ラブライブ!スクールアイドルオールスターズ!?
せつ菜の葛藤と決意(後編)
「…私だって、ラブライブ!に出たいですよ。でも!!!」
無意識に怒鳴り口調になってしまう。
「私は、もうあの時のような思いをしたくないんです!私のせいで同好会がバラバラになるのは耐えられないんです!」
私の剣幕に、二人は絶句しているみたいだ。
長い静寂が過ぎ…
侑さんが話し始める。
「…せつ菜ちゃん、μ`sの逸話を知ってる?穂乃果さんが“スクールアイドルをやめる!”って言った、μ`sが一時解散状態になった出来事を」
「…ッ」
その出来事は知りすぎるほどに知っている。
μ`s史上最大の事件だからだ。
「あのμ`sだって、私たちと同じように、考えて、悩んで、時には対立して、それでも必死に頑張って、ラブライブ!優勝までたどり着いたんだよ」
確かに、五大伝説も、その他のグループも、人間である以上、困難にぶつかってきた。
「…それが何か?」
「私たちも同じだよ。困難にぶつかることもある。対立が激しくなることもある。それでも、一緒になって優勝を目指すのが仲間なんじゃないの?せつ菜ちゃんは、自分から逃げるつもりなの?」
「……………………」
その言葉を聞いた私は、今までで一番葛藤している。
2人の私が鬩ぎ合う。ラブライブ!に出るか、出ないかで。
「せつ菜ちゃん」
今まで無言だった歩夢さんが口を開いた。
「人間、誰しも失敗しちゃうことはある。それでも、また失敗をしないように、反省を次に生かすのが正しいことなんだよ?今のせつ菜ちゃんは失敗をしないために逃げているけど、失敗を恐れずに進んで、初めて気づくことだってある。たどり着けるものがある。伝説の人たちは、そんな所まで行ったんじゃないかな?」
「せつ菜ちゃん、もう一回言うよ。ラブライブに出たい?」
そうだ。私は、大事なことを見落としていた。
対立を経験したからこそ生まれる一体感を。
挫折を味わったからこそ生みだせる感動を。
なにより、「大好き」を伝える楽しさを。
それは、プロには決して生み出せない、素人だからこそ生まれるスクールアイドルの輝きだ。
「はい!!」
私は走り出す。
私の全力の思い、届け!!!
『CHASE!』
「♪走り出した!思いは強くするよ 悩んだら君の手を握ろう」
ああ、久しぶりのこの感覚。
こんなに楽しいライブはいつぶりだろうか。
ギターの豪快なメロディに合わせてキックをする。
もう、これまでの頑固な私は消え失せた。
(今の私は中川菜々ではありません。優木せつ菜です!!)
「♪大事な思い まるで裏切るように過ごした 昨日にはもうバイバイして」
「♪繰り返した リスクと後悔 言い訳ばかり探して決めつけた 振り回すのはやめて」
ここまでの歌詞は今までの私とおんなじ状況だ。
「♪足を踏み出す 最初は怖いかも でも“進みたい” その心があれば!」
(私の決意、受け取ってください!)
「♪走り出した思いは強くするよ 悩んだら君の手を握ろう なりたい自分を我慢しないでいいよ」
「♪夢はいつか ほら輝きだすんだ!」
2番が終わり、間奏に入る。
(ああ、もう少しで終わってしまう。)
「♪まぶたを閉じれば 何度だって出会える 高鳴る鼓動 信じる未来を ここに宿す」
「♪世界が色づいて 光りだす瞬間を 君と見たい その心がアンサー」
背後で炎が噴き出たような気がした。
「♪走り出した思いは強くするよ 悩んだら君の手を握ろう なりたい自分を我慢しないでいいよ」
「♪夢はいつか ほら輝きだすんだ!」
全力で叫ぶ。
「♪Wo Yeahー! Wo! Yeahー!」
『♪弾みだした思いはそうじゃないよ 涙から生まれる希望も』
いよいよ最後の部分だ。
「♪目には見えない力で繋がる 夢はいつか ほら輝きだすんだ!」
アウトロが流れる中、私は最後まで楽しみながら踊る。
エレキギターの音が消え、楽しかったライブが終わった。
「はあ、はあ、はあ…」
(にこさん、見ていますか?私もようやくあなたと同じステージに立つことができました。)
* * *
「いい顔になったじゃない。それでこそスクールアイドルよ」
矢澤にこは、木陰からそう呟くのであった。
* * *
?1「虹ヶ咲もOKになったか。結ヶ丘はどうだ?」
?2「既に済んでおります」
?1「これですべてのグループがそろったか…」
作品名:ラブライブ!スクールアイドルオールスターズ!? 作家名:ふゆくれ@ノベリスト