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悪魔言詞録

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162.地母神 スカディ



 ……なあ、召喚主よ。ちょっとしたことを小耳に挟んだんだが、聞いてもらってもいいか?

 いや、大した話じゃないんだがな。なんでもこの国の山の神というのは、美しくないという話を聞いたのだよ。

 確かに、そんな話を聞いたことがあるだって?

 じゃあ、やっぱり話は本当なのだな。それ故、お供え物は神よりもさらにみにくいオコゼという魚を供えるとか、お祭りには女性は参加してはいけないとか、そんなことをしているなんて話を聞いたのだ。

 いや、正直、この話には驚いた。崇拝している神を人がみにくいと評価しているのかと。

 「崇拝」とは、もっとあばたもえくぼのごとく崇めたおすものだと私は思っておった。だが、信徒が影で崇拝する神をみにくいと思っている可能性があると考えたら、急にそら恐ろしくなってきてしまったのだ。

 私も国が違うとはいえ一応は山の女神だ。それに、実はバツイチでもある。いろいろあって山の神なのに海の神と一緒になったのだが、風習の違いやすれ違いで別れてしまったのだ。

 しかしこんな話を聞いてしまうと、実は自分もみにくいから離縁されてしまったのかとか、そんなことで頭がいっぱいになってしまった。

 なあ、召喚主よ。私は美し……いや、こんな前置きをしてから聞いてもさすがに本音は出てこないだろう。では、せめて、今まで率いてきた仲魔の中に美しい山の女神はいたか? いたなら、教えてくれまいか。

 何? インドの地母神パールバティはヒマラヤ山脈の生まれだし、あの女神は奇麗だった? ああ、あの破壊神の妻か。2、3回会ったけど、確かに優しそうで美しい方だったな。

 召喚主よ、ありがとう。たとえ一つでも例外があれば山の神としては報われるというものだ。

 何、あなたも褐色の肌がとても美しいし、実力も備わっているし、とてもすてきな神だと思う?

 お、おい。やめろよ。そういうのは柄じゃないし、変な気を使わなくていいよ。でも、まあ、悪い気分ではないな。ありがとうよ。


作品名:悪魔言詞録 作家名:六色塔