悪魔言詞録
44.妖鬼 オニ
うーん。これは一体、どういうことなんだ?
何かあったのかって? ああ、俺もな、足りない頭でこうやって思い悩むことがあるんだよ。ただただ何も考えず、ひたすら金棒を振り回しているだけだとおまえは思ってるかもしれねえが、俺は俺なりに考えてることがあるんだわ。
……え? 良かったら話してくれないかって、そんなことを言われてもなぁ。他でもない、おまえのことなんだよ。だから、なんか話しづらいっていうかさぁ。
まあ、ここまで話したからには話すか。おまえさ、昔、俺たちを退治しに来たやつに似てるんだよ。
俺ら、とある島に立てこもってた時があってさ。そのときに、おかしなニンゲンが攻め込んできて。そいつ、すげえ強いやつでさ。しかも変なやつが仲間なんだ。言葉が通じているとは思えない猿だの犬だの鳥だのといったやつらを手なづけていて、めちゃくちゃな強さで俺らをやっつけて、あっという間に財宝を奪い尽くして帰っちまったのさ。
どこが似てるんだって、おまえとそっくりじゃねえか。めちゃくちゃな強さもそうだし、こんなに奇妙な悪魔を何匹も使役して、さらには順調に俺たちの宝物を奪っていって……。
おまえ、あいつの生まれ変わりなんじゃねぇか? そうでなくとも、あいつの血を引いているとか、あいつのことを知っているとか、なんかあるんじゃねえか?
……そう、そいつ! そいつも確か、桃から生まれたって言ってた! おまえ、やっぱりあいつを知ってるんだな。あいつは一体何だったんだ? おまえの先祖か? おまえはあいつの何なんだ?
ん? この話、ニンゲン界では有名なのか? でも、自分があの人に似てるだなんて思ったことはない?
うーん。よく分かんねぇな。もしかして、ニンゲンってやつはみんな俺らより強いのか? でもおまえは半分悪魔だし……。
あー、もういいわ。やっぱり俺は、何も考えずに金棒をぶん回すことにするよ。でも、機会があったら、もうちょっとあいつのこと、教えてくれよな。