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ポケットいっぱいの花束を。

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「名曲だなぁ……。この人達が歌うと、凄い曲だよ、ある意味で」夕は鋭く画面を見つめたままで、そう言った。少しだけ、笑って。
「何人が妄想した事か」稲見は、よそよそしく眼鏡をぐいと上げた。
 次に流れてくる楽曲は『今、話したい誰かがいる』だった。
「歴史を感じるで、ござる……」
「ついに、未央奈ちゃんもだぜ……」磯野が誰にでもなくそう言った。
「忘れないでござるっ!」あたるは叫ぶ。
「忘れないよっ!」駅前もたまらずに叫んだ。
 渡辺みり愛をMCに、またトークが繰り広げられる。
 ころころと笑う二期生達――。〈リリィ・アース〉の五人もまた、同じタイミングで笑い声を漏らしていた。
 絶妙なコンビネーションでトークを繰り広げる二期生達。魅了されるようにして、五人もそれに集中する……。
 後半戦が開始される――。流されたVTRは、若き日の二期生達であった。
 黙りこくったまま、画面を見つめ続ける稲見瓶。
 急に、豹変したように笑みを浮かべる磯野波平。
 思い出と重ね合わせるように、微笑みを浮かべる姫野あたる。
 声を殺して、画面を見つめる駅前木葉。
 『君に贈る花がない』がVTRの終わりと共に流れ始める。
 八人を見つめて放さない風秋夕の頬に、すっと、涙が零れ落ちた……。
 宝石がちりばめられた様な景色に、風秋夕は声を殺して思考する。
 未央奈ちゃん、ありのままの自分で、最後まで乃木坂に居てくれたんだね。未央奈ちゃんと出逢えて、深く価値観について考えさせられたよ。
 何を置いても恋をする事。優先順位の最先端に、君に恋をする。君を好きになる、その価値がこんなにもあるんだと。
 最初は君を守る気持ちでいっぱいだった。泣いている君をよく見かけたから。
 だけど、そのうちに、理解できていった。
 守られているのは、自分の方だったと。
 未央奈ちゃんが笑う度に思うんだ。この世に同じタイミングで生まれ落ちた事を、感謝したいって。
 誰かに常に言いたいんだ、今日、未央奈ちゃんが可愛かったって。
 こんなに人を好きになるなんて、到底、思いも寄らなかった。
 未央奈ちゃんが乃木坂を押し上げてくれた。安心して、見ていられた。
 一体、いつから、未央奈ちゃんに見とれていたんだろう。
 きっと、出逢ったその時から。
 未央奈ちゃんは魔法使いで、使った魔法はきっと、一生解けない。
 一生分の願いを込めて、君が笑って卒業していくのを見守りたい。
 ありのままの未央奈ちゃんが、好きでした。
「未央奈ちゃーーん! みーーおーーなーーちゃーーーーん!」
 風秋夕はその内に秘めた想いを、歓声にして大きく叫んだ。また一つ、生涯忘れる事のない瞬間を刻みながら。
 次々と、新たにと、楽曲が流れては終わっていく……。
 稲見瓶は巨大な画面に映し出された堀未央奈を、真っ直ぐに見つめる……。
 この日を迎えるのが、正直怖かった。自分自身の事ながら、わからなかった。
 素直に、卒業を、おめでとうと言えるのかと。
 未央奈ちゃんを通して、二期生のほとんどを見つめるように知っていけた。今では二期生の何もかもを語れる。
 こんなに好きでいる。気味が悪いくらいに。君には知られたくないかな。
 君にだけは、嫌われたくないんだ。
 これからも、好きでいさせてほしい。
 大好きだよ。卒業、おめでとう……。
「未央奈ちゃん、卒業、おめでとうございます……。未央奈ちゃーーん!」
