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悪魔言詞録

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145.威霊 アルビオン



 しかし、こっちもなかなか過ごしやすいもんですな。

 さっき、地図を見せてもらったんだけど、大陸を挟んでちょうど私の島の反対側に位置する場所なんですよね、ここは。それだけでも、ちょっと親近感がありますよね。
 住んでいる方は大半が思念体で、ちょっとおかしな方々も多いけど、受胎という狂った状況下にあってもわりとみんな、礼儀正しい。こりゃ、受胎前も相当きちんとしていた島国だったんじゃないかと思いますよ。
 あと、わりと気候が似通っているなあとも思います。ちゃんと四季がある。春夏秋冬をちゃんと肌で感じられるっていうことはいいことですよ。そういうところも私の島と共通していますよね。

 ただ、あえて難を言わせてもらうと、ちょっとだけみんなプライドが高いかな……。思念体はもちろん、この国に住まう悪魔たちも、たまに「他の国の奴らと一緒にされたくねえ」という思いを感じます。まあ、それは私の島の方々も似たようなところがありますし、そういった思いが、何かを魔改造したり、高性能にしたりといった、プラスの方面につながっているんだとすれば、まあ悪くないかなと思いますが。

 ああ、召喚主さん、聞いていたんですか。気を悪くしたのならすみません。別に上から目線でこの島国を批評したかったわけじゃないんです。ただ、こっちの島に来ていろいろと思ったことをまとめていただけでしてね。それ以上の意味はありませんよ。

 ええ。じゃあ、島国同士の友好ということで、休憩のついでにこれでも飲んで一息つこうじゃないかって? なんですか、この緑色の液体は……。お茶? うちの島ではお茶は赤いと相場が決まってるんですが、ちょっと製法が違うのかな。じゃあ、乾杯しましょうか。

「……」

 うん。まずくはないけど、やっぱうちの紅茶のほうが上かなあ。え? そっちもやっぱりプライドが高いんだねえって? うちはメシマズで通ってますから、せめて紅茶ぐらいはこちらの勝ちでお願いしますよ。


作品名:悪魔言詞録 作家名:六色塔