悪魔言詞録
48.妖獣 ライジュウ
なあ、召喚主さんよぉ。
おらぁ、常々悩んでいることがあるんだ。おまえさん、聞いちゃくれねぇか。おぉ、聞いてくれるのか。おまえさん、格好に似ず優しいのう。
かみなりっていうのはよぉ、すげえようで、実は大したことねぇんじゃねえかなあって思うんだよ。なんでって? よくよく考えても見ろよ。火と氷と風と雷、どれが一番役立たずだと思う? 火? 今どきどこの家庭にも、コンロや湯わかし器ぐらいあるだろう。暖だって取れるし。制御さえできれば、火のおかげで人間は大助かりだ。水や氷だってそんなに変わりゃあしない。冷凍庫をみんな持っているから、今の人間は、みんないつでも冷たい飲み物を飲むことができるんだ。それに夏場のプールや海は、さぞかし気持ちがいいらしいじゃねぇか。下手したらこいつらが一番人気かもしれん。風だって重要だ。大気を司っているからな、夏や冬に快適に過ごせるのは風を操るエアコンたちのおかげだ。まあ、台風という形でちょっとおいたはするけれど、それを含めてもやっぱり頼りになる存在だ。
それに引き換え、雷は情けねぇ。せいぜい嫌いなやつをびびらせるのと、田んぼの収穫を上げることぐれえしかできねえんだから笑っちまう。え、当たればでかいじゃないかって、それがまず当たんねえのさ。誰かが調べたところによると、雷が人に当たる確率は100万分の1だっていうじゃねえか。こりゃあ、当たらないのとほぼ等しいといっても差し支えねぇぐらいじゃねえか。
こりゃあいっそのこと、俺も宗旨変えして、ヒジュウとかヒョウジュウとかフウジュウなんて名前で、一からやり直そうかなあなんて思ってんだ。なあ、おまえさんはどう思う。こんな頼りにならねぇ仲魔を連れるより、別属性になってくれたほうがありがてえもんかな。
何? 別の属性になってもいいけど、ライジュウのままでも頼りにしてるって?
何だよ、そう言われちゃ頑張るしかねえな。仕方ねえ、これからもよろしく頼むわ。