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ポケットいっぱいの花束を。

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「それを言うなら、飛鳥ちゃんが一番ダンス上手いよ」夕はそう言って、四人に支持の頷きを貰うと、飛鳥を見つめる。飛鳥はぼうっとこちらを見ていた。「表現かな、一際鮮やかに見えるし……、やっぱり綺麗なんだよな」
「私もそう思う」美波は飛鳥に頷いた。
「あ、そう」飛鳥はぼうっとしている。満腹の様子である。「どうも……」
「確かに、眼を奪われる」稲見が言った。
「今期の梅ちゃんもいい踊りしてるぜ~?」磯野は美波ににやけて言った。「久保ちゃんとシンメトリだかんなー。気の強い女同士、何か通い合う何かがあんだろうな」
「別に気ぃ強くないし」美波は笑う。
「あ」夕はそう言って、口元に人差し指を立てた。「飛鳥ちゃん、眠っちゃった……」

       3

 街中がクリスマス一色に包まれた二千二十年十二月二十四日、クリスマス・イヴ。〈リリィ・アース〉地下二階メイン・フロアは、賑やかで遊び心を持った美しい装飾で溢れていた。
 今宵、乃木坂46は多数〈リリィ・アース〉に滞在しているのだが、地下二階メイン・フロアにて風秋夕と稲見瓶と磯野波平と時間を共有しているメンバーはというと、乃木坂46三期生の山下美月と与田祐希、そして同じく三期生の久保史緒里、向井葉月、大園桃子、岩本蓮加の六名がそうであった。
 東側のソファ・スペースのテーブルにはキャンドルの宿ったケーキや御馳走が色鮮やかにテーブルを賑わせていた。
 東のポジションのソファには風秋夕と稲見瓶と磯野波平が座っている。西のポジションのソファには山下美月と与田祐希が二人で座っていた。
 南のポジションのソファには久保史緒里と向井葉月が座っており、北のポジションとなるソファには、大園桃子と岩本蓮加が座っていた。
 現在、巨大フロアに流れているメロディは、乃木坂46の『あらかじめ語られるロマンス』である。
 クリスマス・イヴとはいえ、〈リリィ・アース〉の気温は一年中一定を保ったままなので、大抵の者は薄着でいる事が多い。今宵も乃木坂46ファン同盟の三人ははるやまのスーツ姿であるが、乃木坂のメンバーは無論それとは異なる。
 山下美月が着用しているのはジル・スチュアートのワンピースである。与田祐希が着用しているブランドはダズリンである。久保史緒里が着用しているジャケットはジーナンスである。向井葉月が着用しているニットはケイトスペード・ニューヨークである。大園桃子が着用しているベストはクラネである。岩本蓮加が着用しているブラウスはエピヌである。
 やはり、乃木坂46ともなると、それぞれが個性豊かで実にファッショナブルであった。
「与田って、口ちっちゃいよね?」美月は隣の祐希を一瞥して笑った。「それで限界? えーもう限界なの?」
「食べたい量と、気持ちが、合ってない」祐希も苦笑する。その頬はリスのように膨れていた。「ん~食べたいんだけど、もっと。飲み込むのも遅いし、入らないし、はは」
「それに比べてはづは凄いよ」癖のある方言で桃子が皆に言った。「ぱっくぱく、もう食べる食べる。それで早いし」
「葉月よく食べるよねー」美月は料理を物色しながら一瞥で葉月に言った。
 向井葉月はピースサインを作っている。そしゃく中で喋られないらしい。
「食べるって言ったら、山だって食べる時食べるよね」史緒里は美月を見つめながらそう言うと、骨付き炙りチキンを一口齧った。「でもストイックだから、そうでもない時もあんのよ」
