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再見 四

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 、、、、けど、涙は嫌だ、見られたくない、、。──
 そう思って、靖王の肩に顔を寄せ、声もなく泣いた。
「小殊から『ありがとう』など、、、こそばゆい。ふふ。天変地異の前触れか?。」
「、、、人が折角素直になると、、景琰って奴は、、うぐっ、、。」
 脹(ふく)れてやろうと、体を離そうとするが、靖王が許さなかった。林殊を優しく、だがしっかりと抱きしめた。
──景琰の腕だ、、。──
 生きていた、生きていられた。
 靖王に抱きしめられて、生きている事を実感した。
──景琰もまた私の無事を、心から喜んでいる。
 、、、生きていて良かった。──
 林殊は、助かったものの、食うや食わず、ほとんど眠らずに戦いを続け、疲労困憊していた。抱き締められたまま力尽きて、靖王に運ばれようか、と、そんな事を思うほど、安心とここ数ヶ月の緊張が嘘だったかのような、安心と安らぎとを感じていた。
「、、、景琰、、、。」
「ん?、、何だ?。」
 優しく温かみのある、靖王の声。
「、、、、、ハラ減った、、。」
「ぷっ、、、、馬鹿。」
 靖王は、林殊を抱き締める腕を解き、体を離して、優しい目で林殊を見つめる。
「体がはち切れる程食わせてやる。泣いて乞うても許さぬぞ。」
「ンッ、、、アッ、、、。」
 そして、靖王に唇を奪われる。 
 
──景琰のバカー。
 皆、見てるのになんて大胆な。いつもの景琰じゃないみたいだ、、、。
 しかも本気の接吻、、、、。
 景琰の接吻は、激しい嵐の様に、快感が私の身体を翻弄して、立っていられない程になる、、、、。
 、、、、でも、、心地が良い。──
 靖王を、抗わずに受け入れた。
 生死を分つ激戦で、生き残ることが出来たら、人にどう見られようと、人になんと言われようと、全てがどうでもいい事に思えた。
 自分の立場も、靖王の立場も、全てどうでも良くなっていた。
 靖王の腕の中に守られ、こうして靖王を受け入れる事が、至極当然だと思ったのだ。
──私も景琰も、互いに無くてはならぬ者なのだ。共に居ねば生きてはいられぬ。
 周知の事実だ。
 この身も心も、私は景琰に全てを捧げられる。──

 名残惜しく、合わされた唇が離れ、林殊から熱い吐息が漏れた。
「、、ハア─ッ、、、お前って、、なんて大胆なの、、。怪童のこの私でも、時々、景琰に度肝を抜かれて、冷や汗が出る、、。」
「これ程、小殊が愛おしいのに、誰に何を遠慮する?。片時も離れていたくない。この先、ずっと共に、私といるのだ。
 そうだな、、婚姻したら、ずっと一緒にいられる。」
 堅物の靖王がこんな事を口にするとは、林殊は呆気にとられた。
「さすがにそれは許されないだろ。」
「誰に許してもらうというのだ?。私と小殊さえ良ければ、それで良いじゃないか。」
「、、、、本気で言ってんのか?。」
「冗談だ。」
 靖王は、にっと笑うと、また林殊に口付けをする。
「ア。」
 重ねられた唇は、いつまでも離れずに。
 林殊の身体には、もう力が入らなかった。
 靖王に支えられ、何とか辛うじて立っている。
──、、景琰が、、、。
 、、、、景琰が冗談言った、、、。──
 らしくない冗談だったが、こんな靖王も嫌いではない。
 いつもの靖王は、林殊に、引きずられて動いている感じが、多かったが、本来、寡黙でも、しっかり芯があり、正しい判断をする。時には林殊が、怒られる事もある。
──誰よりも強くて優しい、景琰が好きだ。──
 本気で靖王に怒られた時は、それはそれは酷く恐ろしい思いをしたのだが。
 靖王に怒られるのも、嫌ではなかった。、、震え上がる程、恐ろしいが。
 流石の林殊でも、迷い決めかね、決断出来ぬ時もある。迷った時、尽かさず正しい道を照らしてくれる。
──ずっと、、ずっとこうしていたい。
 景琰とこのまま、どこかへ行ってしまおうか。──
 難を逃れた思いが、林殊と靖王の、世間体という箍(たが)を外したのか。
 唇から、林殊を抱く腕(かいな)から、甲冑を素通しして、注がれる温かみに、身も心も狂おしくなりなから、満ち足りていて、世の誰よりも、二人は幸せを感じていた。


