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ポケットいっぱいの花束を。

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「実際どんな感じなんですか、依頼する時って」風秋遊は今野義雄氏に言った。「その子の個性とか、乃木坂の色とかを、がっちがちに創り込んで、て感じで?」
「いやいや、MVを制作する場合、ある程度の方向性と設計図をお伝えしたら、あとは思いっきりお任せしないと」今野義雄氏はそう言って、頷いた。「そうしないと、作品がこちらの想像を超えてくれないだろ? 思い通りに全部指定しちゃうと、それは僕らの想像した範囲内のクリエイティブで収まってしまう」
「そうか、なるほどね」稲見恵は新しい煙草にジッポライターで火を点けた。「じゃあ、依頼するクリエイターは、お墨付きのクリエイターに?」
「だからさ、例えば、丸山健志監督みたいに、どんな球を投げても素晴らしいものを返してくれるとわかってる監督には、デビューから毎シングル一本は撮って頂いたりしてきたんだけど」
 三人は有意義に、興味深い話に食いつくように聞き入っている。
「丸山監督のような方にずっとお願いできてきたからこそ、初めての方に監督をお願いする事もできるわけよ」今野義雄氏は真剣に続ける。「そこで例えば、山戸結希監督のように見事な、見た事もないようなものが生まれたりするわけ」
「制作側の布陣は完璧ですね」風秋遊は微笑んで言った。「柳沢監督とか、湯浅監督とかも、個人的に好きですよ」
「観てるね」今野義雄氏は眼元を微笑ませて言った。「淡い色味の、ドラマ作品ね」
「乃木坂のMVは個性的で、面白いよね」稲見恵は誰にでもなく言った。「瓶がたまに送ってくれるんだけど、どれも有意義だった」
「MV観ててさ、気になってくる子も確かにいるんだよな」磯野かつおは稲見恵を一瞥して言った。「波平のやつが送り付けてくるんだけどよ、この子くるわ~! て子が確かにいるんだよな」
「可能性ある子にチャンスをつくる事もね、率先してやってるんだけど」今野義雄氏は眉間に皺を寄せながら言った。「うちの子達、乃木坂のメンバー知ってる?」
 三人は存じていると答えた。
「どの子を、どう思う?」今野義雄氏は真剣な表情になっていた。「元々ヲタクだろ、お前達三人は」
「齋藤飛鳥ちゃん、俺いいなー」風秋遊は楽しそうに言った。「モー娘。にいなかった存在って言ったら、齋藤飛鳥ちゃんだな」
「飛鳥かあ。さすが、いい眼を持ってるなー」今野義雄氏は微笑んで風秋遊に言った。「稲見は? 誰か知ってるか?」
「松村沙友理ちゃんと高山一実ちゃんがいい」
「おーおー、知ってるなあ」今野義雄氏は嬉しそうに言った。
「それに、嘉喜遥香ちゃんと、遠藤さくらちゃん、山下美月ちゃん、与田祐希ちゃん、筒井あやめちゃん、ですね。気になる子は」稲見恵は無表情で今野義雄氏に言った。「可能性しか感じない。溢れてる……」
 今野義雄氏はうんうんと頷きながら稲見恵に言う。「鋭い。さすがだな」
「ああ、そう、大園桃子ちゃんも、自然で好きだな。岩本蓮加ちゃんもすでに素敵だけど、更に未来力が強い」稲見恵は抑揚無く淡々と言った。「個人的には和田まあやちゃんが好きですけどね」
「個人的にって、どういう意味?」今野義雄氏は稲見恵にきき返した。
「俺に無い物を持ってる」稲見恵は少しだけ、微笑んで今野義雄氏に言う。「憧れるんですよ、計算無しに人を楽しませられる人間には。魅力がある」
「ほうー。結構知ってるなあ」
 今野義雄氏は磯野かつおを見る。
