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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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D.C.IIIwith4.W.D.

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「正確に答えを出す必要がある。だが出来るだけ早く答えを出せるように尽力はさせてもらう。これまで5年も待たせてるんだ。しっかりと読み解かないとな」
「はい、よろしくお願いします」
 清隆の目尻には涙が浮かんでいた。恐らく亡き義父や義母に思いを馳せていたのだろう。決して娘たちにはその片鱗も見せないその姿だが、ふと俺と二人きりの時にこういう話をしていると見せることがある。リッカの前だとそれは顕著なのかもしれないが、それは二人の関係が物語っている。
 俺に対してもそういう弱いところを見せてくれているというのは、ある意味信頼の証なのだろう。ならばその信頼を裏切らぬよう、全力を尽くそう。
 俺は改めて心にそう誓った。



     ◆     ◆     ◆



 とある日の昼下がり。
「進捗はどうなの、ユーリ」
 突然そんな声が聞こえ、俺は手を止めて書斎の入口へ顔を向けた。
「リッカか」
 そこには旧友が立っていた。
 リッカはお盆に載せたティーカップを俺の机の上に置くと、勝手知ったるという振る舞いで俺の後ろに腰掛けた。そしておもむろに俺に体重を預けてきた。
「重いからやめろ」
「あら、レディに向かって重いとは何よ」
 実際はそれほど重くないからいいのだが。
 いやそれより。
「まあ、順調とは言いづらいな」
 俺は手を止め、本を閉じた。
 そして首だけをリッカに向けた。彼女の体を労わるように。
「前々から思ってたけど、やっぱり大変なのね」
「ああ、そうだな」
 そう言うとリッカは苦笑した。
 しかし俺は事実を言ったまでであり。またそれが残酷な現実であることもわかっていた。
「紅茶、ありがとな。頂くよ」
「はい、どうぞ」
 俺は少し紅茶を口に含み、香りを楽しみながら飲み下す。
「……最悪、俺のこの呪いはどうでもいい。問題は姫乃の……葛木の"鬼"の力の方だ」
 俺にかかっている呪いは、<最後の贈り物>による不老不死の呪い。大きな力を得る代わりに、何か一つ、自分の大事なものを失う。
 俺が失ったものは――
「ユーリの呪いも、どうでもよくはないわよ。だって、あなたが失ったのは……」
 いつの間にか、リッカが俺の顔を覗き込んでいたようだ。悲しげな声がよく聞こえる。
 ああ、そうか。彼女は俺の一切の事情を知っているんだったな。
「……そうだな。どうでもよくない。さっきのは取り消す」
「是非そうして」
 俺が失ったものは、家族。
 正確に言えば、これまでの家族とのつながりと、これからの家族とのつながり。
 禁呪を行使したときからこの230年ほど、俺はずっと何を失ったのかを考えていた。ただ一言に魔法を失ったのであれば、それはおかしい。何故なら俺は魔力をこの体に蓄えている。それが不老不死を維持する為だけにあるのであればそれは変な話だ。一度は魔法が使えなくなった不老不死の体と結論付けていたが、ずっと考え続けていた。
 そして最近になって、唐突に天啓を得た。
「どうあってもこれから先独りなんて、寂しいじゃない」
 一月前、何を思ったのか清隆から病院の受診を勧められた。
 俺がちゃんと子を成せる体なのかが気になったらしい。どうやら俺の呪いについて、清隆に思うところがあったらしく、それで勧めてきたというわけだ。
 軽い気持ちで受けた検査だったが、結果はどうだ。見事に不妊症だった、いうわけだ。たまたまそうだった可能性も否めないが、そこが引っ掛かった。何故なら俺は不老不死であり、18歳の体から老いることは絶対にない。加齢の抑制によることが原因だとしたら、リッカが同じような状態になるはず。しかしそういうことはなく、彼女たちの二人の娘がそれを証明している。
 そして俺は、改めて俺の身に起こっている事象を整理した。
 俺が失ったものは魔法とこれから子を成す為の術。
 ではどうして魔法を失った?魔法は俺が親から授かった誇りであり、アイデンティティ。しかも俺が得意とした魔法は、一族秘伝の魔法だ。
 ではなぜ俺は禁呪を行使した?無論親を取り戻す為。まだ青い考えの元、寂しかった心を埋める為に禁呪に手を出した。
 ここまで考えれば、おおよその考えはつくわけであって。
「皮肉だよな。家族を喪って、それを取り戻す為に禁呪に手を出したのに、結局全部失うなんてな」
 俺は苦笑交じりに呟いた。
 ――そう。
 俺が真に失ったのは家族。家族とのつながりである俺の魔法と、今後子を成す為の術と。
「笑いながら言うことかしら、それ」
 一番大きいのは、家族の誰にも看取ってもらえないという現在進行形の呪いであり、この禁呪の代償だ。
 それに気づいた時、俺は深く絶望した。
 おそらくその時のことを思い出しているのであろう。リッカの声音には、少しだけ憐みの感情が乗っていた。
「俺が笑っているように見えるか?」
 俺はあえてリッカに顔を見せずに呟く。
 彼女は少しだけ考えるような息遣いをして。
「……いいえ、そうは見えないわね」
 はっきりと、しかし涙交じりの声でそう呟いた。
「しかし、お前が俺の事心配してくれてるなんてな」
「そりゃそうよ。私は清隆や娘達と同じように、エリザベスや貴方のことも大事なのよ」
「そう思ってくれていて嬉しい限りだ」
 何でもない風に話す。
 しかし、家族を持てない俺にとっては、彼女達の想いや存在そのものが大きすぎて。
「もうちょっと私達を頼りなさいよ」
 その言葉が目茶苦茶嬉しくて。
 心のざわつきを隠すのに必死だった。
「そういうとこ、本当に昔から変わらないんだから」
「どういう意味だよ」
「自分のところを蔑ろにしてまでも、大事な人の為にすべてを尽くそうとするところよ」
 ――ギクリ、と。
 俺の心が軋む音がした、気がした。
「そんなことはないはずだが?」
「昔からそうよ。今だってそう。確かに貴方の為になるかもしれないけど、今やってるのは姫乃とその一族の為にやってることでしょ?」
 俺は目の前の本に目を向けた。
 この初音島にあった禁呪に関する本。数年前、この島に越してきたときに清隆に託され、解読を任された本だ。
 この数年をかけて解読は2/3程進んでいた。
 親の出身や、俺自身のこと然り、俺は禁呪については詳しい方だと自負してる。非公式新聞部の中でも禁呪に関することは一手に担う人間であったのは確かだし。
 それでもこの本の解読は難航していた。
「……そうだな。これは姫乃の為にやってることだな」
 努めて冷静に。しかしそんなことは旧友の前ではお見通しであって。
「ホント、そういうところよね。昔から変わらない。あの時だってそう」
「あの時……ねぇ……」
 俺達は思い出語りに耽っていた。
 俺達が風見鶏にいた時のこと。その時出会った、異世界の少女のことを。





作品名:D.C.IIIwith4.W.D. 作家名:無未河 大智/TTjr