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長き戦いの果てに…(改訂版)【5】

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「それと俺と、何の関係があるって言うんだ、兄さんの言う事はさっぱり分からない」
話がまた混乱するのを避けようとローデリヒが口を挟んだ。
「あなたがあの青年──ヨハンに何をしようとしていたのかは、今更聞かなくても分かっています。そんなことより彼が発作を起こした時に何があったのか、簡潔に説明していただけませんか?この人とどういう係わりがあるのかもです」
話の腰を折られたというのに、ギルベルトは珍しく気に掛ける様子もない。
いつもなら、ふくれっ面で文句を言いだすところなのに、何に夢中になっているのか紅い瞳が爛々と輝いている。
「まあそう慌てるな、物事には順序ってものがある。お前もあの時、何があったのか知りたいといってたろう?あいつが発作を起こした時にな」
「ああ」
ルートヴィッヒがむっつりした顔でうなずく。ローデリヒも今度は何も言わず、ギルベルトの言葉を拝聴することにした。
「いいか、ここからが大事なところなんだ」
ギルベルトが身を乗り出した。
「あの時、俺はあいつに聞いたんだよ『もうそんなになってんのに何が嫌なんだ』ってな。普通ならあんな中途半端な状態で我慢できるはずがない。ほとんどのやつは耐えられずに俺の言いなりになる」
「兄さん──」
「黙って聞けよ、大事なところだ」
「いや、しかし……ううむ……分かった」
ルートヴィッヒはあきらかに落ち着きを失い始めたが、ギルベルトは全く気にかけず、話を続けた。
「俺はてっきり、あの坊やがお前に操立てしようとして抵抗してるんだと思ってた。どう見たってお前に惚れてるとしか見えなかったからな。だからそんなことをしても無駄だと言ってやったのさ、お前にはもう坊ちゃんがいる、坊ちゃんもお前と同じ『国』だからお前には分が悪すぎる、諦めろと」
「な……っ、そんなことを──」
「ここまで言えば普通のやつならもう諦めるところさ……そして後は俺の言いなりって訳だ。もちろん、ご褒美としてちゃんとイイ思いをさせてやるさ」
ギルベルトは喉の奥でクックッと小さく笑った。口元には歪な笑みを浮かべて。
「だがやつはそれでもうんと言わなかった、驚くぐらい強情なやつだ。だから少し脅してやったよ」
「脅した…だと?何をしたんだ!」
ルートヴィッヒの顔色が変わった。
「お前だってもう分かってるだろう?元々お前の事を聞き出すために、あいつを呼んだんだ。他はそのついでに起こったことに過ぎない。まあ飴と鞭ってやつだな」
「何てことを……」
「そもそもお前があんな騒ぎを起こさなければ、そんな必要も無かったんだがな」
返す言葉も無くルートヴィッヒは唇を噛んだ。
「お前が朝っぱらから騒ぎを起こした後、俺はすぐに軍に向かったんだ。最近のお前の様子に変わったところがなかったか調べるためにな」
ルートヴィッヒが拳を固く握り締めるのを見たローデリヒは、落ち着かせようと彼の腕にそっと自分の手を添えた。
「もちろん大っぴらに聴きまわるなんてまずいマネはやっちゃいねえから安心しろ。気まぐれに視察に行ったフリさ」
腕に触れる温もりを感じ、ルートヴィッヒはローデリヒを見た。紫の瞳が無言で語りかけるのを見ると、少し気持ちが落ち着いた。
ギルベルトもふたりにちらりと目をくれたが何も言わなかった。
「お前が前線で重傷を負った例の一件についても色々確認させてもらったぜ。俺には報告されていないことがかなりあったようだな」
「兄さん、それは──」
ルートヴィッヒは口を開きかけたが、ギルベルトは無視した。
「あの時──お前が前線で負傷した時だ──あそこで実際に何があったのか、その後はどうしていたのか、はっきりしない事が多すぎる。その間ずっとお前の側にいたのはヨハンだけだ。お前は他の奴らを誰も近づけなかった。お前たちが二人だけで何をやっていたのか誰も知らない。お前は病室に閉じこもって出てこなかったし、ヨハンも口が堅かった。誰に何を聞かれても通り一遍のこと以上は一言も答えなかった。お前が口止めしたんだろう」
 ギルベルトは弟に向かって人差し指を突き付けた。
「そしてあの朝、お前の様子が急におかしくなったのも、ヨハンの名を出した時だ。俺はあの後、何があったのか坊ちゃんから聞き出そうとしたが、結果は同じだった。あんな目に遭わされたのに一言もしゃべらなかった」
ローデリヒはルートヴィッヒに寄り添って黙ってギルベルトを見ていたが、今までルートヴィッヒに向かっていた矛先が突然そちらに向いた。
「なあ坊ちゃん、お前もこいつに口止めされたんだろう?ヨハンのやつといい、お前と言い、実に義理堅いよなあ。それとも愛してる──ってやつか?」
ギルベルトはローデリヒを睨み付けた。
「──プレイだと?ふざけんな!」
ローデリヒは何も反論せず、黙ってギルベルトを見つめ返した。
「お前も言わないんなら後はヤツに聞くしかないだろう、だからヨハンを呼びだした」
「兄さん!それは……隠すつもりじゃなかったんだ、俺は──」
何から話せばいいのか、どう説明するべきか、ルートヴィッヒは逡巡しながら重い口を開いた。
「あの時……俺は自分の始末くらい自分で出来ると思ったんだ。だが結局はその考えが仇になった」
「ああ、その通りだ」
ギルベルトは情け容赦なく決めつけた。
「ヨハンのやつは結局、脅してもすかしても白状しようとしなかった。若いのに中々しっかりしてるじゃないか。せっかくだから少し痛めつけてやっても良かったんだが」
「まさか──」
ルートヴィッヒの顔色が変わった。
「心配すんな。痛めつけるんならわざわざこんなところへ連れてくる必要はねぇ、基地でとっくにやってるさ。それにお前も見たろう、あいつの身体にはそんな傷なんかひとつもつけちゃいないぜ」
ルートヴィッヒはギルベルトに組み敷かれていたヨハンの裸身を思い出した。
確かに身体にいくつもの赤いあざが付いていたが、あれは暴力の痕ではない──また顔を赤くする弟を見てギルベルトがにやりと笑う。
「……思い出したか?俺はあいつのことが気に入ったからな、もう少し穏便な方法で口を割らせようと思ったんだ」
「それがあの騒ぎの発端ですか」
ローデリヒがやや不快そうに眉をひそめる。
「余計な口をだすんじゃねぇよ坊ちゃん、何も知らないくせに」
「ではあなたは何を知っているというのですか」
「……お前の知らない事を、な」
ギルベルトの真紅の瞳はもう笑っていなかった。
「この先はきっとお前の方が詳しいと思うんだがな、ヴェスト」
ギルベルトは弟の青い瞳を覗き込んだ。
「俺はお前がおかしくなっちまったことをあいつに話した。だからどうしても、あの時何があったのか知る必要がある、とな。ヨハンの様子が急におかしくなっちまったのはその直後だ。金切り声を上げて全部自分のせいだと叫び始めた。何があったのか聞き出そうとしたが、もうまともな話は一つもできなかったよ。その時あいつが何て言ったと思う?」
「……」
「「俺があんな事を言わなければ、隊長はあんな風にはならなかった、みんな死ななくて済んだ!」だとさ。それを繰り返すばかりでな、そのまま気を失った。なあヴェスト、あれはどういう意味だ?お前には分かってるんだろう、あいつは何を言ったんだ。お前はあいつに……何を背負わせた?」