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BYAKUYA-the Withered Lilac-5

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「はねなさい!」
 巨大な刃は一瞬にして黒い塊となり、ビャクヤの足元から槍のように突き出た。
「ダメだねぇ……」
 ビャクヤは、下から突き上がってくる槍を鉤爪で受け流す。
「出なさい!」
 ヒルダは指を鳴らした。同時に、ビャクヤが受け流した槍が鈍器になり、ビャクヤの頭上へ落下した。
「そんなの……」
 ビャクヤは、鉤爪を頭上で交差させ、落ちてくる黒い顕現の塊を受け止めた。そして鉤爪の間に挟んだそれを手放すことなく、自身の顔の前に持っていく。
 ビャクヤが何をするつもりなのか、まるで読めずに見ていることしかできないヒルダであったが、次の彼の行動に驚くことになる。
「ふふふ……いっただきまーす!」
 ビャクヤは、塊を口元に寄せると、その顕現を吸い取ってしまった。
「うん。なかなかいい顕現だ。けど。キミの『器』に宿る顕現はこんなものじゃないんだろ? 今から食べるのが楽しみだ」
 驚くヒルダであったが、動揺を悟られまいと返した。
「イグジスを直に吸い取るなんて、戦いの最中に随分余裕じゃなぁい?」
 ビャクヤは小さく笑って、答えた。
「戦いだなんて。とんでもない。これは狩りであり食事だよ。この腹を満たすための。ね」
 次はビャクヤが攻撃を仕掛けた。背中の鉤爪を全て一直線に伸ばし、真っ直ぐにヒルダへと突き出した。
 ヒルダは、黒い顕現の衣を全身に纏い、障壁を作り出した。
 鉤爪は障壁に阻まれた。
「砕けちゃいそぅ!」
 防御は余裕であったが、ヒルダはわざとらしく言う。しかし、ヒルダが余裕でいられるのはこの一時だけであった。
「これはどうだい?」
 ビャクヤは、左半分四本の鉤爪はヒルダの障壁に当て続けながら、しゃがんで右半分をヒルダの足元に突き出した。
「ああん!?」
 ヒルダの防御は足元まではカバーしておらず、その防御が薄くなっていた足元を払われてしまった。
 そのまま前に崩れそうになるヒルダであったが、とっさに前へと顕現を出してそれをクッションすることで、転倒を避けた。
 ビャクヤは、転びかけたヒルダを見過ごすことなく、鉤爪を振るっていた。
「どう料理しよう?」
 刃物としての鋭さはそのままに、鞭のように伸縮し、しなる鉤爪がヒルダを襲う。
 ヒルダは、再び障壁を展開することで鉤爪を防いだ。
「微塵切りがいいかな?」
 ビャクヤは、大きく跳びながら回転しつつ、鉤爪を振るう。ビャクヤが一度回るだけで、瞬間的に八回以上の攻撃が同時に与えられ、ヒルダの障壁にヒビが入る。
「切り刻んであげるね!」
 ビャクヤは、着地と同時に上半分の鉤爪、合わせて四本を突き出し、ヒルダを貫いて体を引き裂こうとした。
「させないわぁ!」
 ヒルダは、ビャクヤが着地してすぐには動けない一瞬を見切り、ヒビの入った障壁を短剣にしてビャクヤに向けた。
 ビャクヤはやはり、驚く様子を見せず、伸ばしていた鉤爪、側に置いておいた鉤爪でヒルダの短剣を受け止めた。
「ナイスタイミング……」
 ビャクヤは短剣を奪い、ニヤリとした。
「こわいわぁ」
 ヒルダは後退した。
「逃さないよ」
 ビャクヤは、下がっていくヒルダに鉤爪を伸ばす。しかし、届かない。届くはずがなかった。
「えっ?」
 ついにビャクヤが驚かされる時がやって来た。
 ヒルダは宙に浮いていたのである。顕現の衣を足場とし、まるで浮雲の上にいるようである。
