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「そうね、そうだわ。都の怪童が居てこそ面白いのだわ。」
 靖王は少し躊躇したが、かの件を霓凰には話すことにした。
「話は変わるが、、景宣が、皇太子に冊封されるそうだ。」
「!!!、、なんですって、献王?。、、、、お先真っ暗だわ。好色な献王が皇太子だなんて。何を考えてるの?、陛下は、、。
 ああそうだわ、、、、越貴妃、、ね、、越貴妃が強請(ねだ)ったのだわ。」
 霓凰は驚き、落胆したが、同時に納得もした。そして国の行く末を案じた。霓凰は、政を語れる、数少ない女子の一人だった。
「もう都なぞに未練も無いが、、、。」
「心懸かりは静嬪ね。私は、折に触れ、太皇太后に会いに行くから、様子を見ておくわ。」
 霓凰は靖王の心を察した。
「母は『皇宮の火の粉など訳はないから、案ずるな』と言っているが。霓凰が気に掛けてくれるならば、心強い。」

 霓凰は立ち上がり、大きく伸びをした。
「さて、、私は、殿下が来る前に、林殊哥哥に文句を言ったから、、、帰るわ。」
「私は、もう少しここに居よう。」
「そう?。ならば先に失礼するわ。」
「ん。」
 霓凰は、靖王に拱手して礼をした。靖王は座ったままで拱手を返す。


 霓凰は、少し何かを迷ったが、口を開いた。
「、、、靖王殿下、、。」
「何だ?。」
「、、もし、、もし、林殊哥哥から知らせが来たら、すぐに私に知らせてね。林殊哥哥が真っ先に知らせるとしたら、きっと靖王殿下だわ。」
「分かった。必ず知らせる。」

 靖王も迷ったが、霓凰に気持ちを伝えねばと思った。
「霓凰、、。」
「何?。」
「いや、、、感謝する。戦英に聞いた。」
「ふふふ。立ち直って何よりだわ。」
「朱弓は、林府に返そうと思っていたが、、この様な事になり、返す先を失った。
 私は今後、いつ都に戻れるか、、。
 朱弓は君に届けよう。君が持っていた方が良い。」
「いいえ、靖王が持っていて。私が持っていたら、また父上に、、、簪みたいに、、、。
 林殊哥哥から貰った簪はね、同じ職人を探し当てて、やっと元通りになったのよ。店主は、真夜中に買いに来た林殊哥哥の事を、よく覚えていたわ。
 林殊哥哥が戻るまで、もう挿さないわ。また父上に潰されちゃう。
 朱弓まで折られちゃったら、どうやって直したらいいか分からないわ。」
「そうか、、ふふ。」
━━強いな、霓凰は。
 明るく気丈に振舞っているが、どれほど心傷付き、泣いた事だろうか、、、。
 人を思いやり、慈愛に満ち。
 私もしっかりせねば。逃げてばかりいては駄目だ。ちゃんと正視して、向き合わねば。━━
「何?、私の顔に何か付いてる?。」
 つい、凛とした霓凰の顔に、見入ってしまっていた。返答に困った。
「あ、、いや、、、。戦英が、君の事を、『母親や姉の様だ』と、、。」
「戦英?!!。失礼ね!!。私は戦英よりずっと年下なのよ。靖王府の教育はどうなっているの!!。
 ちょっと!、主なら、ちゃんと戦英を罰しなさいよ!!。」
「分かった、分かった、ちゃんと罰しておく。」
「陰で言っても駄目よ!。」
 笑いを噛み殺して、右手を上げて、真顔で答える靖王。
「好、もう言わせぬ。」

