その先へ・・・6
ぐへ……っ!!
すべて言い終えないうちにルウィは呻き声上げ体を二つに折った。
アレクセイが左腕でルウィの腹部にパンチを入れたのだ。
苦悶の表情を浮かべ咳き込んでいるルゥィに、アレクセイは静かに言い放った。
「おい!これ以上おれを怒らせるなよ。おれの事はいくら言ってもかまわん。中央委員会にどうとでも報告すればいい。尋問するというなら、それもかまわん!だがこれだけは言っておく。あいつが……ユリウスが侯爵の愛人などであるはずがない。後にも先にもあいつはおれのオンナだっ!この事実だけは変わらん!そう中央委員会に報告しろっ!」
「……っくっ!」
「イワン、こいつを連れて事務所に行け!事務所にズボフスキーがいるから事情を説明し、ミハイルが憲兵から持ち出した書類をこいつに渡し、夜行でも何でも切符を取ってこいつをモスクワへ追い返せ!」
「はいっ!わかりました!」
まだ咳き込んでいるルゥィを立たせたイワン。もうルゥィの甘言には乗らない、としっかりとした表情を向けてきた。アレクセイもそれに応え頷いて見せた。
「ウグッ……、おっ、おれは中央委員会の総意を受けてここに来ているんだぞ。おれの一言でおまえに対する嫌疑は確信に変わるぞ。ふん!おまえはもうおしまいだ!」
咳き込みながらも顔を歪めて笑うルゥィの胸ぐらをアレクセイはもう一度掴みギリッと締め上げた。
「あんた、わかってないようだな……」
ルゥィは体を突き放され、再び咳き込む。
「左腕だった事を感謝するんだな。あんたがここて彼女たちにした事や、これまでの事を思えば足りない位だが、今すぐにでもペテルスブルグから出てってもらいたいから丁度いいだろう。せいぜい中央委員会におれの事をたれ込めばいいさ。ユリウスの事も言えばいい。あの邸にいた事だけは事実だからな。おれもあいつも逃げも隠れもしない。だがこれだけは肝に命じておけよ!お前がありもしない事であいつを貶めようとすればするだけ、おれはあいつを……ユリウスを命がけで守るだけだ。おまえからも、中央委員会からも、何者からも!その為ならばおれはどうするか分からんぞ。同志だろうが、なんだろうが関係無い!……いいか、おれは本気だぞ!よく覚えておけっ!!」