D.C.IIIwith4.W.D.
俺が禁呪を行使した時。
俺が魔法を使えなくなった時。
俺が死ねなくなった時。
俺は滅茶苦茶後悔した。
ずっと引き摺っていた事で犯してしまった事を、一晩中後悔して嘆いた。
魔法を使えなくなったことと、死ねなくなったこと。
それらは罪を犯した俺に対しての罰だと、そう考えながら生きてきた。
だからこそのNoblesse obligeだ。
高貴なる者には背負うべき責務がある。
俺自身は高貴なる者ではない。
だが俺には罪を償う責務があると考えていた。
その責務は果たせただろうか。
俺にはわからない。
けど、だからこそ、俺は俺に残された時間もその責務を果たしていこう。
◆ ◆ ◆
「何してるの?」
「日記書いてた」
「……どう見てもポエムだけど」
「見るんじゃねぇ」
とある日の昼下がり。
俺は書斎で日記を書いていた。
いつもなら枯れない桜のもとへ行くのだが、最近はそうしていなかった。
……というのも、最近は枯れない桜に足しげく通う奴がいるもので、俺はその邪魔をしたくなかった。
「ま、勝手に読むけどね」
「……勝手にしろ」
そもそも俺が可憐に再会するまでに何があったかを書き遺しておく為につけていたものだ。
読まれても特に問題はない。
恥ずかしいけど。
「そう言えば、白髪増えたね。ストレス?」
「それよりは、魔力を全部手放した影響かな」
「不死の呪いが関係してるってこと?」
「多分な」
俺は日記を本棚に仕舞いながら可憐の話を聞く。
風見鶏による検査の結果、体に異常はなかったわけだが何故か白髪が増えていっていることだけが変化として残った。
不死の呪いで体の代謝が常に一定の状態に保たれていたものが、それが消えて普通の人と同じく生活によって変化するようになった、と俺は考えている。
死ねない呪いに対して言えば安いものだが、気になると言えば気になる。
「いっそのこと、真っ白にしちゃう?」
「馬鹿言え。教師がそんなことできるか」
「だよねぇ。冗談だよ」
「そう言えば、今日の予定は?」
「特にない。けど、そろそろ日用品の買い時かも」
「俺も暇だし、ちょうどいい。行くか」
「だね」
俺達は揃って家を出る。
たまにはこんな色気のない外出だっていいだろう。
これからいくらだってそんなことは出来る。
「そうだ、ユーリさん。確認したいことがあったんだった」
「なんだ?」
「呪いの影響で子供を作れないんだったよね」
「そうだったな」
「じゃあ呪いがなくなったってことは、それも戻ってるってことだよね」
「……そうだな」
「今日、頑張っちゃう?」
「ノーコメントで」
「えー」
夫婦故の雑談をしながら、並んで道を歩く。
――突然目の前に桃色の風が吹く。
恐らく枯れない桜から散った花弁が風に乗って飛ばされたのだろう。
俺の願いを叶えてくれた枯れない桜。
今度は今の俺の望みを叶えてくれるだろうか。
そうだといいな。
「そういえば、お正月の願い事聞いてなかったね。なんだったの?」
「教えねーよ」
まったく、相変わらず変なところで心を読みやがって。
そんなことを考えながら、今後の事に思いを馳せるのだった。
D.C.Ⅲ.with 4.W.D.
-Wizard's Diary-
The End
作品名:D.C.IIIwith4.W.D. 作家名:無未河 大智/TTjr