「ダイエットしてるからねー」美月は頬に笑窪を作って言った。
「れんたんはどうなの?」史緒里がきいた。
「えー、どう、だろう。でもあーんま、食べないかも」蓮加はそう言って、ポテトを口に放り投げた。「昔? ちっちゃい頃はほーんと、全然食べれなくて? 怒られてばっかりだったけどね。桃子、てそんな大食いなイメージない、かも」
「桃子はいいよ」桃子は照れ臭そうに会話を拒否する。「桃子は普通、はい、次。次の人」
「クリスマスって事だしよお、なんなら」磯野は満面の笑みで言う。「王様ゲームしねえ?」
 風秋夕はコーヒーを吹き出しそうになったが、咳き込んでそれを阻止した。
「何てこと言いやがるてめえ!」夕は強烈に磯野を睨みつけて言う。「この純粋無垢なイヴの聖夜に! 大様ゲームだあ?」
「言ってみただけじゃねえかよ……」
「王様ゲームって何?」桃子は顕在的につぶらな瞳をまん丸くして質問した。「えしちゃいけない事なの?」
「割り箸に、数字を書いて」稲見は皆に説明する。「配る。じゃんけんをして、王様を決める。王様が決まったら、王様は何番と何番が何々をする、という命令を出せる」
「それが例えキスでもな」夕はふてくされて言った。「王様のいう事は絶対、てゲーム。なんて危ねえゲームを放り込んでくんだ」
「波平君さいてー」史緒里は軽蔑の眼で磯野に言った。「見損なったわ」
「波平君のエッチ」美月はふふっと笑った。
「そんなゲームがあるんだ」祐希は関心を示していた。
「波平君のエッチってもう一回言ってくれよ」磯野はまいった笑顔で美月に言った。
「波平君のエッチ」夕が言った。
「だまらっしゃいな!てめえじゃねえんだよ!」
「あでもさあ?」葉月は思いついたかのように皆に言う。そしゃく中であった口の中の物が空になったからである。「キスとかさ、抱きしめるとかさ、そういうの無しでやれば、クリスマスっぽい、何か素敵なゲームになりそうじゃない?」
「そうそれよ!」磯野はソファから立ち上がって言う。「俺はそれを言いたかったんだって! 葉月ちゃんナイスアシスト!」
「王様ゲームしねえ?て言ったお前の顔をもう一度再生してえよ」夕は嫌そうに言った。
岩本蓮加は考える。「えどういう事? 王様を決めるの?」
「じゃんけん、してみるか。一度」夕は苦笑しながら、皆に提案する。「変な感じだったらやめればいいよね」
 用意したのは九本の割り箸と、マジックである。割り箸の太い頭部の方に①から⑨まで数字を書いていき、それをわからないようにシャッフルして、コーヒーカップの中に、割り箸の頭部が下に向くように入れた。
 第一回目のじゃんけんで王様に選ばれたのは、岩本蓮加だった。
「何? 私が何か言うの?」蓮加は誰にでもなくきく。
「みんな、今番号を持ってるから」稲見が説明する。「何番が、何番に、何々をする、てね。命令を出してほしい」
「えー」蓮加は考える。意外にも、これは緊張を要する時間となった。「じゃあ……。好きな数字で言うね。ラッキーセブンの七番さんがあ……、三期の三番さんにい……」
「俺的にゃいいがよ、今はキスはエヌジーだぜ」磯野が言った。
「言わねえよ」夕がすぐに言った。
岩本蓮加は笑顔で言う。「七番さんがあ、三番さんにい、じゃあ……、クリスマスの言葉のプレゼントをする」
「はい、七番誰?」夕は皆を見る。「三番は?」
「七ば~ん。へっへ」磯野だった。
「三番……」祐希は小さく挙手をした。
「マジか……」夕は左手の手の平で顔を覆い隠した。「ったく、いきなり与田ちゃんもってくとか、天はお前の味方かよ。ちゃんと言葉の、プレゼントってぐらいだからな? 綺麗な言葉にしろよな」
 七番の磯野波平が、三番の与田祐希に、言葉のクリスマス・プレゼントである。