 そこに水を差す者が、、、、。
「こら!、景琰!。嬉しいのは分かるが、、目のやり場に困る。場所を考えよ。皆、見ているのだぞ。」
 祁王に言われ、唇が離れる二人。
「あ、、、。」
──祁王殿下、、。
 ですよね、、。
 やりすぎましたよね、私達は。──
 靖王の兄、祁王が叱るが、格別怒っている訳でもなさそうで、些か呆れている様にも見えた。
「、、兄上、何か問題でも?。」
「、、、ハ?、、、景琰?。」
──景琰が祁王に言い返した!!。祁王を神の如く崇める、あの景琰が!!。
 、、、、あ、これは私の、、。──
 そう思って、自分と居たい為なのだと思い返す林殊。
 靖王が言うと、冗談なのか本気なのか、良く分からない。
「全く、お前達ときたら。」
 祁王が笑っている。


「ドコカデヤレー」
「ミセツケルナバカヤロー」
「ウマニケラレロー」
「イチャツイテンジャネー」


 方々から声が上がる。
 夏江と謝玉の軍の攻撃から、逃れた者達も、呆れたように二人を野次っていた。
「あはははは、、悔しいか?。」
 林殊が靖王に支えられながら、赤焔軍の兵達に言った。

「ナンダトー」
「バカヤロー」
「アトデオボエテロー」
「ゲイオートモーシガナクゾ──!」

 やいのやいのと大騒ぎになったが、いつの間にか笑いも起こり、和やかな空気に包まれた。

「帰ろう!、金陵に!!。諸君の家族が待っているぞ。」
 祁王が梅嶺の山々に響く、澄んだ声を上げた。

「オオー!!」
「カエロウ!!」
「オワッタンダ!!」
「カエレルゾ──」
「ツマヤコニアエル!」

 皆、大喜びだった。
 祁王は、右の拳を高々と上げて、兵士達に応えている。
 声は更に大きくなった。

「キオウデンカ──!!」
「キオウデンカ────!!」



──あぁ、、終わったんだ、、、。
 辛い戦いだった、、。
 、、、皆で戻れる。
 勝利したものの、、こんな凱旋は、気持ちが複雑だ。

 だが、この度は、景琰も一緒だ。──

 そう思って、靖王の顔を見ると、靖王も同じ事を思っていたのか、穏やかに微笑んでいた。

「漸く、ここを離れられるのだな。」
 林殊がぽつりと言った。
 『自分の為すべき事』と、これ迄、幾度も出征していて、戦さを辛いと、思った事は無かった。戦さが、これ程辛くて苦しいと思った事は、今回が初めてだった。
 何より、仲間が死んでしまうのは耐え難い。これ程、仲間を失った戦さも、経験がない。
 林殊を支える靖王にも、その心の痛みが伝わったのか、靖王の腕に力が籠る。
 『小殊を守りたい』そう、心から思ったのだ。

 林殊は心が溶かされていくのを感じ、靖王に身体を預ける。
 靖王の腕に包まれた。 




  ヒョォォォォ


 どこからともなく、風切り音が響き。

「、、ハウッ、、、。」

 祁王の胸には黒々とした、太い矢が突き刺さっていた。
「兄上!!。」
「祁王?!!。」
 祁王は前のめりに倒れるが、側にいた林燮が祁王を支えた。
作品名:再見 四 作家名:古槍ノ標