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 政にも、この後宮にも、複雑に絡まり合い、一目見ただけでは分からない力が隠されている。隠された謀や、秘められた殺意があるのよ。この芷蘿宮にも、どこかの間者がいるはずだわ。私にも誰かは分からない。」
「、、、!!!。」
「陛下に遠ざけられ、都を離れれば、あなたに視線は向かないわ。辺境で、頭と心を冷やすのよ。冷静になれない今、動いても無駄死にになるだけよ。
 景琰、何故その事が分からないの?。」
 そこまで言われて、靖王の目に涙が浮かぶ。
「母上、、何もしないで、黙っていろと?。」
「そうよ、、祁王の志を知る者は、あなたしか居ないの。耐えなさい。耐えて生き延びる事が、今、あなたの出来る事なのよ。きっといつか、真実を明るみに出来る日が来るかもしれない。十年後か、二十年後か、、、或いはあなたの死後かもしれない。
 あなたの真意を隠して生きるのよ。」
「、、、、。」
 何とか取り乱さぬ様にと、ずっと堪えて皇宮に来たのに。母親は分かってくれると思っていたが、叱られて、やり切れない思いだけが溢れ出した。
「あなたが、どれだけ耐えて来たのかは分かる。痛々しい、、代われるものなら、私の心と代って上げたい」
 そう言うと、靖王の手を取り、くっきりと青黒く残る、両手首の枷の痕を、そっと掌で包み込んだ。
 母の掌の熱が、靖王の、凍えた骨の芯に届いていく。
━━苦しいのは、私だけでは無かったのだ。母もまた、姉と慕っていた宸妃と、懇意の林家を失った。母の悲しみとて、私と変わらぬ。
 熱を出し、寝込んで当たり前だ。
 常に冷静な母。母とて、義と縁を人一倍大切にする。その母が、これ程、私を止めるのは、私には見えぬ何かが、この梁の宮廷には有るのだろう。━━
「、、母上、、。」
「景琰、、体を厭(いと)うのよ。心と体を健やかに過ごしなさい。」
「はい、、母上、、ご心配なく。どうぞ安心して療養を、、。」
 静嬪は弱々しく微笑む。靖王の心の痛みが手に取るように分かるからだ。息子は納得をしたくなかった筈だと。
 無理矢理にでも、『云』と言わせねば、きっと無鉄砲に進んで、死んでしまうと思った。云とさえ言わせれば
、孝行な息子は、きっと無茶はしないだろう。
 これ程強く言い含めたのは、初めてだった。静嬪は何時でも息子の味方で、全て肯定してきたのだ。だが、今回だけは譲れない。息子を犬死にさせてはならないと、心に固く決めていた。

 靖王は、静嬪を寝かせ、『必ず元気に戻る』と微笑んで約束をし、母親の寝室を出た。
 寝室を出ると、宫女たちがまだ跪いていた。
━━母は、私との会話を、宫女に聞かせぬ為に、私から罰を受けるようにと、ここに貼り付けたのだ。
 母上も戦っていたのだ。━━
「楽にせよ。
 私は行くが、母を頼む。」
 宫女達は、立ち上がらずに平伏して、靖王を送った。