「秋元真夏ちゃん、でしょ、生田絵梨花ちゃんでしょ、樋口日奈ちゃんだろぉ?」磯野かつおは顔をしかめて、指折り数えていく。「あと、星野みなみちゃんっつったか、あの子。可愛すぎるな……。可愛すぎるで思い出した、堀未央奈ちゃんね」
「新しいメンバーは、知らないのか」今野義雄氏は磯野かつおに言った。
磯野かつおは新しい煙草を取り出す。「えっとぉ、柴田柚菜ちゃん、あの子すげえ可愛い笑顔ですよねえ。あと金川紗耶ちゃんとか、美人だよなー。あと北野日奈子ちゃんな、あの子すげー可愛い。あとあの、早川聖来ちゃんなんて、ヤバいっすねー。あと可愛い子いっぱいいたんすけど、名前が出てこねえっすわ」
「なるほどね」今野義雄氏は次の言葉を呑み込んだ。
「でも、夕が言ってました。乃木坂には、全員にチャンスがあるって。選抜とアンダーがあって、どちらにも根強いファンが付いてるって」
「それが大事なんだよ」稲見恵が言った。「第二の白石麻衣ちゃんと西野七瀬ちゃんを見つけるというより、育てる、だね。要はチャンスだ」
「第二の橋本奈々未ちゃんもだろ?」磯野かつおが言った。「かなりのチャンスがねえと難しいんだよな、そういうのは」
「掴み取るのは本人達だよ」風秋遊は言った。「常に真新しいファンが日々創られていく。それを感じながら、自分をブラッシュ・アップする。普通の女の子だって意識高い子は昔っからやってる事だけど、そういうのがやっぱり大事なんだと思う。日々の積み重ね。手応えあったら、それを嬉しさと自己評価に加えてさ。そうやってやってると、見てる方もあれ、何か楽しそうだな、あの子。てなるんですよ。乃木坂にはそれが常にある。そういう意味で、夕達は幸せ者だ」
「とにかく可愛い事だよな」磯野かつおが言った。「可愛いとか、おもしれえとかさ」
 今野義雄氏は黙って聞いている。
「乃木坂は可愛いでトップですよ。ファンになる理由が明確にある、て事もかなり重要な要素だから。感服してます、こんなアイドルは他にいないでしょう」風秋夕は実に煙草の煙を味わいながら言った。
「一時代を築いたグループの元ヲタクの意見だからな、聞いとくぞ」今野義雄氏はそう言ってから、冷めてきたコーヒーを飲んだ。
「俺達にとってのモー娘。がそうであったように、夕達の大好きな乃木坂が、今この時代で一番輝いてる」風秋遊はそう言ってから、短くなった煙草を灰皿でもみ消した。「乃木坂のファンは恵まれてますよ。乃木坂に感謝しなきゃ。いい人生をくれてる」
「そうだね。アイドルは人生だね」稲見恵は眼鏡の位置を修正しながら言った。「アイドルとは、偶像、という意味だからね。崇拝される人や物の事だから。ファンの人生の大半はアイドルで染まる」
「今野さんは、凄い職についちゃってますね」風秋遊は楽しそうに短く笑った。「そろそろ夕達と、夕達のゲストが到着する頃だ。何か食べるものでも注文しておきましょう」
「酒もな」磯野かつおが付け足した。
「ゲストって、誰よ?」今野義雄氏は疑問の表情で言った。
 時刻は二十一時二十二分を過ぎた頃だった。

       8

 豪勢な御節料理がテーブルいっぱいに敷き詰められた頃になってから、風秋夕(ふあきゆう)と稲見瓶(いなみびん)、そして磯野波平とゲストである堀未央奈が到着した。
「改めまして、明けましておめでとうございます」未央奈は深々と大人達に頭を下げた。「初めまして、堀未央奈と申します」
 その場に年賀の挨拶が飛び交った。
 着席の配置的には、〈応接間〉玄関を背後とする北側のソファ・ポジションに今野義雄氏と堀未央奈が座り、東側のソファ・ポジションに風秋遊と風秋夕が座った。
 そして西側のソファ・ポジションに磯野かつおと磯野波平が座り、南側のソファ・ポジションに稲見恵と稲見瓶が座った。