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悪魔言詞録

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143.霊鳥 ガルーダ



 神さまを乗せるっていうのはどんな気分なのかって?

 まあ、俺が乗せてる神さまはぐう聖なので楽っちゃ楽ですけどね。あの暴れん坊を乗せてる牛のナンディさんは、ブラック企業並みに苦労してるって聞きますね。反対におとなしくて頭のいいじいさんを乗せてるガチョウのハンサさんなんかは、超ホワイトな待遇みたいっすよ。

 あっ、もしかして召喚主さん。あんたもそろそろ強くなってきたもんだから、仲魔の一人を手なづけて乗りこなそうって魂胆ですか? 見かけによらず野心家っすねえ。でも、そんな簡単に乗り物にするのは正直、ちょっとどうかと思いますよ。

 俺が乗り物になる契約をしたときも大変だったんですから。母ちゃんのために無理やり天界に乗り込んで、デスゲームみたいなエグいトラップを潜り抜けて、どうにか目的のものを盗み去って、そこで始めて「おまえ、なかなかやるじゃねえか」ってあの方に声をかけてもらって、ようやく乗り物になれたんすから。

 まあ、あんときは俺も若干そう状態が入っててイケイケだったんでどうにかなりましたけど、それぐらいやらないと乗り物にさせてくれないくらい敷居が高いんすよ。やっぱり神さまもメンツがありますからね。弱っちいやつが乗り物だと体裁が悪いんですよ。それに、弱いからってあまりコロコロと変えるわけにも行かないでしょう。だからね、他の神が乗ってるから俺も一匹捕まえようか、なんて軽い考えじゃなくてもっと慎重に選ぶべきだと思うんすよ。

 それに、乗せる側の都合ってのもありますからね。俺はすでに先約がいるから無理ですし、四聖獣やケルベロスさん、バロンさんあたりは本来の業務があるから多分契約には応じてくれないでしょうし。そうやって考えていくと、該当しそうな仲魔はそれほどいないと思いますよ。

 え? 雑談でちょっと聞いただけだから、誰かを乗り物にする気なんかない?

 ほんとですかあ? あやしいなあ。まあ、そういうことにしておきますか。


作品名:悪魔言詞録 作家名:六色塔