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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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D.C.IIIwith4.W.D.

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After da capo[III]【bygone】:Relation 時空を超えて







 俺達がまだ風見鶏にいた頃。
 その事件は突然やってきた。
「まーた面倒なことを持ち込みやがって」
 風見鶏の学園長室。そこは生徒会役員室を兼ねており、そこで作業する人間がちらりほらり。
 俺は風見鶏を卒業してからもそこに通い詰める羽目になっていた。
 理由は明白。
「仕方ないじゃないですか。彼女が魔法使いである可能性があるのですから」
 宮廷魔術師として女王の元へ仕え、俺はエリザベスの命令の元、近衛としての任務を全うする為に彼女の付き人をやっているからだ。
 ……いやそんなことはどうでもよくって。
「正直、なんかデジャブを感じたわよ。こんなことあったはずないのに」
「俺もそう思います」
 連れてきた本人達が肩を竦めながら報告を続けた。
「悪い、清隆。彼女の話をもう一度総合して話してくれないか」
「あ、はい。わかりました」
 清隆は自前の書類を用意し、再度説明を始めた。
「彼女の名前はサツキ・ミシマさん。口振りと名前から日本人ではないかと推定されます。俺達が発見した当初、彼女は大きく取り乱しており、リッカさんの行動で落ち着きを取り戻しました。少し話を伺ったところ、『自分は東京にいたはずです。ここはどこですか?』と言いました。そこで俺達は彼女が何かしらに巻き込まれたのではないかと推察し、風見鶏へ連れてきました。現在シャルルさんと巴さんにお願いして更なる聞き込みをお願いしているところです」
 まあつまるところ、地上の見回りをしていたリッカと清隆が、偶然迷子の少女を見つけた、という話らしい。
「了解した。俺の方から日本政府へ働き掛けて、サツキ・ミシマなる人物がいるかどうかを確認してみよう。いいですよね、学園長」
「ええ、お願いします」
「じゃあ、また新しい情報が入ったら俺に教えてくれ」
「わかりました」
 俺は溜息を吐き、机についた両腕で額を支える。そして少し思考を巡らせた。
 今ある情報から推察すると、サツキさんは東京都のどこかで何らかの魔法を使用し、その反動でロンドンまで飛ばされてきたというところだろうか。
 彼女が元居た場所へ送り返せば、それですべては解決する。
 最も、日本政府からの返答次第ではあるが。
「ねえ、一ついいかしら」
「なんだリッカ」
 いつになく真面目な顔をしている。リッカもこの件について悩んでいるのだろうか。
「……前々から思っていたんだけど、その口調何とかならないの?」
「……は?」
 何を言い出すんだこの色ボケは。
「何を言い出すんだこの色ボケは」
「色ボケって何よ。失礼ね」
「失敬、思ってたことが口に出てしまった」
「あなた、私をどんな目で見てるのよ……」
 リッカは嘆息して話を戻した。
「何とかしてほしいのは、そのエリザベスへの口調よ」
「エリザベスへの口調?」
「そうよ。あなたがエリザベスに敬語使ったり、エリーって愛称で呼ばずにいたり、違和感が半端じゃないのよ」
「なんだよそんなことかよ」
 俺は呆れた声でリッカに返事を返した。
「当たり前だろ。非公式新聞部としてじゃなくて、俺はエリ――学園長の秘書であり近衛であり部下だ。公務中は下手な態度は取れんよ」
「その通りですよ、リッカさん。確かに違和感はありますけどね」
「なんなら今からでも戻そうか?」
「公私混同は避けてくださいね」
「ほらこの調子だ」
 俺は背凭れに体重を預け、改めてリッカを見据える。
「流石に一国の主に仕える身だ。私的な時間はさておき、下手なことは出来んよ。これまで以上にな」
「……まあ、それもそうよね」
 納得したような、していないような。そんな表情でリッカは頷いた。
 まあ、違和感を感じるってだけで、変にやめろってわけじゃないだろうけど。
「とりあえず、シャルルと巴の聞き取り次第だな」
「そうね。それが終わるまでは動けないわね」
「じゃあ俺達は地上に戻って日本政府と話を付けてくる。さっきも言ったけど、追加の情報があればよろしく」
「わかったわよ」
「じゃあチェルシー、あとは任せた。迷子のことはリッカ達と清隆に任せて、他の役員たちとで選挙の準備に取り掛かってくれ」
 迷子のことで抜けかけていたが、新年度が始まって今は12月。そろそろ新入生へ向けた生徒会役員選挙の時期がやってきていた。
「わかりました。じゃあエミリア、イアン君、メアリーちゃん、次の選挙の事、やっちゃいましょうか」
「はいはーい」
「えー、なんで清隆はあっちなんですか。私もあっちがいいですよ!」
「葛木はあの少女を見つけた当事者だ。あちら側に回るのは当然だろう」
「悪いな、二人とも。任せちまって」
「フッ、構わん。こちらは気にせず、自分のやるべきことに尽力するといい」
「ありがとな、イアン」
「んなっ!……礼を言われる筋合いなどない」
「はいはい」
「私にはないの!?」
「お前はイアンみたいな気遣いしてくれてないじゃないか」
「ぐぬぬ……」
「まあまあ、メアリーちゃん。清隆君、こっちのことは気にしなくていいけど、手は抜かないようにね」
「はい、早く終わらせてそちらを手伝えるように頑張ります」
 このやり取りを見ていて、少し安心する。
 うん、迷子のことも選挙のことも何とかなりそうだな。
 俺はこの現状を生徒会役員達に預けるとエリザベスに付き従い、風見鶏を後にした。
 さて、ここからは大人の仕事だ。



     ◆     ◆     ◆



「まったく、忙しいったらありゃしないな」
 デスクワークは性に合わんが、これも国の為。生徒会役員として仕事していた時の経験がこんな形で活かすことになろうとは思わなかった。
 しかし今は女王に関わる仕事をしているわけではなかった。
「どうですか、スタヴフィード殿。進んでおりますかな」
 声をかけてきたのは杉並だ。
 ここは非公式新聞部の拠点。
 ……とは名ばかりで、宮殿の中にある部屋を間借りしている場所だ。
 そこで俺は、非公式新聞部に持ち込まれた魔導書の解読作業をしていた。
「進んではいるよ。ただ、サツキさんの事が気がかりでな……」
 昨日清隆から報告を受けた、迷子の件。
 今もシャルル達が身辺調査に当たってくれているが、当たり障りのない情報以外は出てきていない。それでも今ある情報だけで日本政府に問い合わせているところだった。
「でしょうな。貴方は昔からそういうお方だ」
「どういう意味だよ」
 眉間に皺を寄せて聞く。
「おっと、誤解しないでいただきたいが、俺はこれでも褒めているのだよ」
「まったくそんな気はしないが?」
「うーむ……」
 顎に手を当て、考える仕草。
 本当に考えているのか怪しいが。
「簡単に言わせて頂けば、貴方は人の為に尽くす癖がある、と言ったところか。勿論貴方の美徳だ」
「なんか含みのある言い方だな」
「まあ、逆に言えば自身を蔑ろにしがちというところだ。アルペジスタ嬢を喪った悲しみが、完全に癒えたわけではなかろう」
 今日は痛いところを突いてくるな、こいつ。
 もうこれは仕事にならないな。
 俺は本を閉じると、改めて杉並に目を向けた。
「……カレンを喪って、もう半年だ。流石にこれ以上引き摺るわけにはいかんよ」
「だが、苦しい時は立ち止まるのも必要ですぞ」
作品名:D.C.IIIwith4.W.D. 作家名:無未河 大智/TTjr