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GLIM NOSTALGIA

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「……アル」
 目を閉じて思い浮かべたのは、エドワードは自分が命を賭けてでも(そんなことを言うと怒るのだけれど)救うべき弟の姿だった。どんな批難を受けても、これだけは譲れないのだ。だが…。
「……大佐…」
 あの日自分達を訪ねて来てくれた男の姿が、弟の姿をかき消して浮かんできた。
 怒りに、憤りに燃える目を真っ直ぐにぶつけてきた男だった。大きな声で、触れたら火傷してしまいそうな熱さで、底なしの泥沼に落ち込んでもう指一本だって動かしたくなかったエドワードを揺さぶった男だった。
 いつも迷う時、背中を押して欲しいときには決まってあの時の彼を思い出す。その強さを欲して。
「………」
 ソフィアが旅路の果てに見つけ出したもの。失われた体の一部を取り戻したいと、雲を掴むような希望に縋ってわずかばかりの家財を持って線路脇を行く人。
 エドワードが目指し、手に入れるべき未来。

『なんだ、この有様は!!』

 しばらく無言でいたエドワードだが、ふぅ、と覚悟を決めて息を吐く。そうしてゆっくり身を真っ直ぐに立たせ、目を閉じると一回だけ深呼吸をする。それからおもむろに両手を上げて――

 パシンッ!

「…つっ…」
 軽く赤くなった頬を擦りながら、エドワードはようやく不敵な笑みを浮かべた。
「…弱ってられっかよ、っての」
 そうして何かに挑みかかるように目に力をこめて、短く言い捨てた。

 ソフィアの手前の街、リームにエドワードが到着したのは、ロイに遅れること三日と半日の後だった。
 朝に駅に到着したエドワードは、旅の疲れも見せず、すぐさまソフィアへの移動手段を探した。が…。
「…馬車が、…盗まれたァ…?」
 予想外の事態に、彼は鸚鵡返しに繰り返して絶句した。
 言葉を失っている少年に、そうなんだよ、と御者は答えた。
 なんでも三日前、いつものように旅人達を乗せて出発したはいいが、道程を半分も行ったあたりで、なぜか軍人に包囲された。自分は慌てて逃げたが、どうしてもソフィアに行きたい旅人達は、軍用車を壊してその包囲から馬車で逃げ出したのだという。以来、当然のように馬も馬車も帰ってこない。馬車は壊れても仕方がないが、馬は帰巣本能で帰ってくるのでは…と思っているが、その兆しはないという。それなのに軍人達はここ数日取調べと称して日に二度は最低でもやってくるし、まったくついてない、と彼はぼやいた。
 間に三日も空いていたら、ロイがソフィアに到達していないわけはないだろう。その騒動の現場に居合わせたいたかどうかはわからないが。
 だがどの道、馬車が動いていないのなら仕方がない。徒歩で行くか、自分で馬車か馬を調達するしかないだろう。エドワードは溜息をついて、とりあえず朝食を何か食べてから行動を再開することにしたのだった。

 腹ごしらえがすむと、エドワードは、たいした休憩も取らずに、安く買い叩いた馬にまたがっていた。別段得意というわけでもないが、乗れなくもない。上に乗り上げるのに関しては、悔しいことに介助してもらわなければならなかったけれど…。
 目指すは奇跡の町だった。

作品名:GLIM NOSTALGIA 作家名:スサ