 芷蘿宮を出た頃には、とっぷりと日が暮れ、辺りは暗くなっていた。
 明日出征するのだ。王府の準備は終わっているのか、気になって、後宮を後にする足は自然に早くなる。


 世話しの無い一日で、後宮から出る途中で、兄誉王と出会った。
 偶然、居合わせたのでは無く、誉王は靖王を待ち伏せていた様だった。
 誉王が口を開く。
「景琰!、こんなに痩せて!!、、酷い目に遭ったな。
 まさか祁王兄上が、、な、。」
 あまり誉王の事は信頼していないが、誉王の一言に、反応せざる得なかった。
「違う!、祁王兄上が逆心など起こすものか!。祁王をちゃんと見ていれば分かるだろう?!。」
「そうだ、、祁王が逆心など、、あろう訳が無い。私もそう思っているのだ。私も何とか助命を願うつもりだったが、、父上の怒りが尋常では無く、、。
 父上と祁王の間に、一体何があったのだ、、。
 しかし、驚いたぞ。景琰が朝堂で嘆願しようとは。
 辛かっただろう?。心に思うこともあるだろう?。今夜、誉王府に来るといい。珍しい酒があるのだ。話を聞こう。話したい事は沢山あるだろう?。さぁ。」
「?。」
 誉王が、嫌に親切なのが、靖王には気にかかる。
「あはははは、、。景琰を利用する気か?、景桓。」
 笑い声がして、どこからが、献王が現れる。
「何を言うのだ。私は弟の身を案じているのだ。兄上こそ何なのだ。」
「景桓と景琰がつるんで、徒党をくんでいると、父上に言いつけてやるぞ。あはははは、、、。」
「景宣なぞ、構うな景琰。浮かれているのだ。さぁ行こう。」
 献王に構わず、誉王は靖王を連れていこうとする。
 だが靖王は、誉王の一言が聞き捨てならない。
「浮かれている?!。実の兄が死んだというのに、何故?。あまりに酷いではありませんか!!。」
 献王はふてぶてしい態度で、靖王と誉王に言う。
「負け犬が二人、何を言っても気にならんぞ。私は心が広いのだ。まさに君子の器と、太師が言っていた。ま、景琰は負け犬の数に入っちゃいないがな。」
「誰が太師だと?、祁王の師は、この度の件でお亡くなりでは?。どこかで存命で?。まさか生きていて、景宣の師になったとでも?。」
 これは更に聞き捨てならないと思った。献王の母、越貴妃は自分で息子だけの師匠をわざわざ求め、付けたのだ。
 献王の師は、太師として、国から認められた者でも無い。名利を求める輩で、品位なども太師の器ではとても無かった。
「父上は、この私を皇太子にと、お考えだ。」
 献王の一言に、誉王の眉が吊り上がる。
「何を言っている!、白々しい!。寵愛を盾に、景宣と越貴妃が父上に、強請(ねだ)ったのだろう!!。そんな事を朝廷が認めるか!。」
「景桓こそ、何を言っている。順番からして私だろう?。それともお前が相応しいとでも?。皇后に育てられたとは言え、お前だってたかが庶子では無いか?。」
「こんな大切な事は、順番や生母が願って決められる事では無い。朝堂で討議し、朝臣の支持を以て、決定されねばならぬ。『父上が決めた』と、景宣が言っているだけで、不確かな事を、認めろと?。、、はっ?、、。」
 二人の兄は、鼻息が荒い。
「景宣に皇太子など務まるか!。景琰、対抗策を立てねば。だから我が王府に行こうではないか。
 景琰、私が、父上に頼んで、出征日を延ばしてやる。上手くいけば、金陵に残れるやもしれぬぞ。
 私はお前の善処に、労は惜しまぬ。、、な、行こう。」
 誉王が靖王をこの場から連れ出そうと、靖王の腕を取った。
「あははははは。景桓!、そもそも皇太子狙いはお前だろう。
 景琰、騙されるな!、寒牢の景禹に、毒酒を届けたのは、景桓なのだぞ!。」
 靖王は、頭を何かで殴られたように、目眩を起こした。
「何を言う!、景宣!。私は父上に命じられ、仕方なく。、、、本当だ、景琰、信じてくれ。父上に命じられて、刃向かえるか?。私まで巻き添えを食ってしまう。分かるだろう?。」
 縋(すが)る誉王の手を払う。誉王はよろめいて倒れた。
「私に触れるな!。」
━━穢らわしい。この者達と、同じ血が流れているのかと思うと、反吐が出る。━━
 二人を交互に睨みつけた。
 見たことも無い様な、弟の怒気に、『これがあの景琰か?』と、兄二人は震え上がっている。
━━一時も早く、この場を去りたい。皇宮なぞうんざりだ。━━
作品名:再見 参 作家名:古槍ノ標