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ポケットいっぱいの花束を。

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「与田ちゃん……、ふ、不謹慎かもしんねえけどよぉ、俺は、フラれた事ねえのよ。そんな、ザ・ハンサムな俺が、与田ちゃんに言いてえ事があんだ……。聞いてくれっか?」
「……はい」祐希は笑いを堪えている。周囲の皆も苦笑であったり、溜息であったりと、様々なリアクションをしていた。「なんでしょう?」
「何が君の幸せ? 何をして喜ぶ?」磯野は始めた。「わからないまま終わる。そんなの嫌だ」
「インディアンかてめえ」
「うっせえ、忘れないで夢を。零さないで涙。だから君は飛ぶんだ、どこまでも。そうだ、恐れないで、みんなの為に。愛と、祐希だけが、友達さ。メリー・クリスマス。付き合ってくれ」
「ごめんなさい」祐希は笑みを浮かべたまま、ぺこりと小さく頭を下げた。
「アンパンマンの歌な」夕は溜息をついた。「言いたい歌詞はわかった。つうか、記憶してんのがすげえな」
「俺今フラれたの!」磯野は大慌てで誰にでもなくたじろぐ。「フラれた俺?」
「残念だな、綺麗な履歴に傷がついて」夕はにこやかに、心から嬉しそうに言った。
「良い歌詞ね」史緒里は感心する。
 ざわざわとしている中、王様ゲーム第二回戦が行われた。
 じゃんけんで王様に選ばれたのは、山下美月であった。
「どうしようかな~……、うーん」美月は笑窪を作りながら考える。「三番がぁ~……、五番にぃ~……、歌を歌う」
「はい、三番誰?」史緒里は皆を見回しながら言った。「おお、イナッチ」
 稲見瓶が無表情で小さく挙手していた。
「えイナッチが歌歌うの?」桃子はけけっと笑った。「五番、って誰?」
「はい」葉月は小さく挙手をした。「え、何、歌を聴けばいいの?」
「そう」美月は笑顔で頷いた。
「何歌うんだ? 無表情」磯野は横柄な態度で稲見に言う。「マジで歌えよ? 鼻歌とかだったらカンチョーして持ち上げっからな」
「何を歌えばいい?」稲見は磯野を無視して美月を見つめる。「知ってる曲なら、歌うけどね」
「うーん……、何でもいいよ」美月は笑みを浮かべたままで稲見を見つめた。「わかった、じゃあわかった、乃木坂の曲ね。を、歌って」
「OK。乃木坂だってよ、イナッチ」夕は稲見に言うが、視線は乃木坂を捉えていた。
 稲見瓶が向井葉月に歌を披露する事になった。否、全員に聴こえている。
「一人でー空ぁを見ぃ上げー、ぶーつーぶつー言っーてるー、この想い届けー、言霊にぃなってー……」
 歌い終えた稲見瓶は、静かに眼鏡の位置を修正し、咳払いを一度だけした。磯野波平と風秋夕は笑っている。なんとも抑揚の乏しい歌い声であった。音程も取れていない。
 大園桃子と山下美月は必死に込み上げる笑いを我慢している。上手にリアクションを取っているのは久保史緒里と向井葉月だけだった。与田祐希と岩本蓮加に至っては爆笑している。
「いや何がうけるってよぉ、選曲が言霊砲なとこよぉ!」磯野は大笑いで稲見を指差して言う。「可愛すぎるだろっ、む、無表情なのにっ、いっ、妹坂ってぇ!」
「いや、ここに全員がいたから……」稲見は赤面で弁解する。「妹坂の四人がね、ふと頭に浮かんだんだよ。選曲は間違ってないはずだ」
「上手い上手い」祐希は笑いながら言った。拍手している。
「歌ってるツラが怖えだろうがぁ!」磯野はもはや上機嫌だが、磯野も歌は下手くそである。「一人でぶつぶつ言ってんのはてめえだ無表情~があ~っはっは!」
 王様ゲームの三回戦が行われる。
