悪魔言詞録
51.聖獣 センリ
ん? なんだい? なんか言いたそうな顔をしてるね?
まあ、だいたい言いたいことは分かってるよ。どうせ変化前の姿のほうが良かったっていいたいんだろう?
ほら、そうだ。男ってのは相変わらず分かりやすいねえ。
とは言っても、こっちもそうそう同じ格好ばかりしていられない理由があるのさ。
おまえさんだって、心の中じゃ分かっているだろう? これから先、もっと強大なやつが立ちふさがってくるってことを。そんな中、尻尾が二つのねこが1匹いたとしても、できることはたかが知れている。だから、そんな姿なんて犠牲にして、強さと実用性を追い求めたというわけさ。
え? でも、かわいさと強さを上手に両立してる仲魔もいるだろうって? そりゃあ、高いレベルの悪魔の中にはそういうのもいるだろうさ。でも、あたしはそんな器用なことはできないんだ。そういうやつらがいいなら、別口で調達してくれ。あたしゃ、もうその役割は卒業するからね。
まあ、どうしてもって言うなら、前の姿になれはするよ。けど、もうあたしは負けるのはたくさんだ。勝利を優先するために、体裁など気にしていられないんだよ。
だから、戦闘時は得意の衝撃系と吸収攻撃で思う存分に仕事をしてやる。連れて歩ってるときも、何かあったら拾ってやるよ。交渉時だって、相手から石ころの一つももぎとってやるさ。
なんせ、こっちはいろいろなものを投げ打ってるからな。できることはなんでもやってやるし、それぐらいの動きはできるつもりでいる。それでいいっていうなら、このまま連れてっておくれ。それでも前の姿にこだわるんなら、残念ながらここでお別れだ。さあ、どうすんだい?
おお、そうかい。こんなひねくれ者のあたしでも受け入れてくれるっていうのかい。まあ、仲魔になったときから、信用に値する召喚主だとは思っていたけどねえ。ありがたいよ。
さあ、早速敵さんが大軍で到来だ。それじゃあ、お言葉に甘えて、たっぷりと暴れるとするかねえ。