悪魔言詞録
55.幽鬼 ピシャーチャ
ん? 俺になんか用か? え? おなかでも痛いのかって? いやいや、そんなんじゃないよ。こんな気持ちの悪い姿をした俺でも、いろいろと思うことはあるんだよ。
良ければ聞かせてくれないかって、おまえはこんな気持ち悪いやつの話も聞くのか。よくよく変わったやつだな。そういうやつだから、いろいろな悪魔を率いていられるのかもな。俺なんか、イケメンの悪魔なんかとは絶対、話しなんかしたくないもんな。かわいい娘だったらまあ話は聞いてやらんこともないけど、そういう娘はまず俺なんかとは口を利かないからな。
いやさ、うちの一族に……、うちらピシャーチャには、一族がいるんだよ。でさ、みーんなおんなじ格好をしてるの。おじいちゃんもおばあちゃんもお父さんもお母さんもおじさんもおばさんも、み―んなおんなじ姿形だし、兄貴も姉貴も弟も妹もいとこもまたいとこも、これまたみ―んなおんなじ格好してんのよ。み―んな気持ち悪いの。美形は1人もなし。いっそ清々しいよね、こうなると。
で、うちの一族に有名なやつがいるだろ? まあ、有名ったってやっぱり二目と見られたもんじゃないんだけど。やっぱさ、有名になっても格好良くなるとは限らないんだね。立場が人を作るとは言うけれど、やっぱり限度があるということかな。あ、そもそも人以前に俺らは悪魔か。じゃあ、立場が変わっても格好良くはならねえか。
なんか、話があっちへ言ったりこっちへ言ったりしてるけれどもさ、要するに気持ちが悪い俺の一番言いたいことは、一族にすげえ優秀で有名なやつがいるから、そいつをぜひ頼むっていうことだよ。俺らみたいな気持ち悪くて嫌われている悪魔にも、仲間を愛する心ってやつがあってなあ。
そいつはある日、どっかのブローカーに無理やり連れてかれちまったんだが、サポートは何でもできるすげえやつなんだ。そいつさえ入れば冒険が捗ることは確実だから、必ず見つけ出したら引き取って重宝してやってくれよな。