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悪魔言詞録

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37.魔獣 ネコマタ



 なんだい? 聞きたいことがあるって。

 え、やっぱり、昔はネコだったのかって? そりゃあそうさ。もう気が遠くなるほど昔の話だけどな、こんなあたしも、ただのネコだった時代があったんだよ。
 野良だったのか、それとも飼われていたのかって? 生まれた時は野良だったな。でも、ネコとはいえ野良っていうのは、案外、過酷でね。産んだはいいけど育てることができないと判断したのか、お母さんはあたしを捨てちまった……。
 あたしは、ただにゃあにゃあ泣き続けるしかなかったよ。エサの取り方も知らないどころか、文字通り生き方が分からないんだ。そんな私の上空から、どう猛で汚い目をしたカラスが上から急降下してくる。もう駄目だなって観念したときに、ぎりぎりで一人の人間に救われたんだ。

 保護されたあたしは、その人の家ですくすくと育った。人っていうのはすげえやつで、その気になればあたしをひねり殺せるぐらいの知恵も力も持ってるのに、あたしが何をしても許してくれる。箱の中のティッシュを全部取ってボロボロにしても、ゴミ箱をひっくり返しても、手にかみついたことだってあったっけ。それでも人間は、全てを許してくれたんだよ。
 そんな人間に育てられて、あたしはどうにかネコとして生きることができて、こうやって最終的にネコマタになった。でも、こうやってネコマタとして力を得ても、あたしは人間に恩返しができなかったんだ。人の寿命はネコマタよりもはるかに短いからね。だからかな、例え別の人間でも、人間って生き物に何か恩返しがしたいなあって、常々、思っていたんだ。
 だから、仲魔になってくれたのかって? 別に、そういうわけじゃないけどさ。あんたは以前、人間だったらしいけど、今はもう悪魔みたいなもんだろう?

 ……でも、あんたを初めてみた時、あたしを飼ってくれたその人に、ちょっと似ているなと思ったっけ。やっぱりどこかで、あの人にまた飼われたい、そう思ったのかもしれないな。


作品名:悪魔言詞録 作家名:六色塔