悪魔言詞録
70.龍王 ミズチ
さてさて、召喚主さん、よろしくお願いしますよっと。
え、おまえはあのカブキチョウに巣食っていたでかいやつかって? いやいや、あいつなんかじゃありませんよ。そもそもあいつはね、私たちミズチの中でも嫌われていたんです。ミズチ界の面汚しってわけだったんですよ。だから、召喚主さんがやっつけてくれて、本当にありがたかったんです。
私らは決していいやつではありませんが、支配しているものたちをいじめて遊ぶようなまねもしません。水槽の中で乱暴を働けば、その生態系が狂ってしまうように、池や湖に巣くうわれわれも同じような立場の仲間たちを苦しめることはしないんです。
そういう禁忌をあいつは犯してしまった。私たちはいつかは報いが来るだろうと思っていたけれど、あいつの強大になった力の前に何もできなかったんですよ。ただ指をくわえてみていることしかできなかった。そこに現れたのが召喚主さん、あなただったというわけなんです。
ですからね、これからはミズチ一族をあげて、あなたを支援していきたいと考えているんです。特に、あの泥人形たち。彼らは、今、恐らく私たちをめちゃくちゃ嫌っているでしょうからね。これから少しずつ信頼を取り戻していかないと。
それには、彼らと仲がいいあなたと協力していくことが、一番手っ取り早いと思うのです。いささか打算的ではありますが、私たちミズチが、この受胎後のトウキョウで爪弾きになるのを止めるにはこれしかないなと思っています。召喚主さん、私たちミズチは、必ずお役に立ちますので、お側に仕えさせてくださいますようよろしくお願いいたします。
……そんなことをしなくても、たぶんマネカタのみんなは分かってくれてると思う? うーん。そうかもしれませんが、それでは私たちの気が収まりません。一族からあんな非道なやつを出してしまった責任も取らないとだし。そういうことですから、召喚主さんが嫌だと言ってもついていきますからね。