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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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D.C.IIIwith4.W.D.

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「それだけやりがいはあるけどな」
「ま、ユーリさんが決めたことだもんね」
「そういう意味では、お前を付き合わせてしまってることになるな」
「そうでもないよ。私のやりたいことは、ここでもしっかりできる。たまに本土に行かないといけないかもしれないけど、それも苦じゃないよ」
「だといいけど」
「それにお父さん達もこっちに住んでるわけだし。魔法使いゆかりの地であるこの島を終の棲家にするのは、私達の理想じゃないかな」
 終の棲家か。まさか可憐がそこまで考えていたとは。
「ユーリさんはそうじゃないの?」
「勿論俺も同じさ。最初はエリーに引っ張ってきてもらったわけだけど、この島のことは気に入ってる。あいつらとも再会できたし、何より可憐が隣にいる。それで万事OKだ」
「都合のいいこと言っちゃって」
「そういうもんだろ」
「だね」
 それにしても、魔法使いゆかりの地か。魔法使いに縁のある島、と最初に聞いて俺はこの島にやってきた。今にして思えば本当にその通りだったな。
 これまでに色んな魔法使いと出会ってきた。流石に今となっては魔法使いも減ってきているわけだけど。それでも魔法はしっかり色んな人へ受け継がれている。現世に生まれ変わった6人もそうだし、さくらやその息子夫婦、孫もそうだ。ミズの国の魔法使い達も、元気にしてるといいな。
「何物思いに耽ってるのさ」
「……いや、今まで色んな人と出会ってきたなって思ってな」
「走馬灯?」
「まだ死ぬつもりはないぞ」
「分かってるよ。折角普通の魔法使いに戻れたのに」
「そうだな」
 その後は他愛のない話をしながら作ったそばを食べ、後片付け。
 年明けまでもう数時間を切っていた。
「初詣はどうする?」
「毎年通り胡ノ宮神社でいいだろ」
「そうじゃなくて、いつ行く?」
「うーん……。年明け前に神社行って、外で年越しって気分ではないしなぁ」
「じゃあうちで年越しして、年明けたらすぐに行こうか」
「いや、それよりは初日の出を見に行く方が大事かな」
「その考えはなかった。そうしよう!」
 明日の予定、決定。
 それなら早めに今日は休んだ方が良いかもしれない。
「じゃあ、もうお風呂入って寝ましょうかねぇ」
「そうだな。準備してくるよ」
「それじゃあ私は寝間着とか用意しとくね」
 二人揃って席を立ち、それぞれの準備に取り掛かる。その後は風呂に入ってこれまでの疲れを癒し、すぐに寝床に着いた。



     ◆     ◆     ◆



 次の日、日の出前。
 俺達は揃って家を出ていた。
「やっぱ寒いね」
「当たり前だろ。真冬の夜明け前なんだから」
 胡ノ宮神社を目指し、二人並んで歩く道すがら。
 まだ周囲は真っ暗で、人はほとんど歩いていない。
 こんな時間から初日の出を見て初詣に行く奴なんてそういないだろう。
「年明け早々天気が崩れる、なんてことにならなくてよかったね」
「ああ。これで存分に初日の出を拝める」
「……そういえばさ、ユーリさんは魔術師じゃなくなったわけじゃん」
「そうだな」
「これからは、普通の人みたいに人の寿命の中で生きていくのかな」
「そうだといいな」
「だったらいくつまで生きることになるんだろうね」
「難しいことを聞くな」
「だって、もしかしたら明日突然死んじゃう、なんてことになっちゃうかもしれないじゃん」
「これまでがイレギュラーだったからな。そうなってもおかしくはない」
「……えらく冷静だね」
「覚悟はしてたからな。俺の魔力を全て世界に向けて解き放って、俺に影響がないわけないだろ。今はまだそれが見えないだけかもしれないわけだ。それを検査する為に、今度風見鶏の連中が手を焼いてくれるんだから」
「覚悟はしてたけどさ。少しはその話をしてほしかったな」
「……悪い。目の前のことに必死で忘れてた」
「それ自体はいいことなんだけどねぇ。ちょっとは隣を見て欲しかったな。ユーリさんが抱えてた、自分があらゆる系統樹の径の中でもイレギュラーだったって話もそうだし」
「悪い」
「今度隠し事したら、許さないからね?」
「肝に銘じておくよ」
「浮気も許さないからね」
「するわけないだろ。お前一筋なのに」
「言ってくれるねぇ。まあ言いにくいこともあると思うけどさ、その時は時間をおいてくれてもいいよ。あんまり時間をかけすぎると怒っちゃうかもしれないけどさ」
「ああ」
 そんなことを話している間に目的地に到着。
 時計を見ると、もうすぐ初日の出を拝めるかという時間だった。
「もうすぐだ。高台へ行こう」
「オッケー」
 高台へ行くと、まばらに人がいた。
 同じこと考える奴らはそれなりにいるもんだな。
「二人きりならよかったのに、残念」
「そう言うな。皆初日の出は見たいもんだ」
「それもそっか」
 高台から海を見る。
 群青色の水平線から、茜色の線が顔を出す。そこからゆっくり太陽が昇ってくる。
 今年初めての日の出の時間だ。
 徐々に太陽は昇っていき、周囲が朝焼けに照らされた。
「あけましておめでとう、可憐」
「あけましておめでとうございます、ユーリさん」
 二人見つめ合い、新年の挨拶をして笑いあう。
 二人きりならキスをしていたところだが、今回ばかりはお預けだ。人目をはばかるような関係ではないが、流石に人前では恥ずかしい。
 それは可憐も同じ気持ちだった。
「初詣、行こっか。今なら一番だよ」
「そうだな」
 二人揃って神社の本殿へ向かう。
 神社のルールに従ってお参りをして、お祈りをした。
「何を願ったの?」
「言ったら叶わないかもしれないだろ?」
「私には教えてくれてもいいじゃん」
「それでも秘密だ」
「えー、さっき隠し事しないで言ったところじゃん」
「それでもだ」
 俺達は並んで歩く。
 こんな風に可憐と一緒に並んで歩いていきたい。これから先も、ずっとそれが続いていきますように。
 それが俺の今の願いだった。



     ◆     ◆     ◆



作品名:D.C.IIIwith4.W.D. 作家名:無未河 大智/TTjr