「もう戦英ったら、今度、会ったら酷いわよ!。
 では、今度こそ行くわ。殿下、お元気で。」
「ああ、霓凰も。」
 霓凰はふわりと飛び上がり、塀を越えていった。
~~靖王殿下、、、体は痩せてしまって痛々しいけど、思ったより元気そうで、良かったわ。私をからかうだけのゆとりが、心に出来たのだわ。
 でも、靖王の前途は厳しい、、、。前途どころか、この先々、危険なことがあっても、誰にも顧みられない。命の危険すらあるのだわ。厳しい道よ。
 これからどれ程、林殊哥哥が靖王の心の拠り所になるか。
 林殊哥哥、、、、。
 早く、、少しでも早く、知らせをよこして。~~






 霓凰が去った後も、靖王は林殊の部屋の前に座り、これからの事を考えていた。



━━しっかり、、しっかりと生きていかねば、、。
 、、、、小殊の為にも、。
 小殊が戻った時、小殊が逃げ回らずとも良いように、、。
 真相を調べなくては。
 梅嶺は雪に埋もれ、証拠は消えてしまったかもしれぬが。
 謀った者とて人間。必ず綻びはある。━━






━━母は、私を救う為に、寒空に養居殿の前で跪き、、熱を出すほどの無理をなさった。
 、、、、私の為に、、。
 だが私は、母上がそんな目に遭っても、白だと知っていて、黒いとは言えない。
 母上の言う通りです。
 私が金陵に居たとして、事ある毎に、祁王と赤焔軍を持ち出したでしょう。私の気性は、私にも曲げられぬ。
 、、母上、、愚かな子ですみません。━━







━━小殊は根っから明るくて、苦労や苦痛があったなぞ、周囲の者には微塵も感じさせない。
 『あの快活さは、生まれ持った物なのだろう、名門の生まれ、武功著しく将来も有望、悩み事など何も無いのだ』と、皆、言っていた。
 決して小殊に、全く苦労が無かった訳では無い。悩みも多かったし、葛藤もあった。
 私が幾らかの助言はしても、最後はいつも、一人で悩み苦しんで、『前を向いて進む』という答えを出した。



 私も前を向いて進んだならば、きっと小殊に会える気がするのだ。
 無理にでも立ち上がり、顔を上げて、その一歩を踏み出したならば、どこかで小殊が見ていて、私に微笑んでくれるのではと、、思う。





 私の心の中にはそっくりそのままの小殊がいるのだ。


 そろそろ歩きだせ、と、私を鼓舞する。
 
 泣き虫が、いつまで泣いてる?、と、私を笑う。



 会えぬ時には、いつもこの小殊が、私を叱りに来た。





 私の心を知り尽くし、私を優しく守るのだ。






 _______小殊、、、。━━





 沢山の思いと思考が、靖王の心を巡っていく。







━━今もまだ、小殊は傍に居る。

 小殊は私と霓凰との間に座り、膨れっ面で聞いていた。     
 いい加減にしないと怒る、と。







 お前の中にも、私は居るか?。━━







 林府から去る気になれず、空が薄明るくなる迄、居てしまった。
 だが、もう、さすがに戻らねばならない。






━━小殊、、、私ももう、行かねばならぬ。━━






「小殊、待っているぞ。帰ってくるのだ。
 、、、、早く、、、早く帰って来い、、、。」


 庭の楠に声をかけた。





 靖王もまた、颯爽と林殊の部屋から離れた。
 もう足取りは重くない。

 覚悟は決まった。





 林府の門扉を開けると、戦英が馬を連れて立っていた。
 灼青を外に繋いでおいた。だから、ここに居ると分かったのだろう。
━━戦英に、探させてしまったか。心配をかけた。━━

 戦英は跪づき。
「殿下。殿下の配下は、皆、揃いました。王府で待っております。」
「うむ、行こう。」
 共に戦場を駆けた王府の仲間達も、靖王に見切りをつけ、散り散りになったのかと思ったが、戦英が気を利かせ、家のある者は帰していたのだ。皆、戦英の連絡を待ちわび、駆けつけた。

作品名:再見 参 作家名:古槍ノ標