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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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D.C.IIIwith4.W.D.

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 なんというか、異世界転生物の主人公というのはこういう気分なのだろうか。俺はそんな不思議な感覚を味わっていた
「それで、ここまでが前提なんだが」
 打って変わって柔らかい表情のユーリさん。どうやら話は元に戻るらしい。
「君の言う通り、俺は魔法で長生きをしている。さっき言った通り、俺は300年間ずっと生き続けている。ある目的があってな」
「ある目的……」
「その目的って言うのがだな……。まあ、先に経緯を話すか」
 それからユーリさんは、長い長い話を始めた。
 ロンドンの地下にある魔法を学ぶ為の学園都市。そこで出会った一人の少女との恋の話。そして別れ際にあった出来事。
 どれもファンタジー世界の出来事のような話だった。だがユーリさんが嘘をついている風には見えなくて。
「……てのが、70年くらい前に俺が経験した出来事かな」
 人が一生を終えるかどうかという時間を遡る出来事の話を終え、俺はようやくユーリさんの最初の言葉を理解した。
 俺に似ている。確かにそっくりだった。俺もユーリさんも、恋人を失っている。そしてそれを引きずっている。
 それだけだが、確かに共通点だ。いや、俺の言葉や態度から何かを察して似ていると判断したかもしれない。
「で、その恋人との最期の約束を果たす為に俺は生き続けてるってわけだ」
「その約束って言うのは?」
 一瞬の間の後、ユーリさんは深呼吸して、俺をまっすぐに見据えて言った。
「再会だよ。恋人の来世と、生き続けた俺で再び会うって約束」
 それは途方もない約束だった。
「確かにいつどこで会えるかわからないし、なんならすれ違ってるかもしれない。けどそんなの承知の上だ。俺達は必ず会うって約束した。俺はその為に生き続けてるんだから」
 とてもじゃない覚悟の上に成り立つ約束。それを笑顔で語るユーリさんがどれだけの想いを背負っているのか、俺には全く理解できなかった。
「とまあ、ここまでが前提の話だな」
 そう言って紅茶を一口。会長とは違った上品さが窺える。300年前から生きてるってことは、どこかの貴族の生まれなのだろうか。
「で、君の悩みの話に戻るが」
 不意に俺の話になり、背筋を伸ばしてしまう。
 そうだった。今日の主題は俺の悩みについてだった。
「君は失った恋人との向き合い方について悩んでいる。そうだな?」
「はい。でも、あいつは厳密に言えば」
「人じゃなくて人工知能。奏と同じ存在」
「そうですね」
「まあ、これはあくまで俺の考えだから参考程度に」
 そう念押ししてユーリさんは言葉を続ける。
「俺は科学に詳しくないから、悪い風に受け取ってほしくないんだが。君の恋人は、再会しようと思えば出来る存在じゃないかなと思う」
「それはどうして」
「彼女は人工知能だろう?ということは、もう一度開発すればいいんじゃないか?……って、こんなこと言うのは君にも博士にも失礼だけど」
 いや、一理ある。彼女は科学の結晶だ。ただ、現代の技術が追い付いてくて、ある意味暴走してシステムが耐え切れなくなったからこその別れだ。だから再度開発して、奏に引き継がれた幸せに関するデータから奴のログをサルベージできれば或いは。
「ただ、再度開発した彼女が全く同じ存在になるかどうかは保証できない。それはわかってくれるかな」
「勿論」
「ただ、俺には一つ確信があってな」
 そういうユーリさんの眼鏡に青白い円形の何かが浮かんでいた。円の中には複雑に入り組んだ形や模様がいくつも描かれていた。魔法陣、という奴だろうか。
「実は、君達3人から伸びる縁の糸の中に、一本ずつ変な方向に伸びる細い糸があってな」
「えっ?」
「私達もですか?」
「ああ。縁の糸って言うのは、あまり遠すぎると繋がってるのが見えない。けどなぜか誰もいなさそうな場所に向かって伸びる糸がある」
「それってどういう……」
「俺の言う縁って言うのは、可能性のことを言うこともある。例えば友人になる可能性や、恋人になる可能性。それらをひっくるめて縁と呼ぶ」
「それが、明後日の方向を向いている?」
「ああ」
 ユーリさんは頷いた。
「……ここから先は、あくまで可能性の話なんだが。その明後日の方向を向いている縁の糸って言うのは、それぞれ敦也の恋人に繋がっているんじゃないだろうか」
「えっ……」
 縁の糸が俺の恋人に、天に繋がっている……?
 横目に見ると、大和も会長も眉間に皺が寄っていた。恐らく真剣に話を聞いているのだろう。かくいう俺もそうなのだが。
 いやしかし。
「俺もこんなの初めてだから、あまり断定的なことは言えない。てかそもそも奏と特定の誰かに縁が繋がっているようにも見えなかった。けど、君達は揃って年末に奇跡のような出来事を経験したのだろう?」
 確かに。
 実体を伴った天に再会するという、本当に奇跡のような体験を俺達はした。そこにいた全員が体験したのだから間違いはないだろう。
「その奇跡がまだ続いているとしたら?」
 ユーリさんから発せられる、驚きの考察。しかし眉唾物だ。
「天と呼ばれた人工知能の少女は、実体を伴って君達の前に現れた。その奇跡自体は一度きりの物だったのかもしれない。けどその時、もし天が完全には消えずに一部がこの世界に留まっているとしたら?だとしたら俺の視た縁の糸にも納得がいく。実体を得て、世界に実際の存在として定義されたのだとしたら、その存在と君達の縁が繋がっていてもおかしくはない」
 なるほど。魔法使いならではの解釈ではあるが、確かに納得できる。そうなった場合、俺にはある選択肢が与えられる。
「つまり何か方法を探れば、再び天と会える?」
「ああ。たださっき言った通り、これは俺の考えだ。確証がないわけだから断定はできない。けど可能性は提示できる」
 これから先、天に会う為の研究開発に携わるという選択肢。しかしこれは、今日ユーリさんに会わなければ浮かばなかった選択肢だ。なるほど、確かにユーリさんが最初に言った、悩みを解決に導くというのは本当の話だったらしい。
「どうだろう、敦也。勿論険しい道になるかもしれない。だから俺は、君にこの選択肢を強制はできない」
「そうですね。確かに、尋常じゃない覚悟を求められそうですね」
 魔法使いであるユーリさんなら、膨大な時間をかけてでもなんとかできるかもしれない。だが生憎俺は普通の人間だ。時間に限りはある。となるとすぐには結論付けることは出来ない。
「……暫く考えてみてもいいでしょうか」
「勿論。下手をすれば君の一生に関わることになるかもしれないからね」
 流石にユーリさんもそれはわかってくれていたらしい。会長が言ってた、気さくな人というのはあながち間違いじゃないのかもしれない。
「しかしまあ、縁というのは不思議なものだな」
そう呟くユーリさんに、俺達は一斉に顔を向ける。
「不思議な力を持つ貴方がそれを言いますかな?」
大和、失礼かよ。
確かに不思議だけどさ。
「魔法使いから見ても、まだまだ不思議なことはあるよ」
「なるほど」
「それで、何が不思議なんですか?」
「ああ。存在しなくとも、縁の糸って言うのは伸びるものなんだなって。もしかしたら、案外敦也の恋人は近くで見守ってくれていたりしてな」
「……そういうことか」
作品名:D.C.IIIwith4.W.D. 作家名:無未河 大智/TTjr