悪魔言詞録
68.天使 パワー
うーん。どうしたもんかなあ。
ああ、召喚主さん。いつもお世話になっております。いえ、まあ、いろいろありますが何とかやらせていただいております。ええ、召喚主さんのおかげです。
ところで、浮かない顔をしているようだけど、どうしたんだって? うーん。こういう相談を果たして召喚主さんにしていいものか……。
無理なようなら聞かなかったことにするから、取りあえず話してみてはどうだ? うーん。もちろん、召喚主さんは信用しているんですが、こればかりはなあ……。
……でも、まあ、取りあえず話してみましょうか。話すだけならただですし。
実は、私たちの名前についてのことなんです。私たちは神の力を行使するという重要な役割を負っているので、この名前をいただいてるんですが……。ねえ。その、なんていうか、偉大なる創造主の命名に文句など言いたくはないのですが、正直、脳筋野郎みたいな名前じゃないですか、この名前。
だって、ずばりパワーですよ。神の力を行使するどころか、日夜、筋トレしてそうなやつだとみんなに思われてそうじゃないですか。え、そんなことは思ってない? いや、でもみんな一瞬、頭によぎるでしょう。分かってないとでも思っているんですか。
ええ。ですから、改名を考えているのです。でも、今からだと骨が折れるし、創造主にも怒られてしまいそうですし、改名するのもリスクが大きいなあと。それで困っているというわけです。
でも、パワーって名前、結構カッコいいじゃないかって? いやいや、全然ですよ。他の天使たちはアークエンジェルやプリンシパリティとかめちゃくちゃかっこいいのに、パワーって。さっきも言いましたけど、特に脳筋ぽいのが天使らしくなくて嫌なんですよね。
いいや、力があるということは素晴らしいことだし、それにふさわしい動きをしてくれている? うーん。何かだまされているような気がするけど、もうちょっとこの名前で頑張ってみることにしましょうか。