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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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D.C.IIIwith4.W.D.

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「いや、こんなに大きな学校は日本では指折り数えられるくらいですよ」
「そりゃそうか」
 風見鶏を見慣れていると、これが普通じゃないことを忘れてしまいそうになる。この学園はいろんな意味で特殊なんだったな。
「まあ、ここは日本で言うところの大学に似ているな。世界最大の魔法研究機関を謳っているだけあって、教師として勤めている人含め魔法研究の第一線を担っている」
「魔法研究機関ですか……」
「ま、大雑把にそんな風に思ってくれたらいいよ。そろそろ時間だ、行こうか」
「あっ、はい」
 時計を確認した俺は、皐月へその旨を告げ、グラウンドへ向かった。
 リッカにお願いして、授業の見学をさせてもらうことになっている。魔法を体感してもらうにはちょうどいいことをすることになっているはずだ。



 ところ変わってグラウンド。
 もうすぐ予科2年Aクラスの授業が始まるところだった。
 うん、ちゃんと全員揃っているようで何よりだ。
「さ、授業を始めるわよ。サラ、号令お願い」
「はい」
 内容はグニルックの練習。年明けにクイーンズカップがあるということで、リッカが直々に内容を決めていたのだった。
 ……おそらく自分が出るから練習したいということもあるのだろうけど。
「よろしくお願いします、リッカさん」
「ええ、変に緊張することないように見学していってね、皐月さん。魔法学校での授業なんて、滅多に見られないんだから」
 行儀よくお辞儀をする皐月と、笑顔でそれを受け入れるリッカ。
 二人の為人がそれぞれうかがえる。
「すまんな、突然引き受けてもらって」
「構わないわよ。見物料はちゃんと請求するしね」
「聞いてないぞ!?」
「あら、言ってなかったかしら?」
 この野郎。引き受けてもらった手前、何も言えないのがムカつく。
「……で、何をすればいい」
「貴方の模範演技が見たいわね」
「は?」
「グニルックは得意でしょ?」
「勿論得意だが、それでいいのか?」
 ほっと一息。
 しかしその幻想はすぐに打ち砕かれる。
「ただ、普通のとはいかないわよ」
「やっぱりか」
 期待した俺が馬鹿だったようだ。
 まあ、俺自身はクイーンズカップに進んで出ようとするほどの人間ではないが、得意なのは事実だ。特に、魔術はグニルックと相性がいいからその分もある。
「さ、もうすぐ始まるからユーリは準備しておいてね」
「わかったよ。皐月、悪いが上着を預かっててくれ」
「はい」
 俺は制服の上着を皐月に預け、空間転移の魔術を使ってその魔法陣の中から自分の部屋にある俺専用のロッドを取り出した。
 そのロッドには、俺が魔術を使えるように大小様々な魔法陣を刻んであった。
「当たり前のように魔法を使うんですね……」
「そりゃ魔法使いだからな。正確には魔術師か」
「ところで、グニルックって何ですか?」
「まあ簡単に言えば、対戦形式の的当てゲームみたいなもんだ。このロッドでブリットっていう弾を打ち出して、向こうにあるターゲットパネルを打ち抜いていって、いくつかのフェーズをこなしてより少ない回数でより多くのパネルを打ち抜いた方の勝ち、って感じだ」
「うーん、わかったようなわからないような」
「こういうのは、見てもらった方が早いよ」
 そうこうしているうちに、リッカはクラスの面々へ今日の授業内容を説明し終え、俺に向き直った。
「じゃあユーリ、早速よろしくね」
「はいよ」
 俺はロッドを担ぎ、プレイヤーゾーンへ立った。
「ルールはロングレンジ、ターゲット9、ガードストーンは私の指定した場所。特別に1フェーズだけで許してあげるわ。OKかしら?」
「大丈夫だ。いつでもいいぞ」
 ブリットを所定の位置に置き、リッカの声を待つ。
 ……何か嫌な予感がするけど。
「先に言っておくわ、皐月さん。これは本来のゲームではありえない場面だからね」
「えっ、それはどういう……」
「見ればわかるわ」
 そう言ってリッカは悪戯っぽく笑い。
「L1のA、B、E、F、G、H、K、L、S4のF、Gにビショップ、同じくL1のC、D、I、Jにナイトを」
「おい馬鹿野郎ふざけんな!!」
 俺の叫びは虚しく、リッカの指定した位置にガードストーンが配置される
 ちなみにビショップは細長く背の高いガードストーン。ナイトは幅広で背の低いガードストーンだ。
 すなわち、目の前のビショップで視界を遮られた状態でゴール直前のナイト頭上を通り越してターゲットパネルに当てろということ。
「あの、清隆さん」
「なんですか?」
「グニルックって、こんな競技なんですか?」
「いやぁ、ここまで意地悪なガードストーンの置き方は初めて……いや、普段の競技では絶対に置けない置き方だから」
「そう、ですよね……」
 観衆がどよめく。実際にこんな置き方をするの初めて見るだろう。
 かくいう俺も初めてだよこんなの!
「あ、一つ言い忘れてたわ」
「なんだ、まだ増やす気か?」
「いいえ、ブリットの弾数は1発で落ち落としてね!」
「馬鹿野郎!9枚もあるのに1発で落とせるか!!」
 これも真理。少しでもルールを把握していればわかるはずなんだがなぁ。
「これはどういうことなんでしょう」
「うん。ブリットを一回打つごとに落とせる枚数には限りがあるんです。角にでも当たりさえすれば落とせるんですけど……」
「ああ、なるほど。1発では隣り合ったパネルで最大4枚しか落とせないんですね」
「そういうこと。だから9枚だと、どんなに正確に狙ったとしても隣り合った4、2、2、1の組み合わせで最低でも4発は必要になります」
「それを一発で……?」
「はい、だからリッカさんには何か意図があるはずなんですが」
 清隆と皐月が話している通り。9枚のパネルを落とすには最低4発必要になる。
 となると。
「リッカ、ルール違反だが、ガードストーンへの跳弾は何発まで許してくれる?」
「流石ユーリね。3発までOKよ」
「最低回数か……。了解した」
 俺は改めてコートを見据える。息を整え、足元と空中に魔法陣を展開し、魔力を練り上げ始めた。
「……ああ、なるほど」
「どういうことですか、サラ?」
「姫乃は気づきませんか?なぜユーリさんが跳弾の回数を気にしたのか」
「いえ、さっぱりです」
「まあ見ればわかります。これは魔法使いとして、しっかり見ておく必要があります」
「わ、わかりました」
 ブリットの軌道演算を終了し、魔術式を霧散させる。
「いくぞ」
 そう呟き、大きく深呼吸。その後俺はロッドを大きく振りかぶる。
「――んっ」
 そして勢いよくブリットを打ち出した!
 後は計算した軌道通りにブリッドが進んでくれるのを祈るだけ。
 向かって右斜め上に打ち出されたブリットは、コート端すれすれを進み、ナイトの頭上をかすめるように通過した。そのまま左下の4枚を一気に打ち抜く。反動で跳ね返ったブリットは反対側のナイトの頭上を通過し、大きく弧を描いて俺の元へ戻ってくる。しかしそれは俺の目の前にあるビショップに当たった。
 跳弾1回目。
 ブリットは同じく弧を描き、再びターゲットパネルへ向かっていく。再びナイトの頭上を通過し、今度は右下の2枚を打ち抜いた。
「まさか、ユーリさん……」
「やっぱり……」
作品名:D.C.IIIwith4.W.D. 作家名:無未河 大智/TTjr