D.C.IIIwith4.W.D.
長く生きているせいで、時間の感覚が狂ってしまった。ただでさえループしたり時間遡行したりで実際より長く生きているというのに。
「まあ、なるようになるか」
俺は立ち上がり、外に出た。
そういえば、ゴールデンウィーク明けの土日で巴に呼ばれてるんだっけか。そこで初めて遥月と春陽達に会ったんだったな。その前に、リッカの誕生日に合わせて墓参りに行くか。命日の日はロンドンにいて行けなかったからな……。代わりにカレンの墓には寄ったけど。そういえば、今回もさくらに出くわすんだろうか。少し気になるな。
そんなことを考えながら街を歩く。10年前に見た景色がそのままだ。いや時間が逆行したんだから当たり前か。
俺はしばらく島を見て回り、家に帰る。そして机にあった魔導書の解読に勤しむのだった。
◆ ◆ ◆
流石にもう会えないと思っていました。
だって私は、消えてしまった存在。私が一個人という感情を手に入れてしまったせいで、楽園システムのキャパオーバーによって限界を迎え、それと同時に私は消えてしまいました。
けれど貴方は、私にもう一度会うことを諦めなかったようですね。なんとも、貴方らしいと思います。
そんな貴方に愛されていたことを、天は誇りに、幸せに思います。以前一度会った時は、もう今生の別れになるのかと思っていました。
って、天は人間ではありませんでした。今生という表現は少しおかしいですね。反省です。
……どうやら、覚醒が近いみたいですね。ここまで私の意識が明確になってきたということは、貴方の研究の成果は出たのでしょう。
さあ、目覚めたらどんなお話をしましょうか。どんなことをしましょうか。
考えるだけで楽しみになってしまいますね。
奏さんともじっくりお話したいところです。私がいなかった間、楽園システムの運営は順調だったか。風南島の人々は幸せだったか。
……あ、聞こえます。私を呼ぶ声が。
90……93……95……98……99……100%!
再構築、完了しました!
さあ、私が帰ってきましたよ!って、こういう時は……そうですね。こう言えばいいんでしたね。
私は深呼吸して、出来るだけ大きな声で。
「ただいま戻りました、敦也さん!」
目の前にいる最愛の人に向かってそう叫んでしまいました。
作品名:D.C.IIIwith4.W.D. 作家名:無未河 大智/TTjr