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BYAKUYA-the Withered Lilac-5

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「さて。そろそろ決めさせてもらうよ。飽きてきちゃったんでね!」
 ビャクヤは、顕現を一点に集め、『ヴェールオフ』を発動した。そして鉤爪を振り回しながらヒルダに連続攻撃を仕掛ける。
「ハハハハッ! それそれそれそれ! めった切りだ!」
 ビャクヤは、フィギュアスケートの技術のように回転しながら、ヒルダを切り付けた。
「うぐっ……! キャアンッ!?」
 ヒルダは、ビャクヤの攻撃を受け止めようとしたが、ビャクヤの攻撃は一回転する毎に八回の連続的なものであり、顕現をほとんど込められない守りは容易く破られてしまった。
「まだまだだっ……!」
 ビャクヤは、急停止すると同時に顕現を一気に鉤爪へと集め、瞬時に伸びたそれらを前屈姿勢になりながらヒルダに向けた。
「貫け!」
「いたぁいっ!?」
 この攻撃により、ヒルダの守りは完全に破れ、宙に吹き飛ばされた。
「ほらほら逃さないよ!」
 ビャクヤは、ヒルダの飛んでいった方に巣網を放った。巣網はヒルダを先回りして宙に広がり、ヒルダの体が触れた瞬間拘束した。
 ビャクヤは、巣網に糸を伸ばし、ヒルダに向かって跳躍した。そして、その勢いはそのままに、鉤爪を前にして体当たりした。
 ビャクヤは素早く着地し、鉤爪を足元に集めると、スライディングの要領で地面に足を伸ばした。そこへ丁度よくヒルダが落下した。
「チェックメイトだ!」
 ビャクヤは、立ち上がりながら纏っていた顕現を爆発させた。爆発に当てられたヒルダは再び吹き飛ばされ、壁に強かに叩き付けられる。
「ギャッ……!」
 ヒルダは、壁に激突すると口から血を噴き出した。既にダメージはもう、昏倒しそうなほど大きなものであったが、ヒルダは意識を失わず、前を見続けた。
 見つめる先には、もうビャクヤが寸前まで迫っていた。
 ビャクヤは、両手に大量の糸を顕現させ、ヒルダに口づけするかのように迫った。
「仕止める……!」
 ビャクヤの顔はヒルダの横を通りすぎた。耳元でささやくような声がすると、ビャクヤの姿が一瞬消えた。次の瞬間、ヒルダは何重もの糸で身動きを封じられていた。
「逃げ場なんて。ないよ?」
 ビャクヤは、ヒルダの真横にいた。
「ンぐッ……ンん!」
 ヒルダは、身動きのみならず呼吸も封じられていた。少しでも息ができるように、糸の隙間を鼻と口で探してもがいている。
「あはは。いいねぇその表情。さて。『眩き闇』なんて言われてる顕現の保持者の味。いったいどんなものなんだろうね……?」
 ビャクヤはヒルダに、止めを刺そうとした。
「待ちなさい、ビャクヤ」
 ビャクヤが止めに鉤爪を動かそうとした瞬間、ツクヨミはビャクヤを止めた。
「姉さん? 急にどうしたのさ。まさか。こいつを殺すのが惜しくなったのかい?」
「そんなはずないでしょう。最後に二言三言、話したいことがあるだけ。とりあえず顔だけ解放してあげなさい」
「はいはい。分かったよ」
 ビャクヤは、鉤爪を振るってヒルダの頭付近の糸を切った。
「ごほっ……! げほっ……!」
 ヒルダは、窒息寸前であったが、まだ呼吸することはでき、急激に入ってきた空気に激しく咳き込んだ。
「よかったわ。まだ意識はあったみたいね」
 ツクヨミは不敵な笑みを浮かべ、捕らわれたヒルダを見下す。
「応えてくれなくていいわ、ただあなたに言っておきたい事があっただけだから」
 ヒルダは、息も絶え絶えにツクヨミを睨むしかできなった。
