悪魔言詞録
132.堕天使 デカラビア
そういえば、姿を変えたりはしないのか、だと?
地獄の悪魔をあまり見くびらないでもらいたいものだな。容姿なぞ造作もなく変えられる。実際に、呼び出された者から命令されて、人の姿をとったこともあったからな。
だが、現世に存在するという厳然たる事実を前に、外見などなんの意味があるというのだ。おまえもこれまでにたくさんの悪魔を見てきたであろう。みにくいもの、美しいもの、人の姿に近いもの、異形のもの……。そのどれもが、実際に戦うか、もしくは仲魔として使役するかしなければ、その実力は測れなかったであろう。すなわち、いくらでも変化できる私たち悪魔は、外見にあまりこだわりはしないのだよ。
だが、これが人の場合なら、少し話が違ってくるようだな。基本的に人は外見を大きく変えることは難しい。生まれ持った容姿で生きていかなければいけないのだ。みにくく生まれてしまったら、それだけで一生が台無しになる可能性も出てくるわけだ。もちろん、何をもってみにくいとするかは置いておくがな。
さらに、人には老いという問題もつきまとう。限りのある生命しか持たぬ人間は、一般的に加齢により美しさを失ってしまうのだ。
かつて人であり、今は悪魔となったおまえなら、これがいかに馬鹿げているかよくわかるであろう。いささか弁を弄したが、要はそういうことだ。姿を変えるのはたやすいが、変えるには値しないのだよ。
じゃあ、今のヒトデの格好はなんの意味があるのかって?
これは……、まあ、なんというか、そう。形が五芒星っぽくてかっこいいからだ。五芒星といえばペンタグラム、ペンタグラムといえば悪魔じゃないか。だからこの姿なのだ。
でも、それじゃやっぱり姿形にこだわってることになっちゃうし、実は仲良しのフォルネウスが海の怪物だから、自分も海の生物のヒトデの姿でいるんじゃないの、だと……。
おまえ、なかなか弁が立つな。仕方がない、そういうことにしておいてやろう……。