悪魔言詞録
34.夜魔 フォーモリア
おー、なんだおめえさん、ちっちぇえ体でそんなに急いで。どこに行こうってんだよぉ。
あー? ハルミ倉庫への道を教えてくれ? あぁ、教えてやってもいいけどよぉ。その前においらと力比べしていかねぇか。どうせおまえさん、倉庫から地下道を通って、イケブクロへでも行こうって考えているんだろ。あの地下道にいるやつらは手ごわいからな、おいらも倒せねえようじゃ、到底、あそこは抜けられやしないぞぉ。
お、やるかぁ。うん。そうこなくっちゃなぁ。だけどな、おいらだって、ただのやぎ頭の太ったおじさんじゃあないぞ。こう見えても異種族の侵入を拒み続けた、異形で凄腕の巨人さまなんだ。隻腕で隻脚の戦士や、単眼のやべえやつ、手足のない肉塊のようなリーダーがいたりするんだぞう。
おぉ、さすがにこの程度じゃ怖気づかないか。じゃあ、早速、力比べ勝負と行こうじゃないか。ルールは簡単。この東京のハイウェイの成れの果てである、アスファルトの欠片。これをより遠く飛ばした方の勝ちだ。ふふん。おまえの細っちい体で、どこまで飛ばせるかな。じゃあ、まずはおいらの番だ。
「そりゃっ!」
うん。まあまあかな。調子が良ければもうちょい飛ばせたんだがな。さあ、もう結果は目に見えてると思うが、おまえ、やるか? おいおい、持つだけでふらついてるようだが、本当に大丈夫かぁ。
「お? おおお?」
おいっ、おまえっ! 空を飛ぶ仲魔たちに運ばせるなんてずるいぞっ! こんなの無効だ、なしなし。もう一回やるぞっ!
なに? かつて異種族の侵入を拒み続けてきた巨人族なら、チームプレイの大切さはよく分かるだろう? むむう。確かにそうだ。だが、今回は個人プレイ。それとこれとは話が違うぞっ。
じゃあ、個人で闘ってみるか? さっき言ってた単眼のあいつのように、一人の男にしてやられるかもしれないぞ?
……わ、分かった分かった。俺の負けでいいよ。なに、じゃあ仲魔になれ? へいへい、どこまでもついていきますよ。