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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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D.C.IIIwith4.W.D.

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「それは、この魔力そのものが、魔法的異常だからだ」
「……もう少しかみ砕いて」
「OK、了解した」
 もう一度頭を整理する。
 えーっと……。
「<最後の贈り物>によって与えられた魔法的異常は2つ。一つは死ねない体、もう一つは魔法が使えない体。これら二つは、俺が願ったことに対して掛けられた代償だ」
「願ったことは、家族を取り戻すこと、だったね」
「ああ」
「それに対しての代償がその二つ、その繋がりは家族。一生看取ってもらえないことと、親との繋がりの証である魔法を使えないこと」
「その通りだ」
「ここと魔力に何の繋がりが?」
「問題は死ねない体の方だ。つけた傷が一瞬で元通りになる、いくらでも無理の利く体。これは全て、俺の体に蓄えた魔力に由来する」
「あっ、そうか。魔力が勝手に体を治療したり、代謝を整えてたりしたわけだ。だから魔力そのものが魔法的異常ね」
「そういうこと」
「……ということは、<逆転の魔法>が打ち消したものにその魔力が含まれる」
「理解が早くて助かるよ」
 <逆転の魔法>は、負の想いの力によって後天的に与えられた魔法的異常を取り除く魔法。だからこそ俺の<最後の贈り物>を取り除くことが出来た。それはすなわち、俺の体に蓄えた魔力も例外ではなく。
「でも、魔法を使って解呪した時から大分時間が経ってるよね。なんで今になって」
「考えられる理由としては2つ。1つは与えられた魔力が俺自身の魔力と混ざり合って、取り除くのに時間がかかっていた。もう1つは解呪した影響で新たに魔力を与えられなくなって、それが魔法使いの原則に則って減っていったか」
「1つ目は無くはないけど、永続的に魔法が効果を及ぼしてるんじゃなくて、魔法の効果の処理が継続していたって言うことだから、考えにくいよね。なら、2つ目の方が可能性としては高いね」
「俺もそう思う」
「で、今までの話を総合して、元の魔法使いに戻りつつあると」
「ああ」
 俺は頷いて返した。
「それで今はどういう状態なの?」
「ちょっと待ってろ」
 俺は自分に対して分析魔法を使う。意識して、少し多めの魔力を使う。
「……魔力の総量は昨日からさほど差異はない。が、全盛期よりは確実に減っている」
「増えてもないってこと?」
「ああ。以前なら夜12時きっかりに回復していたが、それがなくなっているみたいだ」
「てことは、解呪はしっかり出来たってことだね」
「そうなるな」
「それで、どうするの?」
「……そこだよな」
 原因は分かった。現状もある程度理解した。後はこれからどうするか、だ。
「まあ、ゆっくり考えればいいと思うよ。ユーリさんに任せる」
「そこは何も言わないんだな」
「もう私がどうこう言っていい話じゃないでしょ。完全にユーリさんの問題じゃん」
「それもそうか」
 少し可憐の後押しを期待してしまった自分がいる。
 けどこれは、可憐が俺を突き放したわけでない、と思いたい。
「悪いけど、私にはどうするのが正解なのか分かんないよ」
 こればっかりは、可憐にはどうすればいいのか分からないらしかった。
 かくいう俺も、この処遇には悩んでいた。
「今悩んでても仕方ないよ。ご飯にしよ?」
「……そうだな」
 俺は重い腰を上げ、可憐に続く。
 どうやらすでに粗方用意を終えていたらしい。
 本当、どこまで俺の支えになってくれる人なのだろう。



 その日の夜。
 隣で眠る可憐をよそに、俺は考え事していた。
 今日分かったこと、俺は自身の魔力を失いつつある。恐らくそれは、禁呪を解呪したことによる俺自身の正常化。代償とは言いづらいが、そんな感じだろう。
 では俺にとっての魔力ってなんだ?
 魔術を使う為の力の根源だ。
 じゃあ俺にとっての魔術ってなんだ。
 カテゴリー5、<失った魔術師>と呼ばれる魔法使いとしてのアイデンティティ。Nobllless obligeを全うする為に必要な力。
 ここまでは、いい。
 それよりこの魔力を失ったら、俺自身の身に何が起こるかわからない。
 可能なら失いたくない。失いつつあるこの力、この事実にどうにか抗う術はないものか。
 ――わからない。
 正直、前例がない。だからこそ、俺の身に何が起こるのかわからない。
 ……俺がこんなことで悩むことになろうとはな。
 静かに苦笑する。
 今回ばかりは、どうにもならないかもしれない。そんな思いが、俺の脳裏をよぎっていた。



     ◆     ◆     ◆



 12月に入って初めての登校日。
 本日最後の授業。
 もうすぐテスト期間で、それが終わればクリパ期間。そんな時でも授業は変わらず進む。
 ――1つだけ、違うことがあるとすれば、ユーリさん……先生の様子がおかしいことだろうか。
「――というわけでこの公式に当てはめてやれば、自ずと解けるわけだな」
 目の前で数学の講義をするユーリ先生の覇気がない。いや、授業そのものはいつも通りなんだけど、一呼吸置く度にため息を吐いている。
 何かあったのだろうか。
 ……って、また耕助寝てる。テスト前だってのに、大丈夫なんだろうか。
 またやらかして四季さんに愛のムチを振るわれたりして。
「――耕助、起きろ」
「ハヒッ!?」
 どうやら、その前にユーリ先生からの愛のムチを振るわれそうだ。
 居眠りしている耕助の席にユーリ先生が近寄り、腕組みをしている。けどその表情に、怒りとは別の何かが込もっているように見える。
 ……そう思うのは俺だけだろうか。
「す、すすすすすすすみません……」
「テスト前だからな、これ聞き逃すとヤバいぞ」
「は、はい」
「よし、起きたな。じゃ、続きやっていこう」
 やっぱりおかしい。
 いつもならもう少し棘のある言葉を投げそうなものなんだけどな……。
 周囲を見回す。どうやら同じように違和感を持ったらしい姫乃とさらの表情が見える。
 他の面子は気にしてない様子だけど、これは100年前から付き合いのある俺達だから気づいたことと言えそうだ。それくらい微妙な変化だった。
 いや、ユーリさんが自分を律しているのかもしれないけど。
「さてと……あっ、やべ」
 教卓に戻って、教科書とにらめっこするユーリ先生が頭を抱える。
「定期テストの範囲、ここまでだ。次回は自習にする。あんまり騒がなければ教室内を移動してもいい。俺もいるから、わからないことがあれば都度聞いてくれ」
 どうやら、予定よりも内容を進めすぎていたらしい。
 なるほど、それは頭を抱えるわけだ。
「良い時間だ、今日はここまで。チャイムが鳴るまでは騒がずに教室にいること。さら、号令」
「はい。起立、令!」
 さらの号令で俺達は挨拶をする。
 時計を見ると、あと2・3分でチャイムが鳴ろうかという時間だった。
 俺が席に着くと、目の前に姫乃とさらがいた。
「兄さん、ちょっと」
 小声で俺を呼ぶ姫乃。俺も倣って小声で返事する。
「なんだ?」
「ユーリ先生のことでお話が」
 教卓を見ると、既に先生は教室を後にしていた。
 ということは、俺達だけで話をしたいということか。
「わかった、部室で話そう」
「はい」
「わかりました」
 その瞬間、終業のチャイムが鳴る。
作品名:D.C.IIIwith4.W.D. 作家名:無未河 大智/TTjr