。

ダルトンはサラとジールに歩み寄ると手をかざした。

タイムマシに乗りこんだサラとジールの体は光に包まれ消滅した。










気付くとサラは見慣れた場所にいた。ラヴォスの攻撃に備えてバリアを張る予定の安全地帯にいた。ジールも隣にいてハレーションによる避難誘導が終わったばかりの状態で、まもなくラヴォスが暴走を始める時。

腰が抜けた様にサラは倒れ、、ジールもまた同じ様になった。

サラとジールは同じ気持ちを察した。これから起きる未来を見て絶望していた。

ジール
「い、いまのはどういうことじゃ? わらわは未来を見てきたのか?」

サラ
「なぜかは分かりませんが、私達は過去にタイムリープした様です。」

未来での記憶を過去に引き継ぐ現象、タイムリープ。
魔学の歴史にもその様な現象の記録は残っていない。
夢が幻か、もしこれが未来視としたら、ラヴォスとは正面から戦えという暗示かもしれないと二人は察した。

ジール
「済まないがボッシュ、後の事は任せた。



〜ラヴォス戦、海底神殿〜

ラヴォスがタイムゲートを発生させ、この時代のサラとジール、ジャキ、三賢者が飲み込まれたのを確認すると、サラは走りラヴォスの眼に触れた。
ラヴォスに意識を繋げ、ラヴォスが眠るように暗示を魔法かける。
ジールはラヴォスからの攻撃に備えてサラと自身にバリアを張る。ラヴォスの光の攻撃で神殿の天井に穴が空き、海水に押しつぶされる事に備えた特別仕様のバリアを張らなければならない。


バリアを作り終えた瞬間、ジールはラヴォスに心を乗っとられていた。

ラヴォスには生物の意識に繋がり、操る力があった。その能力はサラと似ているが、サラが繋げられるのはラヴォスだけだった。

ラヴォスがジールに意識を繋いだとき、ラヴォスはジールの心を共有した。
ジールの国民を守りたいという純粋な感情、一度は守りきれず失った悲しみと絶望。
ラヴォスは敵であるジールの心を支配するつもりが、ジールの強い念に協調し支配された。

ラヴォスがサラの心を奪えなかったのは、既にサラの力で意識がリンク(同化)していたからで、サラの存在を自身の一部として認識していたからだが、その一部も含めてラヴォスの意識全体そのものが、ジールの念に支配される事になる。

とはいえ、完全に支配できるわけでもない。
強い気持ちを常に維持することができない様に、ジールがラヴォスを支配できるのも一時的なものである。

ラヴォスの意識とジールの意識がせめぎ合う。

ラヴォスは世界に向けて光の柱をブチかましたい。ジールはラヴォスから人々を守りたい。
互いにラヴォスエネルギーを奪いあう様相になる。

ラヴォスは光の攻撃をしたい。
ジールは人々を守りたい

(ラヴォスは光の攻撃をしたい + 人々を守りたい。)+ジールは人々を守りたい=


ラヴォスは天に向けて力を放つも、ジールはラヴォスエネルギーを使い神殿で攻撃を防ごうとする。

物質変化の術を神殿にかけたジール。その術に意識を集中し、神殿を変形させ、ラヴォスを包み込もとうする。

ラヴォスは神殿に包まれる。光の攻撃で神殿の天井を破壊するも破壊した部分からすぐに神殿は再生していく。

ラヴォスエネルギーを用いた神殿はラヴォスの攻撃を鉄壁にガードする存在となった。

ジールはラヴォスを人のいない遠くに追いやりたい。

神殿はラヴォスを抱え込んで浮上し、空へと進む。

このまま空の果てに連れて行くつもりのジール。

だが、いずれ自身は寿命で死ぬ。ラヴォスの寿命は果てしなく長い。寿命があるのかさえ判らない。いずれラヴォスを支配できなくなる未来が来て暴走を止められなくなる。

これを解決するにはジール自身の意識を神殿内に閉じ込め、神殿と同化する事でラヴォスと意識を繋がり続けさせるしかない。

神殿に意識を転移する術を使い、サラの前から姿を消した。

ラヴォスを支配できている今の内にラヴォスエネルギーを抜き取れるだけ抜き取る必要があった。

そのエネルギーでジール神殿はラヴォスが容易には抜け出せない程の硬い質へと変化した。ラヴォスを未来永劫、神殿内に封印できることを期待して、また、誰かがこの封印を解かない様に神殿への侵入者、外敵を排除できるように要塞になる形に変形させた。

サラはジールが神殿になるのを止められなかった。