「借りは返しておく。……別に私自身が借りたものではないのだけど。あんな男でも、嘗ての私の仲間だったのでね……」
「……一体何の事かしら?」
 ヒルダから返答があった。
「あら、まだ話せる元気があったのね。ならもう少しだけお話ししましょう。『万鬼会』、『鬼哭王』オーガ、ここまで言えば思い出したわよね?」
「アタシたちにケンカを吹っ掛けてきた……!?」
 ヒルダには覚えがあった。それもそのはずである。『万鬼会』とは、『忘却の螺旋』とどちらが強い能力者集団であるか、それを決めるため直接対決をした組織であった。
 そしてその時の戦いで、『万鬼会』は『忘却の螺旋』、というよりはヒルダ一人の力によって下された。しかし、大打撃を受けたのは『万鬼会』だけではなかった。
 あの戦いで、『忘却の螺旋』側の人間が『深淵』の顕現に触れ、虚無に落ちてしまっている。ヒルダの朦朧とする意識でも、ありありとその夜の記憶が甦った。
 ヒルダが、全てを思い出したような様子を見せたのを確認すると、ツクヨミはヒルダの耳元に顔を寄せ、囁いた。
「"Mein richtiger Name ist Strix.Strix von "Sephirot".Hast du dich an mich erinnert ?"(私の本当の名は、ストリクス。『生命の樹(セフィロト)』のストリクス)。思い出してもらえたかしら?)」
「セフィロト、ですって……!?」
 耳慣れない言葉で囁かれたが、ヒルダはこの単語だけは聞き取ることができた。
 ツクヨミは、ヒルダから顔を離し、背を向けて歩きだした。
「さあ、もういいわ。やって頂戴、思う存分味わうといいわ」
 ツクヨミは、ビャクヤとすれ違いざまに告げ、二人の戦いを見守っていた所まで下がっていった。
「ふふ……待ってたよ。その台詞……」
 ビャクヤは小さく笑うと、ヒルダの目の前に立つ。ヒルダは、これからビャクヤに捕食されようと言うのに、見ていたのは離れていくツクヨミの背であった。
「待ちなさい! あなた、助けてあげた恩を……むぐっ!?」
 ビャクヤは糸を放ち、猿ぐつわのようにヒルダの口を塞いだ。
「何を騒いでいるんだい? キミは負けたんだ。散り際は潔くするものだよ」
 ビャクヤは、鉤爪に糸を纏わせ、風車のように鉤爪を回転させた。
「さあおいで。僕の中に……!」
 ビャクヤは、回る鉤爪の中心に、ヒルダの頭から足元まで通した。鉤爪によって糸が巻き付けられ、ヒルダは最早原形が分からないほどぐるぐる巻きされた。
 ビャクヤは、ヒルダを巨大な蛾の繭のようなものにすると、風車のように纏めていた鉤爪を拡散し、四方八方、上下に至るまで繭を囲んだ。
「ハハハハハッ! 楽しいねぇ!」
 ビャクヤは、繭に向かって鉤爪を一気に突き刺した。中に囚われるヒルダはズタズタに貫かれ、引き裂かれた。
「こんな……! きゃああああ……ッ!」
 繭は一瞬にして、ヒルダの血に染まった。そして血煙とともに弾け飛んだ。
 糸から解放されたヒルダは、そのまま力無く倒れ、血の海に沈んだ。
 ヒルダは、全身をめった刺しにされ、胸元から腹部にかけてぱっかりと裂かれている。眼をかっ、と見開き、瞳孔は散大している。完全に事切れていた。
「ぷっ!」
 ビャクヤは、吹き出したかと思うと天井を仰ぎ、腹を抱えて大笑いした。
「アハハハハ……! この人すごい雑魚だよ!」
 ビャクヤは、死体を指さしてしばらく笑った。
 ヒルダの死体の上に、黒く光るものが浮かんで来た。ビャクヤは、それに向けて鉤爪を伸ばして挟み、それを自らの口元に寄せる。
「ふう……笑ったら。余計にお腹が空いちゃったよ」
 すっ、と一息吸うと、ビャクヤは黒い輝き、ヒルダの顕現を飲み込んだ。
作品名:BYAKUYA-the Withered Lilac-5 作家名:綾田宗