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悪魔言詞録

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138.妖鬼 スイキ



 おい、おまえ。そろそろ雨が降り出すから気をつけろ。

 なんでわかるのかって? こちとらスイキさまだぜ。水に関わることなら大抵のことは察しがつくさ。この雨がどれほど続くかもわかるぞ。……うん。今回はそれほど長雨にはならないだろうな。せいぜい数刻で上がるにわか雨だ。

 すごい能力だなって、いや、それほどでもねえよ。ただ、湿度だとか雲行きだとか、そういう他の奴らが気づかないところに目が行くって、それだけのことさ。この力がほしけりゃ、漁師として数年くらい船に乗ればできるようになるさ。海のど真ん中で時化を読み取れなかったら命取りだからな。

 ということは、漁師をしていたのかって? いや、俺はしてなかったな。ただ俺のおやじが船に乗っていたんで、こういった水に関する知識を子供の頃から植え付けられていたのさ。

 でも、こんな知識があっても陸にいるうちは何の役にも立たない、若い頃はそう思っていたんだよ。だから、若い頃はとにかく体を鍛えていた。誰よりも強くなりたいという思いもあったし、力さえあれば何だって手に入ると思い込んでいたからな。

 そんなことをしているうちに3匹の愉快な鬼たちと出会ったわけだ。俺を含めた4匹はすぐさま意気投合した。そうしていく中で、4匹とも実力があって、かつ、面白い特技を持っているってことに気がついたわけよ。

 こうなるともう楽しくて仕方がない。俺たちはそれらを用いてめちゃくちゃ暴れ回ったのさ。こういう発言は正直あまり格好良くないが、悪いことなら大抵のことはやったよ。力がほしかった4匹が、本当に力を手に入れたわけだしな。まさにやりたい放題だった。

 でも上には上がいるもんだ。俺たちはいつの間にか偉いやつの配下としてこき使われ、その後、別の偉いやつにやっつけられて落ちぶれた。さらに、この地でもおまえに敗北することとなったってぇわけよ。

 おごれる者は久しからずってやつだな。ほんと、力ってものは「水」物だよ。


作品名:悪魔言詞録 作家名:六色塔