悪魔言詞録
130.地母神 パールバティ
ふう、ようやく生まれ変わることができました。あらためてよろしくお願いします。
はい? 旦那さんをまだ喚び出せなくて申し訳ない? いえいえ。いいんです。遠く離れていても、あの方と私の仲はそう簡単に引き裂かれることはありませんから。
……ところで主さま、何かあったのですか。さっきから少し様子がおかしいようですが。ええ。ちょっと疲れがたまっている? そうですか、では私のほうで回復魔法をかけましょうか。
え? 体力的には問題ないけど、空腹でのども渇いているのですか。なるほど、わかりました。では、ちょっと待っていてくださいね。
「ザシュッ」
……ご覧のとおり、私の首をはねましたから、滴る血をお飲みください。えっ、大丈夫かって? もちろん、私のほうは大丈夫ですよ、なにせ神なのですから。
……あら、遠慮されるんですか。それは残念です。慈愛の神である私の血を飲んだならば、飢渇はもちろん、万病にも効きますし、死に至った者ですらよみがえらせるのに。
それだと、なんだか温泉の効能みたいだ? まあ、地母神ですから当たらずとも遠からずといったところでしょうね。大いなる山脈の神の血を受け継ぎ、性の力を脈々と吸い上げた血ですから。ところで確認しますが、本当に飲まないんですのね? 正直な話、飲んでおいたほうがいいと思いますが。
やっぱり遠慮する? 案外奥ゆかしい方ですのね。ちょっとグロテスクだから? あらあら、これまでたくさんの悪魔たちをこの地で葬ってきたあなたが、この程度でグロテスクだなんて。そんな冗談を言うもんではありませんよ。
それに、この程度で恐れているようでは、私の夫や私が怒った状態のときにともに戦うことはできませんわ。夫はそれこそ破壊の神ですから戦となったら手がつけられませんし、自分で言うのもなんですが、私も怒っているときはそこそこできるんですのよ。
ですから、血は飲まないでいいですが、その際は覚悟をしておいたほうがいいですわね。