「随分調子に乗ってくれたじゃなぁい? まあでもぉ、アタシもまだ本気じゃなかったしぃ、そろそろアタシの強さを見せてあげるわぁ!」
「そんなところに逃げながら言われてもイマイチ説得力がないね。本当はそこに逃げるしか。できないんじゃないのかい?」
「ウフフ……」
 ヒルダは、地上にいるビャクヤに手を向けた。
「スキューア!」
 非常に速く、鋭い刃がビャクヤに迫った。
「あぶな!」
 ビャクヤは鉤爪で刃を防ぐ。
「ほらほらぁ、まだまだあるわよぉ?」
 ヒルダは、次々と高速の刃をビャクヤに打ち出した。
 ビャクヤは受け止め続けるものの、ヒルダも鉤爪の防御が及ばない位置を狙って飛ばしている。
 やがてビャクヤは、刃を防ぎきれなくなってきた。防御に回っているのが不利だと考え、ビャクヤは距離を取ろうとした。
「逃がさないわぁ!」
「あっ!?」
 刃がビャクヤの肩を掠めた。
 ビャクヤは、肩に付けられた傷に手を触れる。多少の出血をしているものの、傷口はそれほど深くはない。しかし、切り傷特有の焼けるような痛みがある。
「痛いねぇ。まったく……」
 ビャクヤは、手についた血を舐め取った。そして相変わらず、宙を浮遊するヒルダを見上げる。
「ウフフ、もっと苦しんだ顔を見せてちょうだぁい!」
 ヒルダは、こうして空中にいる限り、ビャクヤの攻撃は一切届かないものと高をくくり、余裕の笑みを見せていた。
「なに言ってるんだい? 今度はおねーさんが苦しむ番だよ?」
 言うとビャクヤは、手のひらを宙に向けて顕現の糸を放った。
 糸は一瞬にして蜘蛛の巣網となり、宙に停滞した。
「あらどうしたのぉ? 全然届いてないわよ?」
 ビャクヤの作った巣網は、攻撃のためのものではなかった。
 ビャクヤは、巣網に手を向けたまま地を蹴った。すると驚くべき速度で、巣網に引き寄せられるように、その身を巣網へと移動させた。
「空に逃げたって。ムダだよ!」
 獲物に対しては鋭い切れ味を持つ巣網だが、それを操るビャクヤにとっては、一体化できる代物であった。故に、糸と一体化しようとするとビャクヤの体は巣網に一瞬で近付く事ができた。
 ビャクヤは、巣網を足場にして更に宙を進んだ。やがてビャクヤは、ヒルダの頭上にまで迫った。
「ほうら。捕まえた!」
 ビャクヤは、真下に向けて鉤爪を伸ばした
「きゃああああ!?」
 ヒルダは身を守る術もなく、強かに地に叩き付けられた。
「この辺に……」
 ビャクヤは空中で糸を放った。できた巣網に移動し、糸一本だけを垂らし、それを伝って地に下りた。
 地に足を付けると、ビャクヤはつかつかとヒルダに歩み寄る。
「ごほっ……ごほっ……!」
 ヒルダは、体を強く叩き付けられた衝撃にむせていた。
「おーい。大丈夫かい?」
 ヒルダがはっ、と顔を上げると、ビャクヤは、覗き込むようにヒルダに顔を向けていた。
「この程度じゃ。終わらないよね?」
 ビャクヤは、一切構えずに立っている。ヒルダの呼吸が整うまで何の動きも見せなかった。
「アタシに膝を付かせるなんて……」
 ヒルダは、ショックを受けたような顔をしている。
「まさか。もう終わりなんて言うんじゃないだろうね? だとしたら。とんでもない見かけ倒しだよ。キミ」
 ヒルダの表情が一変した。
「アンチディスパーシブ!」
 ヒルダは、大波のように押し寄せる刃を放った。
 不意打ちを狙ったように見えたが、ビャクヤは鉤爪を目の前で交差させる事で突然の攻撃を受け流した。
「ふふ。そんな攻撃見え見えだよ……!?」
 ビャクヤは、鉤爪を背中に戻した。同時に驚いてしまった。
 目の前にはヒルダがいるであろうと思っていた。そのはずが、その先にヒルダの姿はなかった。
「こっちよ」
作品名:BYAKUYA-the Withered Lilac-5 作家名:綾田宗