 王様に選抜されたのは風秋夕であった。
「じゃあ、六番が、王様に、告白」夕は当然のようにあっさりと言い放った。
「そんなのいいのかよ!」磯野は立ち上がって夕を睨み込む。「王様にって、インチキじゃねえかそんなんよ!」
「じゃあ、言い換える」夕は発言と表情を新しいものに替える。「六番が、四番に、告白」
「なるほどね」稲見は皆に説明を買って出た。先程の赤面は消えている。「今回のやり方では、王様もくじを引いてるんだ。番号を引いた者の中から、じゃんけんで王様を決めてるから、命令に自分の番号を指定する事もできる」
「何だよそれっ!」
 乃木坂の女子達は皆がきょとん、としていた。
「六番、誰かな?」夕はにこやかに言った。
「はぁい……」祐希だった。祐希は小さく挙手をして、苦笑している。「六番です……」
「告白されます」夕は上品に、ぺこりと祐希に頭を下げた。「返事は決まってる。いいよ、与田ちゃん。やっと一人前の男になれる」
「えー……、どうしよぅ……んふー」祐希は笑みを浮かべながら困り果てる。「えー、嘘ぉー、でしょう? え、えー……何を、何て言えば、んんー……」
「あ」史緒里は言った。
久保史緒里は、ソファを立ち上がって、祐希の耳元で何やらを伝えた。
「告白します」祐希は笑みを浮かべて、夕を見つめた。
 風秋夕はときめく胸の鼓動を感じながら、静かに与田祐希に頷き、与田祐希だけを見つめる。
「待って、やっぱり先に言うわ……」夕は祐希を見つめて、言う。「大好きだよ、与田ちゃん……。俺がずっと、守っていくから。五十年後の君を、今と変わらず、愛している」
「名言だけど、ネタが古いよね」稲見は淡々と言った。「百一回目のプロポーズだね」
「はい、与田ちゃん」史緒里が言った。「どうぞ」
「はい、告白します……」祐希は笑顔で言う。「私、島の猿だったんで、木登りは得意です」
「……」夕は耳を疑った。「え? 何、それ……」
「告白」祐希は可愛げにいっぱいに微笑んで言った。「島の猿だった、ていう、告白」
「が~っはっはっは!」磯野は笑う。
「一枚上手だね」稲見は薄い笑みを浮かべて言った。「ひやひやした」
「しかもそれ知ってるし……」夕は苦笑して、肩を落とした。「記念日にしようと思ったのに……」
「合ったり前でしょ」史緒里は鼻を鳴らして言った。「乃木坂に告白させるって、何様よぉ」
「王様」夕は言った。「そういうゲームコンセプトだし……」
「え何でもありなの?」美月が驚いた表情で言った。
「だからぁ、そういう、変なのは、無しでえ、て話」葉月は美月に答えた。「まー夕君の今のは、ギリギリかな」
「次行こうぜ、次」磯野は皆をせかす。
 王様ゲームの第四回戦が行われた。
 じゃんけんで王様に選ばれたのは、与田祐希であった。
「はい、与田ちゃん、じゃなくて、王様」夕は祐希に微笑んで言う。「何をご所望ですか?」
「うーん……、えー?」祐希はあごに人差し指を当てて考える。三人の男子にはそれが天使に見えている。「どうしよ、じゃあ……。一番がぁ……、王様の肩をもむ」
 与田祐希はひひっと笑った。
「一番誰?」美月は皆を見回しながら言う。「私二番……」
「三番」史緒里が言った。「誰?」
「ちがーう」桃子は割り箸を見せながら言う。「六番」
「この日を、待ってて良かった、ぜ……」磯野は身体を力ませながら、皆を見回して言った。「一番だ……」
「ぬあに!」夕は驚愕する。
「え……」祐希の笑みが止まる。
「肩を、もんじゃえば、いいんだよな?」磯野は、ソファを立ち上がった。その顔は真剣である。「アムロ、行きまーす!」
「波平君、ほんとに、肩もみだからね!」史緒里が強めに釘をさす。「変な事したら事件だからね、犯罪よ、はんざい!」