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その先へ・・・6

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(3)


「ユリウスっ!」
目の前の光景はアレクセイの予想に反していた。
ガリーナは床に倒れ込み、ユリウスは昔の様に金色の髪を逆立てている。
彼女と対峙しているルウィはと言えば、左の頬が先程よりも更に赤く腫れ上がり今にもユリウスに飛びかかりそうな雰囲気だ。

一触即発。

アレクセイは一瞬息をのんだ。


夜の街を駆け抜けている最中も目まぐるしく頭を動かし、ルゥィが起こすだろう行動はおおよそ予想できた。
だがその為に身重のガリーナとユリウスに降りかかる事態を思うと気が気ではなかった。
怯えているのではないか。
泣いているのではないか。
何より、ルウィが言い放つ言葉の刃がユリウスの心を傷つけないか心配だった。
少し遅れるイワンを振り向きもせず、アレクセイは急いだ。
ユリウスのもとへ‥‥!




「大丈夫かっ?!」
アレクセイは倒れこんでいるガリーナの側に走り寄った。
「だっ、大丈夫よ。わたしより‥‥ユリウスを‥‥」
すぐ横には頬を真っ赤にして、拳を握りしめているユリウスの姿。アレクセイが来た事も分かっていない様だった。
「ユリウス!」
腕を掴み引き寄せる。
「落ち着け!ユリウス!」
「離せっ!!」
アレクセイの手を跳ね退けようともがくユリウスを懸命に引き止める。
反撃をしようと機会を伺っていたルウィだったが、アレクセイの登場に分が悪いと思ったのだろう。口の端から流れるわずかな血を袖口でぐいと拭い部屋から出て行った。
「待て!この……!!」
「ユリウスッ!!いいから!」
追いかけようとするユリウスを抱き留めた。その時初めてアレクセイが目の前にいる事に気が付いた様だった。
「ア‥‥アレクセイ……」
「おい、おまえは大丈夫かっ?!
「アレクセイ‥‥」
「ったく……おまえってやつは……」
「……アレク‥‥!」
ようやく安心したのか少し表情が柔らかくなり、瞳にはみるみる涙が浮かんだ。
「大丈夫か?」
アレクセイの言葉を合図に次々と涙は溢れ頬をつたう。そっと指で拭ってやると、先程迄の勢いとはうって変わってガタガタと震えだした。
アレクセイはしっかりと彼女を抱きしめ、背中を撫でてやった。
もう大丈夫だ……と。
もう誰にもおまえを傷つけさせない……!
ルゥィにも。
そしておれ自身にも……と。
徐々に腕の力が強くなっていくのが自分でも分かった。柔らかで、しなやかなユリウスの体がアレクセイの腕の中でしなる。
「……ったく、無茶しやがって」
ユリウスの両手もアレクセイの背に周り、震えながら縋りついた。
「アレクセイ!アレクセイ!!」
「すまなかった……」
ユリウスの震える声音にアレクセイの声も共鳴していた。

作品名:その先へ・・・6 作家名:chibita