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みとなんこ@紺
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桜の木の下で

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「遊戯、ちょっとこっち来いよ」
何処かから呼ばれて、遊戯は振り返った。
だが、さっき声を掛けてきた筈の相手は振り返っても何処にもいない。
「何ー?…城之内くん、何処ー?」
「こっち、上だ」
すぐそばから声はした。
・・・上?
「わ、」
「へへー、良い眺めだぜ。上がってこねぇ?」
「何処から登ったの?」
「裏っ側によ、丁度良い足がかりがあったからな」
ほらほら、と急かされるままに裏側に回る。確かに、丁度良さそうな形にはなっているが・・・。手をかけようとして、しばし幹と睨めっこ。
『…どうしたんだ?相棒』
「・・・ボク木登りってした事ないんだけど・・・」
「大丈夫だぜ、ちょっと上がってきたら引っ張ってやるよ。ほら、まず右足その出っ張ってる所にかけて・・・」
突然の木登り講習会だ。
元々あまりこういったことが得意でない遊戯は、城之内の指示通り、えっちらおっちらと危なっかしい手取り足取りでようやく半分くらいまでよじ登った。あとは、手を伸ばした城之内が引っ張り上げてくれる。
「ほい、とーちゃく」
お疲れさん。
「うう、緊張したぁ・・・」
ぽんぽん、と宥められるように背を叩かれて、遊戯はなるべく下を見ないようにしながら、幹か横に伸びる太い枝の一本に腰を下ろした。
樹齢百年は余裕で越える(かもしれない)桜は、二人分の人間の体重を支えてビクともしない。枝の付け根にいるので、たわむ事もない枝にほっと息を付くと、遊戯はあっち、と城之内が指で示した方に顔を向けた。
「わ、あ」
『・・・すごいな』
それ以上の言葉はすぐには出てこなかった。

桜に縁取られた視界に臨む、童実野町の景色。
先程よりほんの少し高い所に視線が上がっただけなのに、景色が一変したように思えた。
「なかなかだろ」
「うん、すっごいキレイだねー!」
「この辺の高台に配達にくることがあってよ、道路っからの景色がすっごい良かったんだ。・・・しかしこの辺も転がしてたのに、こんな所全然気付かなかったぜ」
「道からじゃわかんないよね、遠くは見るかもしれないけど、足下とかあんまり見ないんじゃないかな」
「あー、確かにな」
うん、と頷いて。こほんと一つ咳払いすると城之内はこっそり、遊戯に耳打ち体勢。
「もう一人の遊戯もちゃんと楽しんでっか?」

「・・・何だ。そんな事聞く為にわざわざここまで上がったのかい、城之内くん」

振り返ったのは、ウワサのもう一人の遊戯の方だった。
至近距離で、いきなりがらりと変わった気配にも城之内は慣れたもので、すぐにおう、ちょっと気になってなと返す。
何だか妙にマジメな顔だ。
それが余計におかしくなって、もう一人の遊戯は片膝を立てて抱え直すと、小さく笑った。
「心配しなくても目一杯楽しんでるぜ。オレも、相棒も」
「ホントか?」
『ホントだよー』
「ああ、本当に。キミこそどうかしたのかい」
「んー・・・なら良いんだけどよ」
結局、城之内はそれ以上言わずに目を伏せた。

作品名:桜の木の下で 作家名:みとなんこ@紺