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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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D.C.IIIwith4.W.D.

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「正真正銘、ユーリさんの過去を取り戻すことが出来るんですから」
「そうだな。皐月、いいかな。<縁の魔法使い>って言葉をもらっても」
「私なんかの言葉でよければ、是非」
「私はいいセンスしていると思うぞ。<失った魔術師>なんて堅苦しい名前も元会長をよく表しているが、それよりもプラスなニュアンスを含んでいていい」
「うん。私も綺麗な名前だと思うな」
 皐月からもらった言葉と、それをいい方向に受け止めてくれる4人。
 そして、<Relation>の魔法が得意だった母親とその一族。
 皆から背中を押されたような気がして。
 俺はむず痒くも心地良い気分を味わっていた。
「さて、雑談はこれくらいにしておこう。問題はここからだ」
 感傷に浸っている場合ではない。
 俺は咳払いして、改めて周りに目を向けた。
「<Relation>改め、縁の魔法を使うことで皐月とこの世界の縁を切り、向こうの世界と縁を繋ぎ直すことで皐月を元の世界に戻してやることが出来る。しかし皐月は世界の自浄作用によってこちらに連れてこられている以上、戻してやったとしてもまたこちらの世界へ連れ戻されることになるだろう」
「そうならない為にも、世界の存在のバランスの吊り合いを取る必要がある、と?」
「そうだ。つまり、皐月の代わりに向こうに行った誰かさんの代わりに、こちら側で対存在となる存在に挿げ替える必要がある」
「対存在の挿げ替え……。それも縁の魔法で可能なんですか?」
「ああ。対存在も一種の縁だ。切り離して繋ぎ直すことは可能だ」
 けど、一番の問題はここであって。
「ただ、基本的に二つの世界の存在は二人で一対を形成している。表裏一体と言ってもいい」
「では切り離して挿げ替えるなんて不可能なのでは」
「基本的に、と言っただろう」
 巴の疑問を一蹴。
 俺は腕組みしてとある一人を見据えた。
「例えば、俺みたいに何らかの理由があって長い時間を生きている人間とかな。いくら対存在がいると言っても、片方が規格外ではもう片方がそれに追従するのは不可能だ」
 心当たりのある人間が、誰にもわからないようにピクリと体を震わせる。事情を知っている人間を除いてわからない程度に。
「ということは、ユーリさん自身が皐月さんの対存在になるってことですか?」
「それはできん。ちょいと事情があってな。だから今回は別の奴に土下座でもするよ」
 改めてそいつをちらり。
 彼女は目を瞑り、無表情を貫いていた。
「とりあえず、ここからは俺と皐月、そして対存在になってもらうやつの問題だ。巴、シャルル、ここまでありがとう。お前達のフォローのおかげでスムーズに事を進めることが出来た」
「まあ、乗り掛かった舟ですから」
「そうそう。お役に立てたなら何よりです」
 ここまで振り回してしまったにもかかわらず、当然といった風な態度の二人。生徒会時代から世話になっているが、本当に助かっている。
「すまんが、リッカと清隆はもう暫く手伝ってくれ。特にリッカには、世話をかける」
「なんとなくそんな感じはしてたわよ。わかったわ、これも人助けだものね」
「はい。俺も協力できることならなんでも」
「悪いが、頼む」
 こうして俺達は次のステップへ進むこととなる。
 作戦の決行は近い。
 早く皐月を元の世界に送ってやらねば。



     ◆     ◆     ◆



 一週間後のある日。
 次の朔の日が間近に迫った今日。
 俺はリッカが植えた枯れない桜の試作品がある島にいた。そう、半年前にカレンを看取った場所だ。
「私をこんなところに呼び出して、愛の告白でもしようっての?」
 そこにいたのはリッカ・グリーンウッドその人。
 俺はどうしてもと頼み込み、彼女の都合のつく日に合わせて二人きりになれるこの場所に呼び出していた。
「いや、お互いに将来を誓い合った相手がいるのに、いまさらそんなことするかよ」
「知ってるわよ。冗談に決まってるじゃない」
 まあ、そうだろうと思ったよ。
 俺は咳払いをしてリッカに体を向けた。
「前に話したあの件だ。皐月の対存在の件」
「やっぱり。どうせそんなことだろうと思ったわよ」
 前に皆で集まって、皐月を送る手段と対存在についての解説をしたとき。俺が皐月の対存在として挿げ替えようと考えたのは彼女だった。
 俺と同じく、長い時を生きている、この世界からすればイレギュラーな存在。
 新しく対存在として設定するにはもってこいの人間だ。
「それは構わないわよ。あの時、貴方が私を見てその話をしたときから、理解してたし」
「だが、お前に負担をかけることになるかもしれんのだぞ」
「そんなの、いつもの事でしょ。貴方が負っている責任に比べたらどうってことないわ」
「俺の責任、ねぇ……。俺は皐月を向こうの世界へ送り返してやるだけだぞ」
「それが大きな責任だって言っているのよ」
 突然リッカが拳を握り、俺の胸に叩きつける。
 痛くはない。それほど力がこもっているわけではなく、少しはたく程度の力加減だった。
 けど。
「確かに貴方にしか出来ないことよ。カイの魔法も、縁の魔法も、誰にも使えるわけじゃない」
「そうだな」
「けどそれがもどかしいのよ」
 そこにはいつも自信満々の姿を見せる友人はいなくて。
「どうしてこういうときにいつもいつも無力なの、私は!!」
 恐らく、ジルちゃんを喪った時のことを思い出しているのだろうか。
 彼女の声は、段々と涙交じりになっていき。
 やがて大粒の涙をこぼしていた。
「……これは俺の役目だよ。<Relation>の魔法を受け継ぐ者としてのな。だからお前は気にする必要はない」
 俺は思わずリッカに背を向けた。
 リッカの悔し涙なんて見たくない。
 それを見るのは、あいつ一人でいい。
「けどお前が、皐月の為に何かしてやりたいって気持ちはわかってるつもりだ。だから気持ちだけ受け取っておく」
「皐月さんの為ってだけじゃないわよ」
「俺のことは気にする必要ないと言ったが?」
 俺は俺に与えられた役目をこなしているだけだ。
 だから俺には
「分かってるわよ、そんなこと」
 少し落ち着きを取り戻したのか、涙を伴う声は聞こえなくなっていた。
「けど、貴方は自分で抱え込みすぎよ。もうちょっと周りを頼りなさいよ」
「これは俺の罪の意識の表れなんだけどなぁ」
「なによそれ。<最後の贈り物>を使ったことに対する後悔?」
「そんなところだよ」
 やっと笑い声が聞こえた。
 いや、笑うとこかこれ?
「そんなこと、気にする必要ないのに。カレンは気にして付き合ってくれてたの?」
「そういうわけじゃないが」
「だったらそれと同じよ。恋人か友人か。それ以上の違いはないわ」
「大きい違いだと思うけどなぁ」
 けど、その言葉俺には大きすぎて。受け止めきれる自信はなくて。
「まあ、そういうことにしとくよ」
 目をそらして気にしていない風に振舞うので精いっぱいだった。
「まあ、なんだ。話は逸れたが、皐月の件は頼む」
「分かってるわよ」
「あと、頼みついでに一つ」
「何かしら?」
 俺はポケットから筒状に丸めた羊皮紙を取り出した。それをリッカに渡す。
「何よこれ」
作品名:D.C.IIIwith4.W.D. 作家名:無未河 大智/TTjr