 稲見瓶は似合わぬ大声を上げた。身振り手振りも構わずに、子供のように大きく泣きながら……。
 磯野波平は、あの日から今日までの一瞬の走馬灯を感じていた。
 胸張ってくれよな。いつだって、俺がついてるぜ。
 誰よりも、未央奈ちゃんが好きだ。箱推しだけどな、箱推しってな、そういう事だろ。
 何よりも本気になれたのが、乃木坂を好きになる事だ――。
 それはつまり、堀未央奈に、恋をしたって、事だろ? そうだろ、未央奈ちゃん。
 ダメだぜ、こんなに好きにさせちゃあよ。
 もしもこれから先、未央奈ちゃんを泣かせる奴がいたら、俺がぶん殴ってやる。
 生涯忘れねえぐらい、今日は泣くぜ。
 未央奈ちゃんの晴れ舞台だ。
 泣いでも、いいだろ……。そじで、ぜってえ忘れねえよ。
 未央奈ぢゃんが、乃木坂であった事を。
 おっきな笑い声が好きだったぜ。じゃあな、未央奈ちゃん。
 これからも、好きでいるぜ。
 ずうっとだ――。
「くっ、未央奈ちゃーーーーーーーんっ! 大好きだぜーーーーっ!」
 そう大声で唸った磯野波平のその顔は、歪み、弱弱しいものであるが、笑顔は実に大きなものであった。
 明るい雰囲気の『スカウトマン』が、湿った五人の空気を一新させる――。
しかし、次の『ハルジオンの咲く頃に』にて、またもや大きな感動の波が寄せてくる……。新内眞衣が、涙にて、一時歌えないシーンもあった。
 『きっかけ』が流れ始める。
 駅前木葉は、自分が乃木坂を好きになったきっかけを探すように、思い出していく。
 未央奈ちゃん。私は、最初のあなたを知っています。
 恐ろしくて、とてつもなく大きな存在に選ばれた事を、喜びながら、うち震えていたあなたを。
 そんなあなたに一目惚れした私は、今日まで、本当に幸せでした。
 ずっと、あなたのそばにいたい。
 ずっと、変わらぬ愛を誓います。
 ずっと、私はあなたを想うでしょう。
 あなたの幸せを祈ります。こんなにも大切なあなたが、この先、幾つもの困難を乗り越えて、大きく笑顔で生きてゆけますように――。
 未央奈ちゃん、大好き。卒業、おめでとうございます。
「うっ、うう……、未央奈ぢゃーーーーん! 未央奈ぢゃーーーーーーーん!」
 駅前木葉は嗚咽しながら、視線の先の堀未央奈に、誇らしく微笑んで見せた。こんなにも、あなたは私に笑顔をくれていると、堀未央奈に見せているかのように……。
 新内眞衣が、次で最後の曲だと紹介をした。そう告げた新内眞衣をはじめとして、次々にメンバー達に涙がうつっていく……。
 堀未央奈が、改めてに二期生達、八人を自慢する。

『ほんとに、自分の、仲間っていうか……。出逢って良かったなって、この曲を、二期生でこういうふうに歌えて良かったなっていうのが、いっぱいあって……。幸せでした』

『で次の曲も、あのぅミュージック・ビデオも、私達、いただいて、曲もね、一期生の方とか凄い好きって、言って下さる素敵な曲なので、ぜひ皆さん今回は、特別バージョンというか、いつもよりも少し、多めに、聴いてもらいたいと思います』

『聴いて下さい。ゆっくりと咲く花』

 堀未央奈から、最後と告げられた楽曲は、『ゆっくりと咲く花』だった。
 美しいメロディに、涙で画面が霞んでいく中、姫野あたるは思う……。
 今は見えない観客席を想像する……。満員のオーディエンス。飛び交う盛大な歓声。
まるで、宇宙の一部になっているでござる。
小生には、ちゃんと見えるでござるよ、未央奈ちゃん。未央奈ちゃんが大好きで集まった歴戦の勇者たちの姿が。
小生が……、僕が、いつか、挫けそうになった時、未央奈ちゃんは言ってくれたよね。でも、正直、何を言ってくれたのかは、まるっきり覚えが無いんだよ。