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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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D.C.IIIwith4.W.D.

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 早めにやっておきたいタスクはないが、何かあった時の為に待機しておく必要がある。何もないに越したことはないけど、イベント期間はトラブルがつきものだからな。
 それにクリパの当日は仕事を休む必要がある。俺がやろうとしてる頃は、暦の力を借りないといけない。
 休む前に、なるべくタスクを潰しておきたかった。



     ◆     ◆     ◆



「――うん、これなら問題なく行けると思う」
「本当か!よかった」
「うん。あとはちょっとずつ手直しと調整をしていけばいいんじゃないかな」
 クリパ前、最後の休日。
 俺はさくらを家に招いて、魔法の最終チェックをしていた。
 完成した魔法陣をさくらに見てもらい、その構築式に問題がないかを見てもらっていたが、問題なしのお墨付きをもらえた。
「でも結構ギリギリになっちゃったねぇ。試す暇もなさそうだね」
「こればっかりは仕方ない。状況に気付いて3週間、急ピッチで仕上げたもんだ。多少の粗なら本番までに手直しできるだろうけど、こればっかりはぶっつけ本番だ」
「だねぇ」
「でもこれで、ユーリさんは晴れて普通の魔法使いに戻れるわけだ」
 お茶を淹れて戻ってきた可憐が会話に混ざる。
「そうなるといいけどな」
「大丈夫だよ!魔術師ユーリが作った魔法陣なんだよ、自信持たなきゃ!」
 そう言って微笑むさくら。
 その笑みはかつてのリッカにそっくりだった。
「……そうだな」
「というかね、ユーリさん。こういう魔法をサラッと作るのがおかしいの、理解してるよね?」
「それでも1週間くらい頭を悩ませてたが?」
「普通は1から魔法を作るなんて、やろうと思って出来ることじゃないからね」
「そうだよー。おじいちゃんやおばあちゃんもそう言うことする人だったけど、普通ではないからね」
「そもそもあいつらも規格外だろ」
「それ、自分も規格外だって言ってるようなものじゃない?」
「これから普通に戻ろうとしてるんだから、これくらいいいだろ」
 あーだこーだ言いながら、俺達は魔法陣の調整を続けていく。
 数時間後、目の前の羊皮紙には完成した魔法陣が描かれていた。
「ありがとう、さくら。最終調整まで手伝ってくれて」
「お安い御用だよ。これで後は本番でうまくいくように頑張るだけだね」
「ああ。……って、もうこんな時間か」
 時計を見ると、既に夕方だった。
 丸一日潰してしまったらしい。
「時間遅くなったし、晩飯食べていくか?」
「えっ、いいの?」
「こんなこともあろうかと、既に用意しておきましたよー」
 ジャストタイミング。
 仕事と家事をするために席を外していた可憐が戻ってきた。
「それじゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな」
「了解!もう少しかかるから、待ってねー」
「頼んだ」
 この後はさくらを交えて夕食を摂った。
 他愛のない話で盛り上がり、夜は更けていった。



     ◆     ◆     ◆



 時が過ぎるのは早いもので、クリパ当日。
 最も恐れていた日が来てしまった。
「さ、兄さん」
「観念してお着換えしましょうねー」
 姫乃とさらが俺に迫ってくる。
 文字だけ見れば、健全な男子諸君は羨ましがる光景かもしれないが、その手に持つメイド服がすべてを物語っている。
「先輩、周りを見てください。着替えてないのは先輩だけですよ」
 見ると確かに他の面子は全員メイド服を着ている。しかもその全員が覚悟を決めて任務を全うせんとした顔だった。
「往生際が悪いのは兄さんだけですよ」
「待ってくれ、せめて立夏さんとるる姉と葵ちゃんには見られないタイミングにしてくれ」
「もう遅いですよー」
 姫乃たちの後ろから聞こえる元気な声。
 そこには葵ちゃんがカメラを構えていた。
 いや、その状態だったら俺の着替え写っちゃうでしょ。
 ってそうじゃなくて!
「なんでいるの!?」
「開始前の取材ですよー。言ってませんでしたっけ」
 あーそう言えばそんな打ち合わせしたなぁ……。そうか、葵ちゃんは余裕あるのか……。
「先輩、現実逃避しないでください」
「もう観念してください!」
 ああ、もうダメか……。
 俺は諦めて現実を受け入れることにした。けど、一つだけ抗っておこう。
「葵ちゃん、後生だから着替えてる途中は撮らないでね」
 絶対立夏さんとるる姉が黙ってない。
 色んな意味で。
「そんなー」
 落ち込むんじゃない。姫乃とさらも落ち込むんじゃない。
 数分後、俺はメイド服を着せられて教室にいた。しかも姫乃とさらからご丁寧にメイクを受けている。
 あ、シャッター音聞こえる。
 撮るなって言ったのに!まあメイク中だから許そう。
「はい、完成しましたよ」
 さらの声で俺は目を開ける。
 瞬間、黄色い声が周囲から聞こえる。
 悲鳴ではないのが救いか。
「……なんだろう、ムカつく」
「ええ、なんなのかしらこのムカつき」
「その気持ち、すっごくわかります」
 雪村・美琴・葵ちゃんだけはなんか違うこと考えてるらしい。
「えーっと、どういうこと?」
「兄さん、これ」
 姫乃に手鏡を渡され、それを見る。
 その中にはまごうことなき美少女が写っていた。いや、よく見ると俺だった。
「先輩、素地がいいですからね。しっかりメイクしてあげると映えますね」
「ええ。これは自信作です」
「人を作品扱いすな」
 とは言え、これはすごい。
 鏡に写ってるのが俺じゃないみたいだ。可愛いって、作れるんだなぁ……。
「くそぅ、羨ましいぜ清隆……」
「だったらお前もしてもらえばいいじゃん」
「江戸川君は、兄さんほど映える顔じゃないので……」
「って、清隆をメイクする前に言われちゃったの!」
「ああ、なるほど」
「それに森園先輩から、『清隆のメイクアップは気合入れてね!』ってお願いされましたので」
 逆らえなかったかー……。
「というわけで葵ちゃん、いっぱい写真撮っちゃってください!」
「お任せあれですよ!」
「待って、俺の肖像権は!?」
「今日はお祭りなので無視させていただきます!」
「陽ノ下さん、あとでデータくださいね?」
「私もお願いします!」
「了解です!」
 ああ、俺の肖像権が侵害されていく……。なんか2年前にもこんなことあったなぁ……。
 そんな現実逃避をしていないと、この状況を過ごすことは出来なかった。
 数分後。
「一杯撮れましたし、私はこれで失礼しますね」
「葵ちゃん、まさか俺しか撮ってないなんてことないよね?」
「失敬な!清隆さんが着替えている間に、クラスの皆さんにインタビューしてますよ!」
 元気にサムズアップする葵ちゃん。
 周囲の反応を見る限り、どうやら事実らしい。
「ならいいか。記事は任せるけど、俺のことはあんまり引っ張らないでね」
「それは私の気分によります」
 校正の時に思いっきりはじいてやる。
「それではー」
 軽快なステップで葵ちゃんは去っていった。
 さて、ここからは俺達の時間だ。
 時計を見ると、開始30分前。既に仕込みは始めているけど、そろそろ気合い入れないとお客さんに対して失礼だ。
 クラス全員集まって円陣を組む。全員メイドコスをしているだけあって、なかなかシュールだ。
「清隆君、挨拶お願い」
作品名:D.C.IIIwith4.W.D. 作家名:無未河 大智/TTjr