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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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D.C.IIIwith4.W.D.

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 言いながら俺の眉間に皺が寄る。
「それは実際に会ってからのお楽しみということで」
「なんじゃそりゃ」
「楽しみは取っておいた方がいいでしょ?」
「気持ちはわかるけど」
 と、ここで予鈴が鳴る。タイムアップが近い。
 ……あれ?
「会長、お昼は食べましたか?」
「……あっ」
 やっぱり、話と仕事に夢中になってしまっていたか。
「いけない、すぐに食べてしまわないと。高村君は?」
「俺は先に済ませてきましたよ」
「ならよかった。それじゃ、来週の土曜日に天枷研究所までお願いね。時間は追って連絡するわ」
「それで、放課後から生徒会のお仕事を手伝えばいいんですね」
「うん。申し訳ないんだけど、お願いね」
「任せてください。ちょうど暇してましたし」
 暇だったのは事実だ。それに、少しでも気がまぎれるなら本望だ。
 ……いけない、ちょっと気が緩むとすぐあいつのことを思い出してしまう。駄目だなぁ……。
 俺はその気持ちが悟られないように、すぐに踵を返し。
「じゃあ、また放課後に。あんまり急ぎすぎて、ごはん喉に詰めないでくださいよ」
「わかってます」
 少し怒ったような、でも柔らかい笑みは崩さずに返事をする会長。まったく、器用な人だ。



     ◆     ◆     ◆



 そんなこんなで、次の土曜日。俺は会長から指示を受けた時間に天枷研究所の前にやってきていた。
「……で」
 しかしあまり気分が乗らない。理由は明白だった。
 俯き加減だった顔を少しずつ目の前に向ける。
「なんでお前がいるんだよ大和!」
 そしてその目線の先の人物に思わず叫んでいた。
「なんだ同志よ。俺がここにいると不都合か?」
 辻谷大和。
 こっちに転校してきて初めて出来た悪友。なんか非公式新聞部なんて怪しい組織に所属してるみたいだけど、実際どうなんだろうか。
「いや、どう考えてもお前は今回招かれざる客だろ……」
「実はそういうわけでもないんですよ」
 不意に後ろから声が聞こえる。この話ぶりはもちろん会長だ。
「おはよう、会長」
「おはようございます、高村君。それに辻谷君も」
「おはよう、邑崎嬢」
「で、なんで大和が無関係ではないって話だが」
「ああ。今回いらっしゃる方というのが、実は俺の知り合いでもあってな。天枷博士から、共通の知り合いは多い方が良いだろうと言うことで、俺も呼ばれたのだ」
「で、その連絡が私のところに昨日来たんです。勿論二つ返事OKしました」
「待ってくれ。その時点で俺に一言あってもよかったのでは?」
「ちょっとしたサプライズです」
「うむ。その方が同志にもいい刺激になるだろう?」
「お前らなぁ……」
 大きな溜息一つ。こいつら、揃うとこんなに手強かったっけ……?
「さて、頃合いだな。お邪魔するとしよう」
「そうですね」
 そんな俺をよそに、二人は研究所の門へと向かっていく。辿り着いた途端に、会長はインターホンを鳴らした。
『はい』
「こんにちは。邑崎巴月です」
『天枷から窺っております。御三方揃っておられますでしょうか』
「はい。高村君、辻谷君も一緒です」
『承知しました。それではお入りください』
「ありがとうございます」
 通話が切れると同時に、門が開く。
「さあ、行こうか同志よ」
 なんとも暑苦しいテンション。そんなに嬉しいのか、こいつ。着いていけない……。
 再度溜息を吐き、俺は二人の後を着いていった。



 それから客間に通されて、少し時間が経った。
 俺達が着いた時点で、まだ客とやらは来ていないらしい。こちらが早すぎただけなんだけど。
「しかし、お前らの共通の知り合いとはな」
「私もびっくり。まあ、経緯を聞いて納得したけど」
「俺も同じ感想だ。理事長の顔の広さなら、知り合いでもおかしくはない」
 確かに、大和の言葉には同感だ。
 で、だ。
「大和、お前はどういう関係なんだ」
「まあ俺の素性を考えれば、自ずとわかるだろう」
「お前の素性って……」
 言われても一つしか心当たりが浮かばない。……いや、まさかな。
 ――ガチャリ。
「あら?」
「うん?」
 そんなことを話していると、不意に部屋の扉が開いた。そこにいたのは天枷博士と。
「貴方は……?」
 俺達と同年代くらいの青年が立っていた。えっ、会ってほしい人ってこの人?どう考えても博士や理事長と知り合いとは思えないんだけど。
「遥月、大和。お前達がいるとはな。真ん中の君は、初めまして、かな」
「そうですね。初めまして」
 そう話しながら、青年は俺の目の前に腰掛ける。
「初めまして、俺はユーリ・スタヴフィードだ」
 そして俺の目をまっすぐに見据えながら自己紹介をした。名前からして外国人だろうか。
「あっ、俺は高村敦也と言います。よろしくお願いします」
「よろしく。初対面なのにすまんが、敦也と呼んでもいいかな。昔からファミリーネームで呼ぶのが慣れなくてな。俺もユーリと呼んでくれて構わない」
「大丈夫です」
 外国人特有の文化みたいなものだろうか。まあ、最初に確認してくれたから悪い気はしないし、いいか。
「じゃあ、ユーリ君。後はよろしくね」
「ああ。任された」
 天枷博士は俺達全員の前に紅茶を置き、それだけ言うと去っていった。
 てか、この人あからさまに年上の博士にタメ口を使ったよな……。それに理事長の知り合いだとか。一体どんな人なんだ?
「改めて久しぶり、遥月、大和。遥月は3年くらい前に会ったきりかな?」
「ええ、そうですね。10年ほど前に初めて会った時からお変わりないようで」
「皮肉かな?」
「ふふ、どうでしょう」
「大和は年末の非公式新聞部の集会以来だな。どうだ調子は」
 えっ、非公式新聞部?やっぱりこの人も所属してるの?
「はい。特に変わらずです」
「ま、当たり前か。そういえば、その時話してたあの伝説の話。あれ良かったぞ」
「ホントですか!ありがとうございます!」
 ……おいおいおい。マジで二人の知り合いっぽいなこれ。
 てか、なんだこの人の雰囲気。只者じゃない……。
「おっとすまない敦也、蚊帳の外に出してしまったみたいで。見ての通り彼らは知り合いでな」
「それはまあ、見てればわかります」
 実際入りづらい雰囲気になってたし。ユーリ……さんが気付いてくれて助かった。
「で、博士から話をしてほしいって頼まれたのは敦也の事かな?」
「はい、そうです」
「そもそも俺達が、スタヴフィード殿と昔話をすることはあっても、相談するようなことはないと思いますが」
「それもそうだな」
 そう言って、再度俺を覗き込むユーリさん。なんか、見透かされてる感じがする……。
「……なるほど、部屋に入ったとき感じたアレは気のせいじゃなさそうだな」
 ユーリさんは深呼吸をすると、意外な言葉を口にした。
「君、俺と同じような人生を歩んできたんだな。そういう縁が見える」
「えっ……」
 どういうことだ……?なんでこの人はそう思った……?てかエニシって何の事?
「ただまあ、俺にわかるのは表面的な部分でしかない。出来れば君の口から教えて欲しい。流石に言いにくいことを強制したりはしないけどな」
作品名:D.C.IIIwith4.W.D. 作家名:無未河 大智/TTjr