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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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D.C.IIIwith4.W.D.

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 基本デスクワーカー故、あまり外に出ないのは如何なものかと思いつつ、可憐がいない為どうしようかと思い、気付けばここにいた。
「お一人とは珍しいですねぇ、ユーリさん。もしかして、本当に可憐さんと……」
 そう言って緑茶と和菓子を持ってくるのは葵。
 どうやら今日はここでのバイトの日らしい。
「今日明日は可憐が本土の方に仕事で行ってるから、俺一人なだけだ。そういうお前こそ、テスト直前なのにバイトしてていいのか?」
「うぐっ……。ちょっと今月ピンチなので、少しだけシフト入れてもらいました」
「丸1日じゃないだろうな」
「午前中だけです!」
「まあ、バイト終わったらしっかり勉強しておくようにな」
「了解であります」
 そう告げて、緑茶を一口。
 たまにはこういうのも悪くない。
「そう言えば、週明けの話ですが」
「なんだ」
「ほら、ユーリさんに色々あったって話ですよ。あの時は結局はぐらかされちゃいましたけど、何かあったんですよね」
「まだ言うか」
「そりゃ気になりますからね」
 まったく、ミーハーな奴だ。
 ……まあ、葵なら話しても大丈夫か。
「バイト、午前中ってことはもうすぐ上がりだよな?」
「えっ?はい」
「それが終わったら話してやるよ。待ってるから」
「わかりました。……て、教師が生徒とプライベートで二人きりなんて、なかなか罪ですねぇ」
「聞きたくないならこのまま普通に帰るぞ」
「わー!冗談ですよ!あと30分ですから待っててください!」
 そう言って他の客の元へ向かう葵。
 幸いお昼時だが客が少なかった為、俺と雑談をしていても何も言われなかったが、数多ある葵のバイト先のアイドルを妻帯者である俺がこうしてガメておくのは、いくら昔からの知り合いと言っても、周囲はいい気分はしないだろう。まあ、終わってからなら何も言われまい。
 こうして待つこと数十分。
「お待たせしました~」
 私服に着替えた葵が俺の隣に座る。
「好きなもの頼め。俺が奢ってやる」
「いいんですか!?」
「まあ、相談聞いてもらうようなもんだからな。そのお礼だとでも思ってくれ」
「ありがとうございます!……って、相談?ユーリさんがですか?」
「ああ」
 頭に疑問符を浮かべながら、葵はメニューを見て注文をする。
 俺も追加で少し注文。――と、軽く人払いの魔法をかける。
 俺達の会話を他愛のない雑談に聞こえるように調整して、と。
「それで、相談って言うのは?――って、何があったのかを聞くのが先ですね」
「そうだな。……一応、清隆達には内密で頼むぞ」
 俺は先日分かった事実を葵に教える。無論、こうしなければ話が始まらないから。
 俺の話を、時折和菓子を食べながら聞く葵。表情だけなら、真剣だった。
「と、まあこんなことがあったわけで」
「……これはまた、なかなか難問ですね。それであんなことを聞いたわけですか」
 どうやら納得のいったらしい葵。
 まあ、週初めに話したあれだけならちんぷんかんぷんだもんな。
「それで、相談したいことって言うのは?」
「前と一緒だよ。いや、ちょっと変える。もし魔法が使えなくなったらどうする?」
「元々魔法が使えるわけじゃなかった私に、それを聞きますか?」
「正直俺はお前が適任だと思ってるよ」
「それは、あの禁呪の件ですか?」
「そりゃ勿論」
 禁呪<永遠に訪れない五月祭>。かつてのロンドンで葵が引き金を引いた禁呪。
「そうですねぇ。あの時は、私が未来視で自分の避けられない運命を見てしまったが為に、あんなことを起こしてしまったわけですが」
「そうだったな」
「それが原因で風見鶏の、いえロンドンの皆さんに迷惑をかけてしまいました。私の身勝手な想いを叶える為に」
 そう言って左腕の裾を捲る葵。
 今の葵に何かあるわけではないが、風見鶏にいた頃はそこに禁呪の紋様が刻まれていたと聞く。
「けど、死にたくなかった、なんて言われたら、怒るに怒れないよ」
「あはは……」
「……悪い、思い出させたくなかったことを思い出させたな」
「いえ、平気です。それより、もし魔法が使えなくなったら、ですね」
「あ、ああ」
 無理して笑っているのは目に見えて分かる。
 だが敢えて突っ込まない。葵もそこには触れて欲しくないだろうから。
「えーっと、私に置き換えれば、近い将来死んでしまうという事実を受け入れるかどうか、ですよね」
「そう考えてもらって構わん」
 元々そのつもりだったし。
「禁呪を使う前の私だったら、迷わず死なない為に出来ることを探したと思います」
「だろうな」
「でも、それは間違っています。だって、避けようのない運命なんですから。それなら最後の日までいつも通りの日常を過ごします」
 避けようのない運命、か。そういう考えはなかったな……。
「なんか、すごく腑に落ちた、みたいな顔してますね」
「そうか?」
「はい。そんなに効きましたか、今の言葉」
「……そうだな」
 だが何かまだしこりのようなものがある。何か引っかかっている。これは何なのだろうか。
 わからない。
 わからないけど、これはまた考えよう。
「ありがとう、葵。おかげでちょっと楽になった」
「おお、月曜とは違って、今度は本当みたいですね」
「どういう意味だ?」
「だってあの時、若干微妙そうな反応でしたよ?」
「嘘だろ?」
「いいえ、本当です。多分他の皆さんは気付いてなかったと思いますけど」
「……もしかして、あの時詰めてきたのって」
「はい。そりゃ微妙な顔されたらなおさら気になるじゃないですか」
 なんてことだ。無意識とは言え、そんな顔をしていたか。
 気を付けないと。
「ですが、私達って似た者同士ですねぇ」
「禁呪を使ってしまった、という意味ではな」
「身に余る願いを持って、その為に本来は絶対にしてはいけない事をしてしまいましたもんね。規模は全然違いますけど」
「お前は世界規模、俺は俺個人だけだけどな」
「でも悪いことしたことには変わりませんね。ワルワルコンビです」
「そうだな。……て、お前は任務で回収した魔導書をちょろまかしてるから、余計質悪いじゃないか」
「あはは、その節はすみません」
「ま、やったことには変わらん。俺達揃ってワルワルコンビだ」
「ですね。……そういえば、がっつり魔法のお話してましたけど、大丈夫だったんですか?」
「ん?ああ。限定的な人払いの魔法を使ってたから大丈夫だ」
「なるほど、それで頼んだものを持ってきてもらった時に何も違和感を持っていなかったわけですか」
「そういうこと」
 その後俺達は他愛のない雑談をして別れた。
 葵にはしっかり勉強をするように釘を刺しておいた。糠に釘にならなければいいけど。



     ◆     ◆     ◆



 次の日。
 今日も可憐がいない為、俺は一人。
 そんな俺は商店街を一人ぶらついていた。特に目的もなく。
「あれ、ユーリじゃない」
「ホントだ。ユーリさーん!」
 不意に俺を呼ぶ声が聞こえる。
 目の前を見ると、こちらに向かって歩く立夏と並んで歩きながら大きく手を振るシャルルがいた。
「立夏にシャルル。テスト前だって言うのに余裕だな」
「そういうわけじゃないわ。気分転換よ、気分転換」
作品名:D.C.IIIwith4.W.D. 作家名:無未河 大智/TTjr