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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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D.C.IIIwith4.W.D.

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「分かってるよそんなことは。けど時間は待ってくれないからな」
 杉並の言い分もわかる。
 恐らく彼なりに俺を慰めようとしてくれているのだろう。基本的に何をしでかすかわからない奴だが、人の心がわからない奴ではない。
 人が本気で嫌がることは絶対にしない人間だからな。
「流石に、300年生きている貴方にそれを言われると説得力が段違いだ」
「嫌味かよそれ」
 ただ、引き摺らずに生きていくというのは困難なわけで。
 それに彼女と交わした約束もある。俺はそれを果たす為に生き続けると誓った。だからこの寂しさともどかしさは表に出さず、自分の中にしまっておこう。
 改めてそう誓い、彼女の形見である眼鏡に思いを込めるのだった。




     ◆     ◆     ◆



 数日後。
 俺は一人で走っていた。学園内の廊下を走るなどご法度だが、この時ばかりは許してほしい。
 俺は目的地に着くと、その扉をノックした。
「ユーリだ。皆いるか?」
 勝手知ったるという場所でも、流石に返事を待たずに入るわけにはいかない。
 しかしすぐに伝えないといけないことがあるわけで。
 いやだめだ、抑えろ。焦りから来るイライラは何も産まん。
「いますよ。どうぞ」
 中から巴の声が聞こえて安堵する。
 俺は扉を開け中に入った。
「すまん、邪魔するぞ」
「邪魔するって、そんな他人の部屋じゃないでしょうに」
「流石にもう他人の部屋みたいなもんだよ」
 シャルルからの言葉は華麗にスルー。
 いや、そんなことより。
「リッカ、清隆、シャルル、巴。皆揃ってるな」
 周囲を見まわし、全員がいることを確認。そして巴の傍に薄い桃色の髪色の少女がいることも確認。
 彼女が件のサツキ・ミシマさんだ。
「丁度1時間前、日本政府から連絡がきた。話はその件についてだ」
 俺は自分の席へ向かいながら話を続けた。
 席に着くと、その椅子に腰を落ち着かせる。
「でしょうね。私達のシェルにテキストが来てたから、そうだとは思ってたわ」
 そう話すリッカの手にはシェルが握られている。
 シェルとは小型トランシーバーとテキスト送信機能を備えた通信端末だ。俺は風見鶏から支給されたそれを、仕事用と称してそのまま使い続けていた。
 故にこんなことが出来たわけで。
「で、どんな報告なの?」
 リッカはかったるそうに口を開く。
 俺はもう一度周囲を確認。
 うん、俺が呼びつけた面々以外にはいないな。
「……まあ、巴達から受けた情報、日本は東京都出身で、名は三嶋皐月。それで日本政府に情報を当たってもらっていた。皐月さん、そこは間違いないね?」
 サツキ――皐月さんはコクリと頷く。
「はい。間違いないです」
「うん。で、ここからが本題だ」
「勿体ぶらずに早く話しなさいよ」
 痺れを切らしたリッカが俺を急かす。
「出来れば、俺ももうちょっと検証したかったんだがな……」
 咳払い一つ。
 俺は改めて皐月さんを視界の中心に捉えた。
「皐月さん。日本政府からの情報によると、貴女はこの世に存在しない人間であることが分かった」
 ――戦慄。ここにいる人間が凍り付いたように感じた。
「……い、いやでもユーリさん。皐月さんは確かにここにいるじゃないですか」
「そうだ清隆。しかし日本政府がこんなことで嘘を吐く理由はないだろう?」
「それはそうですけど……」
 何か言いたそうだが、とりあえず。
「で、俺は一つの仮説を立てた」
「その仮説とは?」
 清隆の――正確には葛木家の親類である五条院巴が顎に手を当て返答を待つ。他の面々も真剣な顔をして俺の話を待っていた。
「皐月さんは、この世界とは別の世界から来たのではないだろうか」
「……はい?」
 全員の目が点になる。まるで、真面目な話を期待していたら拍子抜けしたように。
「あのー……言っている意味が分かりません……」
 そう話す前生徒会長のシャルル・マロース。
 普段ぽわぽわとしている彼女でも飲み込める事態ではないらしかった。
「いや、言ったまんまなんだがなぁ」
 しかしいち早く冷静さを取り戻し、思考を巡らせていた人物がいた。
 清隆だ。
「……つまり、並行世界かどこかから迷い込んできた、ということでしょうか?」
「察しがいいな、清隆。その通りだ」
 なんとか伝わったようで何より。
 するとそれを皮切りに。
「並行世界から迷い込むなんて、なんか不思議だね」
「けど、無くは無い話よね」
「ああ。日本では『神隠し』なんて言葉があるくらいだ。消えた人が逆に出てくるなんて現象があってもおかしくはない」
「そういう考えがありましたか。神隠しにあった人が異世界に消える……なるほど……」
「その発想は眉唾物ね。ある意味、色んな物の考え方が変わるというか」
 と、まあこんな風に各々のブレインストーミングが始まってしまった。
「――ゴホン」
 咳払い一つ。それだけで十分だ。
「皆、色々考えるのは構わないが、少し話を聞いてくれ」
 おそらく今の俺の顔は深刻な顔をしているのだろう。俺の顔を見る周囲の顔が一気に引き締まる。
「……皐月さんが異世界から来た。それだけでも大きな収穫だ。けど同時に大きな問題がある」
「大きな問題?」
「ああ」
 そして俺は皐月さんに顔を向ける。
「皐月さん、一つ確認したいことがあるんだが……大丈夫か?」
「は、はい。大丈夫です……なんとか」
「まあ、聞きたいことってのは、このロンドンに来る前、何か魔法を使ったかって確認なんだけど。例えば、どこかへ転移する魔法とか」
「い、いえ」
 皐月さんは大きく首を横に振った。
「そもそも、魔法が実在している、なんて知りませんでしたし……」
「……そうか。これで一つ仮説を立てられる」
 嘆息一つ挟み、俺は説明を始めた。
「俺が危惧していることっていうのは、この世界の存在のバランスが崩れることだ。いや、すでに崩れている、と言った方が正しいか」
「どういう意味ですか?」
 巴が訝しんで聞く。他の面子も同じように真剣な面持ちだ。
「神隠しのような要因で人の存在が移動するってことは、何らかの要因で存在のバランスが崩れたってことだ。例えば、無理矢理二つの世界間を移動して定着したとかな」
「定着、というと?」
「分かりやすく言えば、定住だな。正規の手順を踏まずに世界線を超えて移り住むとこういうことが起こったりする」
「なるほど……」
「で、世界の自浄作用として存在のバランスが崩れた時、それを補うように勝手に人を移動させたりすることがある。日本で言うところの神隠しの事象の一端として挙げられるな」
 その他の理由についてはあえて挙げないことにする。
「ということは、どこぞの誰かが勝手に世界を超えて移り住んだことが原因で、皐月さんがこちらに連れてこられたと?」
「あくまで仮説だがな」
 巴の言葉に俺は頷きながら言葉を続けた。
「一応、誰かが何か目的をもって移動させたとか、そういうのもあるかもしれん。それはこれから検証してみるところだ」
「検証ってユーリ、方法なんてあるの?」
「世界線を超える魔法は習得している。境界の世界まで行くことができれば、可能だ」
「いつの間にそんな大掛かりな魔法を……」
「時間は無駄にあったからな」
作品名:D.C.IIIwith4.W.D. 作家名:無未河 大智/TTjr