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悪魔言詞録

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167.外道 スライム



 なあ、召喚主さん。俺にもチャンスをくれないか。

 俺さ、見ちゃったんだよ。シブヤの真ん中のほうで怪しいやつらに喚び出されたあの「ご立派」な悪魔。惜しくもあんたにやられちゃったけどさ。召喚に失敗した不定形な状態であれだけ「ご立派」に戦ったんだ。しかも、何度も何度も回復魔法で「ご立派」に立ち上がってきた。俺はそれに感動して、思わず号泣しちゃったんだ。だから、俺も頑張ってあんな「ご立派」なスライムになりたい。今はまだふにゃふにゃだけど、いつの日か何度でも立ち上がって敵に向かっていけるようになりたい、そう思ったんだよ。

 それにさ、あんたの仲魔にもずいぶんと強くなったやつがいるじゃないか? あのヒーホー、ヒーホーとうるさい雪だるま。あいつ、昔は俺と対して変わらない実力だったのに、今はすっかりあんたのパーティの主力に収まっているじゃないか。俺、素直にうらやましいと思うし、めちゃくちゃくやしいよ。そりゃあ、あいつほどかわいくはないけどさ。俺だってちゃんと修行を積めば、何らかの才能が開花するかもしれないよ。

 でも、そんな力をつけられる場所なんて、この地でも少なくなってきているんだ。あの雪だるまはカブキチョウとやらでずいぶんと暴れまくったらしいけど、あそこも今はすっかりおとなしくなっちゃって、もう出がらしのお茶みたいなもんだ。

 となると、いろいろな経験ができそうなのは、もうあんたについていくしかないんだ。なんか消去法みたいな言い方になって申し訳ないが、これでも俺なりにちゃんと考えたんだよ。合体の失敗で俺が出てきて落ち込んでいるのはわかるけど、これも何かの縁だと思って仲魔から外したり合体したりはしないでくれよ。頼むよ。

 じゃあ、これから合体素材の仲魔を集めに行くから、少し協力してもらう?

 ……なんか、チャンスをもらえたら、急に自信がなくなってきた。でも、「ご立派」になるためだ。なんとしても結果を出してやるぞ。


作品名:悪魔言詞録 作家名:六色塔