悪魔言詞録
50.神獣 カイチ
どうも、初めてお目にかかります。召喚主さん。今後ともよろしくお願いしますね。
ああ、そうだ。申し遅れました。わたくし、角のある羊だか牛みたいな姿でおなじみのカイチと申すものです。以後、お見知りおきを。
ところで、召喚主さんはこれから、どちらへ行こうとしてらっしゃるんですか。カブキチョウ? マントラの残党がいるといううわさの場所ですね。わたくしね、こう見えても不正が大っ嫌いなんですよ。
実は昔、人間界にふらっと立ち寄ったとき、二人の男が言い争いをしていましてね。興味本位で聞いていたんですよ。そうしたら、片方の男のほうがどうにも分が悪い。議論の勢いが次第になくなり、話していることも支離滅裂、口調もしどろもどろになってくる。わたくし、この男に次第に腹が立ってきてしまいましてね。気付いたら、この自慢の角で突き殺してしまってたんですよ。この場合はうそでしたが、これくらい、不正や悪いことが嫌いなんですよ。覚えていただければ光栄です。
そこには、無実の罪で捕まっているマネカタがたくさん? それはよくありませんね。わたくし、こう見えて正義感も強いんですよ。曲がったことが大嫌いっていいますか、公正とか公平なことが好きなんですよね。
そういう意味では法律ってすごいですよ。たくさんの人が住んでいる社会の秩序を維持できるんですから。もちろんほころびなどはややあるかもしれませんが、おおむね法治国家はいい感じにやっているじゃないですか。
それに比べると人治で動いてる国はどうも好きになれません。やはり上の人が好き勝手やってるように見えてしまいます。やっぱり国家は法で治めるに限りますね。これから行くカブキチョウも、どうせマントラの残党が牛耳って、好き勝手にマネカタをいじめているんでしょう? こりゃあ、一つ、この角で貫いてやるしかありませんね。
え? 理想論や国家の話はいいけど、目の前のザコを倒してくれって? ああっ、すみません。