悪魔言詞録
58.龍王 ナーガ
あーあ。つまんねえなあ。
このカブキチョウでの「お遊び」も、とうの昔に飽きちまったし、お偉方はいろいろとうるせーし、下の奴らも最近、調子をこきやがって、言うことを聞かせるのが大変だし、もうすっかり嫌になっちまった。
ったく、こんなはずじゃなかったんだよなあ。本当なら俺も今頃、マガツヒのたっぷりの風呂に、色っぺえ姉ちゃんとつかってるはずだったんだけどなあ。それが、上からも下からも責められてる始末だよ、ったく。
これからどうすっかなあ。このままカブキチョウにいてもジリ貧なだけだし、ゴズテンノウももういやしねぇし、ニヒロは肌に合わねぇし、かといって俺一人じゃあどうにもならねえしなあ……。
なあ、おい。おまえ、そう、そこの細っちいおまえだよ。おまえ、なんかいい方法、知らねえか。この先が見えねえトーキョーでよ、他人の尻馬にしか乗れねぇ一匹の蛇が生き抜くにゃ、いったいどうすりゃいいと思う?
何、簡単だ? 強いやつに付いていけばいい? その強いやつが分かりゃあ、苦労しねえんだよ。あのゴズテンノウが率いていたマントラが壊滅する事態だぜ。かといって二ヒロのM字ハゲも気に入らねぇ。ここでマネカタをいじめてたって、ものごとは何も進みゃしねえんだ。なあ、俺、死ぬのは嫌だよ。死にたくねぇからさ、俺に強いやつを教えてくれよ。俺に強いやつを紹介してくれよ。
え、じゃあ、俺について来いだって? あんた、つええのか。俺に付いてきて、俺より強いやつがいるなら、そいつに寝返ればいい? おいおい。そんなんでいいのかよ。土壇場で怖くなって俺が裏切ってもいいっていうのか?
そうならないように、裏切らないようにすればいいだけだ? それだけの自信があるってことか。分かったよ。あんた、弱そうだけど、悪魔も人と同じで、見かけによらねえのがいるからな。一つ、賭けに乗ることにするぜ。
じゃあよ、このウムギの玉ってのをやるからさ。俺のこと仲魔にしてくれよ。