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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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D.C.IIIwith4.W.D.

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「勿論そこは清隆の腕を信用しての頼みだ。ただそれ以上に懸念事項が……だな」
「あー……なるほど」
 どうやら清隆は事情を察してくれたらしい。なんと頼もしい後輩だ。しかもどうやら、察したのは清隆だけではなく。
 困ったような笑顔で頷く才媛三人がそこにいた。
「あ、あのー……」
 しかし理解の追い付かない当事者が一人。
「その、夢見の魔法を使うにあたっての懸念事項とは如何ほどの物なのでしょうか」
 恐らく想像のついていないであろう少女は、おずおずと手を挙げて質問を投げかけてきた。
 なるほど、そこからか。さて、どう説明したものか。
「皐月さん」
「なんでしょう、葛木さん」
 と、ここで声を上げる夢見の魔法使い。
 そうだな、ここはその道のプロに説明を任せた方がいい。
 そう思い俺は静観することにした。
「俺が夢見の魔法を使うにあたって、魔法をかける俺と、実際に受けてもらう皐月さんとユーリさんには共に眠ってもらう必要があります。そうしなければ、魔法を使って夢の世界に入ることが出来ませんから」
「……あっ」
 何かを閃いた皐月さん。どうやらそこまで言われてハッとしたらしい。
「夢を見るっていうのは、比喩ではなく眠って夢を見させられるってことなんですね」
「はい。なので今回は、俺とユーリさん、皐月さんが一緒に眠るということになります」
 まさに危ないシチュエーション。しかし必要な措置なので致し方ないのだが。
「まあ、女性一人に対して男二人っていうのは、なんとも形容しがたい危険があるわね」
「ああ。いくら元会長と清隆と言えどな」
「うんうん。流石に皐月さんを一人にはできないね」
 才媛3人からの悪意のない言葉が突き刺さる。実際悪意はなく、あくまで皐月さんを心配しての言葉なのだが。
「なるほど、理解しました……」
 どうやら、現状一番の問題を理解してくれたようで何より。
 で、これをどうするかだが。
「つまり私達の内誰かが、一緒に泊まって見張りをしていればいいってわけね」
「察しが早くて助かるよリッカ」
「ならばここはリッカが適任だろう。私達では清隆に対してあらぬ誤解を招いてしまう恐れがある」
「そうだね。じゃあ私と巴で4人のサポートをすればいいのかな?」
「そうしてくれると助かる」
 が、新たな問題が浮上するわけで……。
「しゃ、シャルルは絶対キッチンに立っちゃダメよ?」
「ああ、そうだな。食事の面倒は私が見よう」
「えー、そんなー」
 そんなやり取りを見て苦笑する俺と清隆。意味がわからないと頭上にはてなマークを浮かべる皐月さん。三者三様の表情で彼女らの言い争いを見守っていた。
 とりあえず、当面の方向性は決まった。あとは皐月さんからより詳しい情報を引き出し、送るのに最適な日を見つけるだけ。
 暫くは忙しくなりそうだ。



     ◆     ◆     ◆



 この世には二種類の人間がいる。時間に融通の利く奴と、そうじゃない奴。
 ちなみに俺は前者に分類される。普段真面目に仕事をこなしている分、当たり前のように信頼は厚く、こうして人一人を救う為の時間を上の人間が用意してくれる。
 けれど学生というのはそうはいかない。日中は本分である学業に精を出す必要がある為、俺の手伝いを出来るのは放課後以降となる。
 で、俺達が日中何してるかって言うとだ。
「ここがリゾート島だ。普段学業に勤しむ学生たちの憩いの場になってる」
「ほー……」
 皐月さんを連れて、この風見鶏を散策していた。
 いや、待ってほしい。俺が皐月さんを元の世界に送り返す為には必要なことなんだ。
 なんかこう、お互いの為人を知り合い、絆を結ぶことで魔法の成功率が上がるんだ。
 ……本当だぞ?
「どうしたんですか、スタヴフィードさん?」
「おっと」
 少し思いに耽っていると、外部からの突然の刺激には弱くなってしまうな。
 しかも必要なこととはいえ、ただ遊んでいるように見えるから、自分を納得させる為に必死になってた。
 それに昨日リッカ達にこれを話したら思い切り怪しまれたし。
 大変だよ、うん。
「いや、悪い。なんでもない。……ところで」
「なんでしょうか?」
「なんかな、その呼ばれ方慣れなくてな……」
 気になっていた呼ばれ方。
 ここに来て数日見守ってきたが、皐月さんはどうやら人をラストネームで呼ぶ癖があるらしい。いや、会って突然ファーストネームで呼ばれたら困惑するが、それでも違和感を拭うことは出来ず。
「普通にユーリでいいよ。これから暫く一緒に行動するわけだし、あまり堅苦しいのも嫌だろう?」
「……そうですね。では、ユーリさん。私の事も呼び捨てて頂いて構いませんので」
「わかった。そうさせてもらうよ、皐月」
 お言葉に甘え、呼び方を修正。
 こうして俺達は改めてリゾート島をデー――散策することにした。
「しかしこう見ると凄いですね。地下にこんな広い空間があって、そこに魔法使いの学び舎とそれに連なる学園都市があるなんて」
「だろうな。俺も初めて来た時はびっくりしたよ」
 隣を歩く皐月は珍しいものを見たようにきょろきょろと周りを見回す。
 当たり前か。こんな世界が普通にあっては堪ったものではなかろう。
「楽しいかい?」
「ええ。見てるだけでも凄く」
 笑顔で答える皐月。柔らかく控えめだが、そこに淀みはなく。
 ここ数日、突然異世界のロンドンに連れてこられたおかげもあって、不安な表情を浮かべていたり、笑っても硬かったりした。だが、それも生徒会役員達との触れ合いもあり段々と解消されていったようだ。目の前の笑顔がその証拠だ。
「そりゃよかった」
 ふと、風が吹いた。不意に隣に並ぶ薄桃色の髪が揺れる。
 少女は咄嗟に髪を抑える仕草をする。
「地下なのに、風が吹くんですね」
「ああ。ここの天候は、魔法によって制御されてるからな」
「なるほど。じゃあ、どんな天候でも自由自在なんですね」
「常識の範囲内でだけどな。でも基本的には過ごしやすい気候になるように調整されてる。外の世界とあまり差を感じさせない程度にな」
 頷きながら、なおも周りを見渡す少女。
 気品を感じさせる佇まいは、どこかのお嬢様のように見えて。
「そういえば、君の事よく知らなかったな。少し聞かせてもらってもいいかな」
「あっ、そうですね。そういえばその為にお出掛けしに来たんでしたね」
 ふと思い立ったことだったが、事前に必要なことだと告げていたおかげで問題なく受け入れられて。
「じゃあ、そこのカフェで一休みしながらお話しようか」
「はい!」
 俺達は話をする為に休憩することにした。
 ボートの港の見えるテラスの席を選び、二人向かい合って座る。
 俺はいつも通りダージリンを、皐月はカフェオレを注文。
「流石にここでお茶は、雰囲気に合わないですよね」
「俺は気にしないけどな」
 すぐにウェイターが注文したものを持ってきた。
「ごゆっくりどうぞ」
 その言葉を残し、去っていった。
 それぞれの飲み物に口を付け一息。
 余韻に浸っていると、先に口を開いたのは皐月だった。
「それで、私の事ですよね」
「ああ、そうだな」
 俺はティーカップをテーブルに置き、彼女の言葉を待つ。
作品名:D.C.IIIwith4.W.D. 作家名:無未河 大智/TTjr