悪魔言詞録
59.外道 ブラックウーズ
「なあなあ、おまえ。おまえは俺のこと、どう見える?」
「……そうか」
「なあなあ、おまえ。おまえは俺のこと、どう見える?」
「……ふうん」
なんだよ。誰も正直に言いやがらねえ。みんな俺のことをスライムがちょっとデカくなって黒くなったようなやつだといいやがる。
確かにおまえらは悪魔だし、俺たちは仲間だけどさぁ、ちょっとそれはつれねえ、というより水臭いんじゃねえのかな。
俺、外道ではあるけどさ、見るやつによって姿を変えられる能力を持ってんのに。ここのやつらにゃそれが通用しねえんだな。なんか悲しいよ。
え、おまえのその能力は、身近な人の姿に変わる能力だから、俺たちにはそのままの姿で見えるんだって?
うーん。そっかあ。じゃあ、おまえらみたいな身近なやつらで試してみても、しょせん、俺は黒いスライムでしかないのか……。
じゃあ、ここらにやって来た新参者で試してみないとだな。
おお、ちょうど見慣れないやつがこの坑道を走り抜けていくぞ。
「おーい! おーい! なあ、そこの。そう。体に入れ墨が入ったようなおまえだよ。おまえに聞きたいことがあるんだ。俺、どんなふうに見える?」
すっごく怖そうに見える? よっしゃ。俺の能力もまだまだ健在だったな。じゃじゃーん。俺の本当の姿はな。ただの黒くなったスライムなんだよ。まあ、もちろん実力はスライムなんかよりはるかに上だから、そういう点では怖そうに見えるというのは外れてないけどな。
ところで、おまえ。なんでこんな暗い坑道を通っているんだ。何、ちょっとすべきことがある? ふーん。悪魔のくせに、いろいろと忙しいんだな。
よしっ。俺さまは今、機嫌が良い。おまえさえ良ければ、ちょっと手伝ってやってもいいぞ。
それに、おまえにくっついていけば、いろんなやつらに俺の特技を見せてやることができるからな。こっちも一石二鳥ってもんよ。
どうだい、悪くない話だろう? 俺を一味に加えておくれよ。
よし、じゃあ、頼んだぞ。