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悪魔言詞録

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182.破壊神 シヴァ



 破壊と再生。矛盾しているこの二つの要素が人気のひけつなんだ。破壊だけでも再生だけでもだめ。両方を兼ね備えている、これが重要。

 理由の一つは、よく言われるギャップってやつだ。こういうギャップがあると、みんなが一目を置いてくる。俺は三神で一体とされる存在の一柱だが、他の二柱からも認められているしな。

 それに人もギャップがあるとより人に好かれるであろう。それと同じようなものだ。

 そして、つかさどるものが運良く破壊と再生だったというのも非常に大きかった。おまえは破壊と再生と聞いて何を思い浮かべる?

 そう。破壊と再生という形で二つにわけると見えてこないが、一緒くたにすると真実が見えてくる。要するにこの作業は、「リセット」なのだ。

 人は何かをやり直したがるものだ。現状がうまく行っているものなどそうはいない。うまく行っている少数のものだって、より間口の狭い上を目指してしのぎを削っている。

 そのような状況で「リセット」をちらつかせれば、大抵のものは甘い未来を思い描くだろう。今よりも良い状況になるはずだと誰もが信じて疑わない。実際は、どうなるかなんて誰もわかりはしないのだがな。

 だから、俺はある意味で人気取りのために破壊も再生もしない。こうして力は振るっても。


 この世界を創造したとされる神は、今はもう威勢を失って姿を隠している。その理由は明白だ。みな、現状に満足していないのだ。誰もが、あの神が創造した世界に嫌気が差している。どんな神が世界を創造したとしても、誰も不満を持たない完璧な世界などできやしないのに。

 この世界を維持している神は、今も力を持ち続けて世界を維持し続けている。その実力は俺をはるかにしのぐが、先に挙げた理由で人気は俺のほうが上だ。恐らく、おまえの召喚に応じればやつもここに姿を表すだろうな。

 いずれにしても、今はまだ「リセット」を行使する気はない。おまえのコトワリを啓く手伝いくらいはしてやるがな。


作品名:悪魔言詞録 作家名:六色塔